がんばれば何でもできる…
「同化するったって、コイツは仮に個人で。今まで物や空気とは訳が違うんですから……」
「空気に同化できるンだったらいけるじゃろー?」
「いやー、空気は跳ね返しがないんで……」
(同化って忍法隠れ身の術みたいな? てか普通にすごくない? この世界、そんな事できるの)
全身全霊で拒否する忌避曰く、体力の消耗もあるらしい。
(何でもありなんだなー)
妖怪も神さまも、化け物もいるファンタジーな世界。児童文学の世界観。何だか悲しい気持ちになった。
(私は日本に帰る、帰らなきゃ……でも日本に帰っても、幸せなのかな)
「シハ。物になりきってみろ」
「ハア?! も、物に? どうやってですか?!」
いきなり無理難題を突きつけられ、思考がぶっ飛んだ。
「自分は物だと念じるんじゃ。そこにある石だと思えばいい」
狛犬を指さして物なんて言うものだから、八髏非女の変に大雑把な認識に恐怖を抱く。
「狛犬に? 恐れ多いですよっ」
「石じゃ、あれはただの石でしかない。狛犬だったら動いてるわい」
「そ、そうですか……」
仕方なし。目をつぶって自分自身はその辺に落ちている石だとイメージする。
物になりきる、とは具体的にどんなものかも分からずに──ズッシリと肩が重くなる感覚がした。
「おお、できるもんじゃのう! すごいぞー!」
声がして目を開けると何も景色には起きていないが、ため息が身近から聞こえる。耳元にしているような。
「例外ですからね。これ以上、俺に無茶させないでくださいよ」
「どこっ? どこにいんの?」
「お前に取り憑いたんだよ」
「ギャーッ!!」
「チッ。いちいち素人みてえな反応しやがって」
悪態をつかれるも彼の姿は見えなかった。八髏非女が言うには角が生えたので無事、半人妖に見えるのではないか? と。角があるだけで半人妖にカウントされるだなんて、おおらかな世界だ。
「あのー……それでどうやって元に戻るんですか?」
「キヒに頼め。ヤツはものすごく優秀な呪殺人、日本で言う陰陽師や呪術師のような生業じゃ。何でもできる」
「ホラ吹かないでください……はー……オンミョウジって何だ?」
「魔法を使える日本の魔法使いだよ。呪文を唱えると何でもできちゃうんだって。テレビで見た」
しかしキヒはテレビも魔法使いすらしらないようだった。





