木津 月ちゃん
独り、場に削ぐわぬ少女がいた。まるで迷子か、背伸びをした一人旅をしていかのようだ。
「あれだ。よく地図を作ってる。今もやってるのか……」
「有名な子?」
「ま、確かに有名っちゃあ有名だ。さっきのお前みたいに不審がられてる」
あれはいい気はしないが、普通の反応ではある。余所者がきたら誰だってああするだろう。この地区にどのくらいのコミュニティがあるかしらないが……。
「話しかけてみるね」
二人──だが、半人妖の状態で近づくと、いきなりトゲが頬をかすった。
「うわっ?!」
「誰?」
鋭い目つきで少女が振り返る。傍にはトゲだらけの小動物が浮遊しており、また太めのトゲを飛ばしてきた。咄嗟に避けるも彼女たちは一向に手を緩めない。
「誰なの? 呪殺代行人?」
いきなり懐から物騒なピストルを取り出すと、向けてきた。
「わ、私は敵じゃないっ!」
慌てて避けると身体が勝手に身軽な、アクロバティックな姿勢で一回転し、素早い速さでトゲを手に少女の喉に突きつける。
「や、やめて」
(シハ! )
ハッと我に返ると、目の前の子供はあからさまに怯えていた。
「あ、ご、ごめんなさい。つい」
「……あ、あなた呪殺代行人? しかも上級の……なんで、私なんかに」
「い、いや、違うの! ただの一般人で。シハって言うんだ」
(今ので信じるかと思うか? )
キヒの小言を無視し、距離をとる。両手をあげ、敵意がないのを示した。
「……シハ。知らない人。ここは狭いから皆、名前を知ってるはずなんだけど」
「あ、あの、なんて言うかな。最近来たんだ〜はは」
それを聞いて彼女はさらに怪訝そうにした。赤毛の雑に髪を束ねた幼い少女。言動は大人びているが、やはり恐怖に震えていた。
「に、日本から! 日本から来て、戻る方法を探してるんだ」
「日本。貴方も日本を知っているんだ」
彼女はわずかながら警戒心を解くとピストルを下げた。
「……人に化けるヤツもいるから。ごめんなさい」
「化け物の事?」
「『醜蛆、悪鬼人』を知らないわけ? ふざけているんじゃなくて本当に日本から来たの?」
「なにそれ」
「……。化け物の名前。皆そう呼んでる。ここの住民の成れの果てって言われてる」
そう言えばキヒも似たような事を言っていた気がする。奇妙な言動ばかりの変質者を連れ立った小動物が威嚇していた。
(可愛いけどハリネズミじゃ無さそうだなぁ)
(ハリネズミ? 何だそれは)
「私は木津 月。冥廊の地図を一人で作っているの」
「一人?! すごいっ、あ、私はシハ。半人妖で、化け物じゃないよ!」





