食い違う現実と鳥居の外へ
「令和7年の1月だったわ。私の最後の記憶は…あ、そうだ。確か一人旅で奥多摩に来ていて──」
「いやいや、バカ言うな。令和ってなんだよそれは。まー、ここは奥霊だけどな…」
「思い出してきた!そうそう、奥多摩のダムを見に行ってちょっとした散策をしてたの!そうしたら、鳥居、足が…」
自分自身は奥多摩のダム湖を眺めて、しばらくして自転車を走らせて道の合間に見晴らしの良い場で休憩していた。すると、キラリと光るものがあり気になった──。
鳥居、いや、無機質な塊がこちらを浮遊しながら浮いて──。
「これが噂にいう、漫画的な展開なのかあ」
「はあ?」
「コイツ、やべーよ。お医者に連れていった方がいいよ」
「うーん。医者って。精密機器がある病院はここにねえのは知ってるだろが」
「ウチ側の病院なら」
二人がぐちゃぐちゃと、話し合っている。それよりもシハは自らがどうしてこの地に来たのか鮮明になるのを喜ぶ反面、住まいやらが出てこないのが不安になった。
「血蠱蝸に奪い取られたに違いないっ!くっそ!キヒ、さん、鳥居くぐっていいすか!」
「お、おい!」
「──血蠱蝸、いや、シハ。コイツらの願い、しかと受け止めた。お前を病院に連れていこうじゃあないか。フフフ」
あの意地悪い神さまの声色がして、空気が凍りついた。どこから湧いたのか。
儚げな雰囲気をまとう少女が境内にいた。
「ゲッ」
「ヤヒルメさま?!ひいーっ、本当のヤヒルメさまだ!」
「偽物がおってたまるかい。甲、コイツらが無事に帰ってくるまでシュライン・ゲート、おおっと鳥居の近くで門番を頼むぞい」
幼児の姿をした神さまはフン、と鼻を鳴らして鳥居を指さした。
「診察料はこちらで払っておく。感謝するのじゃ」
「ヤヒルメさま。そんな大仰な」
キヒがわずかにたじろぎ、抵抗力をなくし項垂れた。
「で、同行は俺なんですよね?」
「もちろんじゃ!ヤヒルメはお外に出られないくらいか弱い女の子じゃからな」
(ええ…どうしよう。頭を改造されたりしたら…)
「そうじゃなあ。頭ん中にでっかいボルトが入っているかもしれん」
「考えている事を読まないでください!」




