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俺なんかとは違って皆はラブコメしてるなぁ……と思っていました  作者: 向井 夢士
第1章

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25話 親子

「君と二人で何を話すんだ?」

「娘さんの事ですよ。ちょっと話したい事がありまして」


 俺は二人三脚が終わった後、進藤さんのお父さんである孝蔵こうぞうさんと接触した。

 俺は孝蔵さんに二人で話さないか、と提案する。


「ふむ、何だね?」

「僕はしん……真紀さんと仲良くさせていただいています。そんな中で、真紀さんが親の事を過剰に嫌っていたのが少し気になって」


 いつも呼んでいる『進藤さん』だと混同して話がややこしくなってしまいそうなので、俺は名前で呼ぶことにして早速本題に入る。

 どうして親を嫌っているのか。それが一番気になるポイントだ。


「そうか。真紀は学校でもそんな話をしているんだな。嫌われている事は知っているし、ある程度は理解しているつもりだ」 


「理解……?」


「少し私の考えについて話そう。私はね、真紀には私のような失敗をしてほしくないと思っている。私は会社を経営していて、軌道に乗っている今はある程度裕福な生活ができるようになった。ただここまでの状況になるまで、私は多くの失敗をしてきたんだ」


「失敗、ですか」


「私は、最終的に結果が良けれは成功、みたいな考え方は嫌いでね。物事には過程も非常に大事だと思っている。君も経験した事があるんじゃないのか? 努力が報われなかったことや、自分より楽をしていた奴が評価されたみたいな事が」


 孝蔵さんは俺に自分の考えを話し始める。まだ話の全容は分からないが、少しずつ理解が進んでいく。


 確かに孝蔵さんが言うような経験はあった。


 この世界では効率が良い奴が生き残る。

 中学時代の話だが、俺の嫌いな奴が褒められていた時はとても腹が立った。グループワークでは俺だけが頑張ったのに、手柄を横取りされた時もあったな。


「もちろん、真面目に取り組む事や努力する事は素晴らしいと思う。生きるためにも大事なことだろう。ただ……人間にも限界はある」


「それは分かります」


「常に100%で頑張る人と常に70%で効率よく生きている人がいたとしよう。すると30%も差があるわけだろう? 常に100%で頑張る人はとても素晴らしいと思うが、何か物事が終わるたびに疲れ果ててしまう。ただ70%の人間は、余った30%の体力がある。その30%の体力で新たな勉強をする事もできるし、趣味を楽しむ事も出来る。次の仕事にも万全な状態で挑めるというわけだ」


「常に100%なら人間は壊れてしまうと?」


「そう。私は昔、色々と挑戦して多くの失敗をした。その失敗の度にメンタルを削られ、徐々に自分の自信もなくなった。若い時はガムシャラに生きていたが、あのような生き方はもうしたくないと思ったな。身体や心がいつまであっても全然もたない」


 孝蔵さんの言いたい事はきっとこうだろう。


 物事に対しては結果だけでなく、いかに効率よく行ったかという過程が大事だ、と。


「でもその若い時の経験があるから、今は成功しているんじゃないですか?」


「それは確かにそうだろう。ただ娘の真紀に、昔の私のような辛い経験をして欲しくない。今の私には、色々と力や余裕がある。そういう事もあって、私の話を素直に聞いて欲しいといつも言っているのだが……真紀は私の話を聞くつもりがないらしい」


「ちなみに、その自分の考えを真紀さんに話したことは?」 


「ない。そもそも聞く姿勢がないからな」



 なるほど。


 孝蔵さんは辛い過去があったから、娘にはそういった辛い事を経験させたくないんだな。今の自分に力がある事を活かして、娘を幸せにするつもりなんだろう。


 そんな孝蔵さんが……似ている。

 

 一人で考えている事、そして一人で突っ走っている所が……親子ともどもそっくりだ。


「その真紀さんのお母さんというか……奥さんは?」

「真紀が小さい頃に離婚してね。今もたまに会う仲ではあるが……まぁこれも私の失敗と言えるだろうな。嫁は嫁で真紀をエリートに育てたかったらしい。そんな中で、考え方の対立があって別れてしまったな」


 俺は誰も悪くないと感じた。


 詳しい事情は分からないし、それぞれにダメな点もいくつかあったと思う。


 ただ、進藤さんが親の言いなりになりたくないという考えも、お父さんの過去の自分の経験から自分の力を使って成功への道に導こうとすることも、お母さんの娘をエリートに育てたいという気持ちも……全てわかる。


 おかしな考えなんて、別に誰もしていないのだ。


「あと真紀さんって許嫁というか……既に婚約関係の人がいるんですよね」

「先ほどの倉島君の事だな。少し態度は改めて欲しいと思うが、容姿と学力については申し分ないと思っている。倉島君のお父さんが私と関係のある大企業の方でね。生活に困ることはないだろう」


 確かに倉島の性格は嫌いだが、進藤さんの相手としては十分な奴だ。


 それに恋愛や結婚については、愛か金かみたいな問題もある。

 

 愛も確かに重要ではあるが、それ以上に今の世の中で重要になるのがお金だ。お金って、生きていくために最重要なものだからなぁ。



 とまぁ……ここまで話を聞いて、俺は進藤さんのお父さんである孝蔵さんの考えを理解したつもりだし、納得もした。


 ただ、それとこれとは話が別だ。


 俺は進藤さんと協力関係になり、進藤さんの力になりたいと思った。


 自分が大切だと思う人には、幸せになって欲しいに決まっている——



「……お父さんにも問題はあると思いますけどね」

「何?」

「聞く姿勢がないってのは、お父さんも一緒じゃないですか。娘さんの話を真剣に聞いたことがありました?」

「いや、真紀は夢とかしたい事も話さないような……」

「それはお父さんのせいなんじゃないですか? お父さんがそういった態度だから、娘さんである真紀さんは考えるのを諦めたと思うんですよ。そしてどんどんと親を嫌いになっていって、今も親に反抗している」


 俺は孝蔵さんに、ただひたすらと自分の思った事をぶつけていく。


 孝蔵さんの考えについては俺も納得したが、それはあくまでも孝蔵さんの立場で考えていたから。



「だから、私が正しい道に導こうとしているんじゃないか」

「その考えは正しい所もあります。でもまずは、真剣に話してからでしょう? 勝手に押し付けるのは傲慢なんですよ」

「それは」


 俺は孝蔵さんの話を遮るような形で、更に自分の気持ちや考えについて話していく。


「聞く耳を持たないからですか? だったら真剣にお願いして、一度ゆっくり話そう、と言ったらいいじゃないですか。お互いが納得するまで気持ちをぶつけて、真剣に話し合えばいいじゃないですか!」


 俺が気持ちを込め、語気を強めて言うと孝蔵さんは少し驚いた様子を見せる。


「もちろん、真紀さんにも悪い所はあると思いますよ。やっぱり親子というか……似てるんですよ。自分一人で進んじゃうところが」

「……」

「だから一回、真剣にお願いして話し合ってみてください。娘さんの今の気持ちや、どう思っているかが聞けると思います」


 俺がそう言うと、孝蔵さんは俺を見て少し笑った。


「水城君、だったな。君はどうしてそこまで」

「助けたいと思った人を助けるのが、普通じゃないんですか?」

「ふっ……少しだけ昔の自分を思い出してしまったよ。私たちの会社で、水城君を雇いたいぐらいだ」

「やめてください。俺なんか何もできないですよ。無能なのを隠しているだけの、変わり者で面倒な人間ですから」

「そういうところも含めて、だ。君はそう思っていなさそうだが、働くことに対しては向いている性格だと思うぞ?」 



 い、いやだぁあああああ! 社畜になりたくなぃいいいいい!



 まぁ……進藤さんのお父さんが思ったよりも話が通じる人で良かった。

 

 そこら辺は、流石進藤さんのお父さんだ! といった感じだな。


「でも会社を経営している割に、人を見る目ないですよ。倉島もマウントを取りたいだけの、性格悪い奴ですから」 

「……君は真紀の事が好きだったりするのかい?」

「そういう話じゃないですって! ただ、倉島の事を真紀さんは好きじゃないみたいなので、力になろうかなと思うだけです。自由にさせてあげたいというかなんというか」

「というと?」

「真紀さん次第にはなりますが、ここから面白いものが見れると思います。期待しててください」




 俺は孝蔵さんにそう言い残し、クラスのテントの方へと向かった——



 



 



 


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