表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

違う常識

「記憶喪失なんてそんな!ふざけた事言ってんじゃねぇぞ!オルァ!」

「だからホントだって!私、誰だか知らないし!何で殺人現場みたいな所にいたのかも知らないし!」


 流血する頭を抑えながら、体にむち打ち車道を探す。自分がどうやってこの土地に来たのか知らないが、多摩周辺だというのは分かった。

 根拠はない。多摩周辺だと、化け物が言ったからだ。


「そりゃぁお前が殺人したからだ」

 低いトーンで言われ、心臓が脈打つ。殺人。それは記憶を失っても犯罪だと分かる。


「何で…そんなに嫌いな人がいたの?それとも、」

「さっきから能天気な発言しかしねえな。…本当に記憶喪失に?いや、…」

 声と目しか判別できぬ"化け物"は少し考え込む。

「お前、()()()()()()()()()()()?」

「…な、何それ?じゅ…」


「あー、分かった分かった。演技じゃないよーだな」

 国道はコッチだ、と手の平返しで()は案内に回る。最初のように噛みちぎられなくて良かったと、"記憶喪失の自分"は安堵する。


「あれ?」


 フラリ、と体の力が抜けてそのまま倒れ込んだ。痛みよりも雨の冷たさに凍える。

「死ぬのかぁ?」

「え──」


「やっとくたばるンだな!アハハっ!こりゃおめでてえな!夜にはばかる大悪党の最期を見れるなんてよ!」

 ケラケラ笑う化け物に必死に手を伸ばした。黒い。夜闇が重たい。ズッシリとのしかかってくる。


「死にたくない」

「死にたくない?はあぁ?その言葉をお前は何度も踏みにじってきたんだ。まーいいや、遺言くらいは聞いてやる」

 見下され、彼はよほど憎いのだと寂しくなった。


「寂しい、悔しい、私は誰だか、分からないまま、死ぬ、の」

 薄れゆく意識の中、記憶喪失になる前の己を呪う。


「呪うよ、自分を、こんな思いをさせた自分を──」





 目を覚ました。まただ。


 もしかしたら既に死んでいて、地獄で大罪人として罰を受け、苦しみを繰り返されているのかと思った。

 しかし柔らかな陽射しが薄暗い空間を照らしている。あの凍てつく土砂降りは消えていた。


「ゆ、め?」

 掠れた声で生きているのを悟る。変な夢を見ていた?


「コイツが世界中、いや、世の神から嫌われる悪党か」

「世界中は言い過ぎだろ」

 あの化け物の声がして、身をすくめる。


(死んだはずじゃないの?傷は?なくなってるし…どういう状況?)


 頭の傷を確かめてもそれらしき痛みすらない。


(治療してくれた?でも傷口すらないし…なにこれ?)

化け物の外見が、まだ上手く形容できない生物なんですが次の話でがんばります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ