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俺なんかとは違って皆はラブコメしてるなぁ……と思っていました  作者: 向井 夢士
第2章

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39話 音野先輩と

 玉島先輩の事で色々あった日の翌日。

 俺と岩田先輩は音野先輩と会うべく、市内にあるとあるカフェで音野先輩を待っていた。


 ちなみに、栄えている市内の方を選んだ事にも理由がある。

 その理由は市内だと人通りが多く、尾行が行いやすいと思ったからだ。遊ぶ場所なんかも多く、音野先輩が何か動きを見せるかもしれない。


「岩田先輩、トーク履歴の方はちゃんと消しました?」

「もちろんだ。どこからバレるか分からないしな」


 音野先輩と直接会う事になるので、リスク管理は徹底的に行う必要がある。音野先輩がどう出てくるかは分からないので、こちら側も臨機応変に対応できる姿勢で音野先輩を迎え撃たなければならない。



 トークの画面とか履歴を簡単に消せるの、便利すぎて助かります。

 俺はモテる事がないので浮気とかそういった最低な事はしないが、過去の恥ずかしいトークとか黒歴史を消して見えなくできるので、いつも本当に助かっております。

 

 昔の自分って、何であんなに痛く見えるんだろうね?



「きたぞ。カフェの前でスマホを見ている奴こそ……俺たちのターゲットの音野先輩だ。髪を染めている事は涼香から聞いていたが、容姿が優れている事もあって似合ってはいるな」


「俺たちは色々と知っているので、めっちゃチャラ男やん……と思っちゃいますけどね。容姿が優れている事からも腹が立ちますし」


「大体、悪い事をする奴って能力が極端にあるかない奴ばかりだからな。中間層が一番生きやすく、この世界で突き抜けて目立つのは非常に難しい、って事だな」


「人生は理不尽の連続ですからねぇ。俺の所に降っている雨は、いつになったら止むんでしょう」


 岩田先輩がカフェのドアの前にいる音野先輩を発見し、俺に知らせてくる。



 最終的には良い結果と解決が待っているなんて、俺にとっては綺麗事で歪な言葉だ。


 止まない雨はないとしても、その良い結果が出るまで……びしょ濡れでひたすらに耐えなければならない。


 辛さに耐え切れず、自分から逃げてしまう人も多いのがこの世界。雨が止まないなら、雨を避ける事ができる避難所でも作って欲しいものだ。


 そして岩田先輩と二人でそんな事を話している内に、音野先輩も俺たちを見つけて近づいてくる。



 さてさて……仕事の時間ですよっと。



◇◇◇



「水城君、か。こちらこそよろしく! 俺については知っていると思うけど、自己紹介も一応しておくね。俺の名前は音野おとのじゅんで、今は関西の大学に通ってる。高校時代はご存知の通り、生徒会の会長をしてました。まぁ、こんな感じで十分かな?」


「ありがとうございます! 二年生になった事で生徒会を気になり出して……こうして音野先輩とも出会える事ができて本当に嬉しいです!」


「本当? 俺と会ってもそんなに良い事ないよ?」


「いえいえ! 音野先輩が凄いという噂もたくさん聞きましたし、一年の時に音野先輩が三年だった事であまり知らなかったというのもあったので……こうして音野先輩と会える事ができて、本当に嬉しいですよ。色々とお聞きしたいです」


「三年と一年って、確かに結構な差がある感じするよね。中学を卒業したばかりの人と受験生、って考えると差は実際にあるんだろうけどさ」


「そうですね。せっかくの機会なので、生徒会の話だけじゃなくて受験の経験談とかもお聞きしたいです。音野先輩は頭も良いですし、尊敬できる先輩なので」



 でも本当は音野先輩の言う通りですけどね! 実際に音野先輩と会っても、良い事はありません!!


 そして、俺の嘘をつく才能に恐れおののくがいい!


 いやね……本当に俺のコミュニケーション力のレベルって最低レベルだとは思うんだけど、嘘ばっかり話すとなると、何か変にリラックスできてコミュニケーション力のレベルが上がるんだよね。


 更には話す事がある程度決まっている事と、自分が作り上げたキャラを憑依させやすいみたいな事もあるしねぇ。


 今回は太鼓持ちキャラでお届けするぜ!


 自分の長所とか特技を言う時は悩む癖に、嘘はスラスラと出てくるのは情けないが……そこのところは許してくれよな!


 まぁ調子に乗って自分の事を考えるのはこれぐらいにしておいて、冷静な気持ちで俯瞰的に全体を見ていこう。


「じゃあ……まずは親睦会の事について話しましょうか。岩田先輩はいつでも大丈夫だと話されていたんですが、音野先輩の都合はどんな感じですか?」


「俺もそこまで用事はないし、いつでも大丈夫だよ。一週間ぐらいはこっちにいる予定だから、その一週間の中から都合の良い日を選んでくれれば」


「それなら、明後日の午後ぐらいから親睦会を始めましょう。場所は俺の友達の家で行う予定です。その子も、生徒会に入りたいと思っている仲間なんですよ」


「正直な話、生徒会に所属すると内申点はかなり稼げるからねぇ。皆入りたいと思うのかな」


「そうなんですね。音野先輩もその事が目的で?」


「正直に言うと、だけどね。でも生徒会は本当に楽しかったよ」



 音野先輩の人物像がイメージとほぼほぼ同じだった事を確認した俺は、話を進めていく事にする。


 親睦会という名の作戦決行日については、色々な事を考えて明後日にする事になった。


 時間がそこまでかけられないという事もあるので、日程がどうしても詰まってしまうのはもうしょうがない。

 明後日の午後という事ならまだ時間があるし、これがベストな選択だとは思う。


 そして音野先輩が生徒会に入った理由は、内申点目的だったらしい。


 確かに生徒会に入っているという事だけで良いイメージがつくし、そこで結果を残せば評価もされる。

 進藤さんの件で対峙した倉島と違って、音野先輩はかなりの策士だ。ずる賢くて効率的に人生を過ごしていくタイプのように思える。


 倉島あいつなんか、俺の名前もちゃんと覚えてなかったぐらいだからね?

 そう考えると、名前をちゃんと頭に入れて覚えてくれた音野先輩の方が、まだマシなのかもしれない。


 いや待て! 音野先輩もすぐに俺を忘れるぞ! こんな男に騙されるか!



「それよりさ、その水城君の友達? の子って可愛い? 岩田からSNSのアカウントを教えてもらったんだけど」

「あー岩田先輩に教えてもらって、音野先輩のアカウントの方から俺の方にもフォローが来たんですね。友達はまぁ……可愛いは可愛いですよ。性格に難はありますけど」

「性格は良くないの?」

「そうですね。人を下僕のように扱うのが好きみたいで、口も悪い。あと頑固なところはあるのに臆病なところもあって、それでいて面倒くさい。あと自己中心的でこの世界が私のものだと思っているような……」

「おい水城。流石に言いすぎじゃないか?」


 流石にふざけすぎたのか、隣に座っている岩田先輩が俺の腕を少し掴んで注意をしてくる。ここは素直にごめんなさい。


「これは本人に直接言わないといけないな。水城がどんな謝り方をするのか、楽しみにしておこう」

「さ、流石に冗談ですよね? 岩田先輩も優しいですもんね! よっ、イケメン!」

「冗談ではないぞ。覚悟しておくように」


 あっ……この先輩、進藤さんに言う気満々だ。


 作戦とかどうこう関係なく、単に面白そうだからっていう理由だけで、進藤さん本人に言う気だよこの先輩! 誰か止めて!


 ちゃいますやん。これも作戦ですやん。

 性格に難があるとか言っておいた方が、音野先輩も絡みにくくなって安全ですやん!


 まぁそんな気持ちは言い訳用に準備していただけで、普通にちょっとふざけただけなんですけどね。改めて、誠心誠意謝罪させていただきます。


 あとここからは余談になっちゃいますけど、茜のせいでもありますからね?


 あのバ……じゃなかった。あの明るい茜が、『人生はコメディ。面白い人こそが正義!』とか言うもんだから、ちょっと俺もボケたくなっただけなんです。だって俺、ツッコミ役ばっかりなんですもん。


 でもいいや。音野先輩の件と岩田先輩へのカウンターを合わせて、こっちも爆弾を投下してやるぜ!

 いつもは堅実そうで真面目な岩田先輩と、悪人の音野先輩の反応が楽しみですねぇ?




「でもあれですもんね! 岩田先輩は玉島先輩の事が大好きですもんね!」

「お、おい!? な、な、な、な、何を言っているんだ水城!?」




 俺たち三人の会話はまだ続く——





 

 



 


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