物知りなお姉さんに会いに行けるか?
「ンだよ、ぼうっとしやがって」
「いや、ちょっと重要な記憶がっ」
「はぁ?」
シハはさらにカバンの中にある物を漁っていくと、遺書を見つけてしまった。ビニール袋にしっかりと密封していたお陰でまだ状態はいい。
「い、遺書だ……」
驚き、汗が滲む。開封し、ゆっくりと広げるとこの世から去る理由と親への謝罪が直筆で書かれている。記された年には令和5年とあった。
(令和5年? 嘘でしょ? )
確か自分は令和7年にサイクリングをしたはず。なのになぜ? あの人は実在していたのか?
(幽霊? いるの? 幽霊が? じゃあ、……私が幽霊? )
記憶の食い違いに混乱し、あの──風呂場で聞いた断末魔が過ぎる。
死にたくなかったのに。
もしかしたら自分自身も死に場所を求めて、さまよっていたのか?
わからない。記憶が曖昧でわからない。
「ただいま〜」
すると神社へ左衛子が学校から戻ってきて、たまたま居合わせる。
「久しぶり、また会えたー」
「学校帰り?」
「うん。早く宿題しなきゃ。あれ、これ」
「これはね」
「めんきょしょーでしょ。知ってるよ」
「え!」
免許証をくれという。そうしたらいい話を聞かせてあげる、そう。左衛子は交渉してくるが、かの子供はまだ小学生だ。
仕方なく上げると、「これを見た事があるんだ」、と彼女は言う。
「くるまの運転に必要だって、いつだかしらないひとから聞いた」
「な、なんで!」
「なんでって……団地の世界の奥に物知りなお姉さんがいてね、これ以外にも知っているかもしれないかも。でも仲良くしてね」
「花生さんの事?」
すると少女は首を横に振り、キヒを見上げた。
「忌避も言っていないことがたくさんあるでしょ」
指摘され、彼はあからさまにめんどくさがる。
「日本なんて国はねーよ。だがあの変人はあるとかよ、言い張ってやめないんだ」
「変人?」
「残念だが、俺たちはあの世界には長居できない。何せ思念の塊でしかないから。だっはっは!」
勝ち誇った笑いをあげた瞬間、フンワリと風がふき、境内にあの八髏非女が現れる。よく現れる神さまだ。
「無事に帰ってこれたようじゃな! 第一難問、無事突破じゃ〜〜~。おめでとう!」
わーい、と芝居がかった喜びで神さまは二人を祝福した。
「鳥居の外、冥廊の世界ではシハの頭にその角? 耳? が出た状態で『半人妖』に化ければよいのじゃ〜。さすればバレぬぞ? 実体も得るしな」
と、八髏非女が提案する。しかし彼は食い下がった。
「八髏非女さま、それ以上コイツに変な知識与えないでくださいよ」
「良いではないか? 暇つぶしになるじゃろ」
「暇つぶし? コイツは血蠱蝸で──」
「忌避。お前は血蠱蝸について何も知らない。復讐したければ骨の髄まで冥廊を知れ。さすれば願いは果たされるだろう」
真面目な言い草に押し黙るしかない。
「……わかりました。八髏非女さま」
久しぶりに話を更新。





