旧友との再会 ①
シスツィーアがレオリードのことを『レオン』と呼びはじめてから数日
とはいえ、この数日間でシスツィーアがレオリードと会ったのは一度しかない。
ふたりきりではなく、リオリースも一緒に3人でちょっとしたボードゲームで遊んだのだ。
さすがにリオリースの前でレオリードを呼び捨てにするのは気まずくて「レオリード殿下」と呼んだシスツィーアだが、レオリードの淋しそうながっかりしたような顔を見て、慌てて「レオン」と呼び
そうすれば「ズルい!オレも!」と、リオリースのことも「リオン」と呼ぶことになったシスツィーア
けれど、うっかりすると「レオリード殿下」と呼びそうになって
だから、うっかりすることがないようにと、部屋にひとりでいるときにこっそり呼ぶ練習をしてみたけれど
「レオン」
かぁぁぁぁぁ
口にしただけで恥ずかしさで顔を両手で覆ってしまう。
(なんでこんなに恥ずかしいの!?)
心なしかいつもより心臓の鼓動が早く感じられるし、身体も熱くて
(心臓に悪いわ!)
リオリースのことは「リオン」と呼べるし、「ツィーア姉さま」と呼ばれることにも慣れ、なんなら「弟ができたみたいだわ」と微笑ましさすら感じる。
だけど、レオリードから「シスツィーア」と呼ばれることには慣れなくて、こちらも「恥ずかしい」と、毎回平静を装うことで精いっぱいなのだ。
(やっぱり、了承するんじゃなかったわ)
きっとこの恥ずかしさは、レオリードから親しく話しかけられることへのいたたまれなさ
(そのうちに慣れるだろうけれど、慣れるまでは失礼がないように平静を装わないと!)
そうシスツィーアが決心して数日後・・・・・・・・・
「え?王宮にシールスが来るんですか?」
「そうだ」
すっかり夏らしくなったある日
シスツィーアはレオリードから「今更だが、香夜祭の打ち上げをしようと思うんだ」と打ち明けられていた。
「本当なら卒業式の前に皆を王宮に招待する予定だっただろう?それはできなかったから、夏季休暇の初めに皆を招待しようと思ってね」
「あ・・・・・・」
シスツィーアも通っていた学園で毎年行われる香夜祭
その打ち上げを、香夜祭の準備や運営を手伝ってくれた学生全員を招待して、王宮で行う予定だったことを思い出して
(そうよ。わたしだけじゃなくて、レオンもそれどころじゃなかったはずよ)
本当ならシスツィーアはレオリードとともに手配をする予定だったのに、すっかり忘れて学園を退学してしまったし、レオリードも卒業式前は慌ただしくそれどころではなかっただろう。
その原因のひとつが自分であることにシスツィーアは落ち込みそうになるけれど、気遣うレオリードに余計な負担をかけたくないからぐっとこらえて
「それで、全員とはいかないが多くの者からは「参加したい」と返事をもらっていてね。君さえよければ、シールスと話したくはないかと思ったんだ」
「ありがとうございます。えっと、ご迷惑でなければシールスと会って話しをしたいです」
「わかった。みんなが集まるところに参加してもらっても構わないが、それだと君に負担がかかる。別室を用意しようと思うがどうだろうか?」
シールスには会いたい
だけど、退学したシスツィーアは集まりに参加する資格なんてないし、参加したらしたで注目を集めてしまう。
(せっかくの王宮ですもの。みんなにはわたしを気にせずに楽しんで欲しいわ)
レオリードもシスツィーアと同じ考えだからこそ、「別室を」と行ったのだろう
「はい。あの、シールスはわたしと会って大丈夫なんでしょうか?」
「ああ。シールスも君に会いたいと言っている」
「それじゃあ」
「シールスだけと会いたい」と言いかけて
「あ!あの、兄・・・・・・は」
香夜祭の手伝いなら実兄であるアルツィードもしていた。
(お兄さまも来るのかしら?)
それなら
「ああ。残念だがアルは騎士団の方で王都を離れていてね」
「え?」
「毎年新人の騎士たちはいくつかの班に分かれて辺境伯家へ行くことになっているんだ。魔物討伐の実地訓練を兼ねてね」
「そうなんですね」
ドキドキする心を抑えてシスツィーアが尋ねるものの、レオリードの言葉に驚きへと変わる。
シスツィーアの生家であるロック男爵家も通称『魔物の森』と接しているが、新人騎士たちが来たことはなかったから初耳だ。
「夏になると魔物たちの動きも活発になるだろう?まあ、アルは学生の時から魔物討伐に参加していると言っていたから心配はないよ」
「・・・・・・・はい」
シスツィーアの心はアルツィードと会わずに済むことに、ほんの少しだけほっとする。
だけど、同時に何とも言えない、がっかりした気持ちも広がって
「シスツィーア?」
うなだれたシスツィーアに、レオリードの気づかわし気な声がかけられる。
シスツィーアは慌てて顔を上げて
「えっと、何かお手伝いできることがあれば言ってください」
「ありがとう。みんなに振る舞う菓子や軽食を決めるのを手伝ってくれると助かるよ」
小さく微笑みながらシスツィーアが申し出ると、レオリードは嬉しそうに笑みを返した。
最後までお読み下さり、ありがとうございます。
次話もお楽しみいただければ幸いです。
誤字の修正と、最後に少し書き足しました。




