似たような話
「だからって血蠱蝸を許しはしない。それに仮説だし、あの一族が何を知っているかなんて」
彼はそう口にしかけ、歯を食いしばった。
知る由もない。そう、言いたくはないのだろう。
「見ちゃったら、私もただ事じゃなくなる? ほら、鶴の恩返しみたいに……そんな優しくないか……」
「鶴の恩返し? ナンダソレ?」
どうやら忌避はそれすら知らないらしい。シハは少し言い淀み、鶴の恩返しの話をした。
鶴の恩返しは夜になると自室を覗くなと言われて、主人公が見てしまったがためにお嫁さんが居なくなってしまう話。
「何でみちゃいけねーの? 普通に鶴の姿で嫁げや」
「こっちでは良いのかもしんないけど、日本では鶴のお嫁さんはいないから。居たらニュースになるって」
「はーん。なのに、そういう話はあるんだな」
確かに。と、頷くしかなかった。妖怪が本当にいたのか? それともこちらの世界を見聞きした人物がいたのだろうか。
(いや、そんな訳は)
「見ちゃ行けないものを見る、か。鶴は見ていい気しかしねえが」
「あ、でもこれならわかりやすいかも。昔の神話で死んだお嫁さんを夫の神さまが黄泉の国まで行って、連れ戻そうとするんだけど、やっぱり姿を見て」
「何だかそれは知っているぜ。ていうか、冥廊の開闢の話にソックリだ」
「えっ」
冥廊には座敷牢の真ん中に神さまがいて、未だに夫が迎えに来るのを待っている。一度迎えに来たが約束を守れなかった。
二度目ならば、彼はまた地上に連れ出してくれる。
だがふたりは約束してしまった。夫が人類を繁栄させるのなら、座敷牢の神さまはそれを滅する。
「ねえ、その神さまって伊邪那美命? 何でそこまでそっくりなの?」
「そんな名前ではなかったが、話自体は似てるっちゃあ似てるな。まー、そんなもんか」
「そんなもんじゃない! きっとここは未来の日本なんだ!!」
「いや、知らねーよ。静かにしろ」
殴られそうになり、慌てて避ける。ヤツは舌打ちして肩の力を抜いた。
「座敷牢の真ん中を二人で覗きゃあいいじゃねーの? そうしたらおあいこだ。それに名前を呼んでやればいい、神さまのな」
「何その肝試しみたいなの」





