探しに行くぞ
「──半人妖なら、そこまで時間は限られてはいない。気をつけるのはエニシが切れた時じゃ。この土地とのエニシが切れれば、永久に戻れなくなる」
八髏非女が鳥居に寄りかかりながら、丁寧に説明してくれる。毎度ありがたい事だ。
「あの、どうすればいいですか? 私まだそこら辺の原理が理解できてなくて」
「企業秘密じゃ〜〜。記憶喪失とはいえど、血蠱蝸だからのう」
「そんなあ! じゃあ、戻れなくなっちゃうじゃないですかっ」
すると神さまは大笑いをして
「光栄な事じゃのう! 誰かの帰りたい場所になろうとは」
「え、は、はあ」
余程嬉しかったらしく、鼻歌混じりに彼女は鳥居の向こう側へ触れる。すると不思議と景色はあっという間に、あの陰鬱とした団地に様変わりした。
「かの娘がいる近くに鳥居を設置しておいた。きっとすぐ出会えて、いい収穫になる」
「おー、すげーな。大盤振る舞いじゃないスか」
それにキヒが呆れ混じりの感想をもらし、半笑いで団地地区の様子を眺める。
「どうやら終棟の端にいるみたいだ」
「おわりとう?」
「人が住んでる場所を棟にして分けてんだよ。団地のある地区は終棟って呼ばれてる生活圏内に近い、だからアイツもそこを彷徨いてんだと思う」
よくよく見れば前回、訪れた団地の様相と少し違った。生活感がある。廊下には家具が置いてあり、または壁に落書きもある。
あの化け物が住まう廃墟、という訳ではなさそうだ。
「ありがとう! 八髏非女さま!」
「お前に感謝されるとは。明日は矢が降るかもしれんな」
「だから! 私は血蠱蝸じゃないんです!」
ハッハッハ、と少女は再び笑い、さあ、と催促した。「娘が食われんうちにいけ」
鳥居の外からはカレーの匂いや、洗剤の匂い──人の生活の気配が溢れていた。
半人妖だからか嗅覚も鋭くなっている?
とりあえず、娘とやらに会いにいかなくてはならない。「キヒさん。その子の気配とか分かる?」
「まあ、分かるぜ。タダ働きはしたくねーんだが」
「この期に及んで……じゃあ、娘さんを見つけたら日本の面白い昔話を一つ教えます」
「要らねえ〜〜……まー、いいや。昔話よりも、アンタの身の上話を聞かせろよ」
乗り気じゃないらしく、彼は渋々といった様子で娘の気配を探り始めた。





