表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/29

舞台裏 ④ ~最初のおわかれ~



アルツィードがレオリードの執務室を訪ねた日


レオリードはルドルが王都を離れて、故郷へ帰ることを知らされた。





「先日は慌ただしくてすまなかった」

「いえ。こちらこそ、今日はお時間を作っていただき、ありがとうございます」


勧められた椅子に座ることなく、アルツィードは深々と頭をさげる。


レオリードは苦笑しながら


「気にしないでくれ。先日の魔道具は素晴らしい出来だと魔道術師団長も驚いていた。ルドル殿には改めて礼に伺うつもりだが、本当に謝礼は必要ないのだろうか?」


当然レオリードはルドルへ謝礼を支払うつもりで用意して行ったのだが、ルドルは頑として受け取らなかったのだ。


「もともと祖父は受け取る気はなかったようですから」

「本当に払わずとも良いのか?」

「はい。祖父は頑固ですから、一度受け取らないと決めたら受け取らないでしょう」


苦笑するアルツィードも、レオリードからの謝礼は受け取る気はないのだと、雰囲気で伝わってくる。


(まあ、あの質問に答えた時点で伝わっただろうな)


『孫の、シスツィーアのためになるのでしょう?』


核心を突いた、確信を持って聞かれた問いを平然とはぐらかせることなど、レオリードにはできなかった。


けれど、ルドルたちに必要以上の心配をかけたくはない。


それはシスツィーアも同じ考えだろうと


(俺はこれ以上、彼女の負担を増やすわけにはいかない)


ただですら、シスツィーアの現状はレオリードのせいなのだから


そんな思いがせめぎ合い、はっきりと言葉にすることもできず、けれど、ルドルたちへ嘘をつくこともできずに、レオリードは微かに頷くだけで精いっぱいだった。


それでもルドルは納得してくれたし、なにを作るのか気になるだろうに一切聞かず、ただ、一心に魔道具を作っていたと聞いている


それはきっと、作り上げた魔道具がシスツィーアの手に渡ると確信したから


現に、出来上がった魔道具はシスツィーアを想って作られたと分かる代物


(大事に想われているんだな)


「孫のためにしたことで、謝礼を受けとることはできない」との、ルドルの気持ちが伝わってきて


伝えることはしなかったけれど、シスツィーアが知れば喜ぶだろうと思うだけでレオリードまで嬉しくなり、知らず知らずのうちに口もとに笑みが浮かび



「それで、今日お伺いしたのは、お願いしたいことがありまして」

「あ、ああ。なんでも言ってくれ。できる限りのことはさせてもらう」


控えめに切り出すアルツィードに、レオリードははっと我に返る


「・・・・・・・・・妹と、祖父を会わせることはできないでしょうか?」

「ルドル殿にシスツィーア嬢を?」

「はい」


急にいなくなった孫娘に会いたいとルドルが願うのも当然のことだし、アルツィードが会わせたいと思うのもよく分かる


(シスツィーア嬢もルドル殿になら会いたいと願うはずだ)


迷う必要はなく、レオリードは即座に頷く。


「もちろんだ」

「ありがとうございます」


レオリードが快諾したことで、アルツィードもほっとした様子を見せ


「いつでも城に来てくれ。ああ、こちらから馬車を手配しよう」

「それ・・・・・・・・は・・・・・」


けれど、レオリードの提案にアルツィードは顔を曇らせる。


「・・・・・・・・できれば、妹に工房・・・祖父の所へきてもらうことはできないでしょうか?」

「ルドル殿になにかあったのか?」

「実は・・・・・祖父が「故郷に帰る」と」

「故郷?ああ、ロック男爵領か?」


シスツィーアにとっても故郷だが、シスツィーアが『帰りたい』と思うかは分からない領地


(たしか、馬車で・・・・ああ、たしか汽車が出ていたな)


ロック男爵領は王都から遠くはなれているが、いざというときに領民が避難できるようにと、先々代国王のときに汽車という乗り物が配備されている。


レオリードがそんなことを思い出していると


「いいえ。それが、ラドリスト辺境伯領に・・・・・・・その、祖母の墓がそこにあるから、と」

「ラドリスト!?・・・・・・・そうか。だが、長旅になるだろう?まさか、お一人で向かわれるのか?」

「いいえ。いつの間に手配していたのか、辺境伯家から迎えの方が来てくださると」


ラドリスト辺境伯領は汽車が開通しておらず、王都からは魔道具をつけた馬車でも一週間はかかる。


あまりの手際の良さにレオリードも言葉を失うが、レオリードが魔道具作りを依頼したときには、すでに手配していたのかもしれないと思い直し


「いつ、発たれるんだ?」

「・・・・・・・・・・・それが・・・・・・明後日、です」

「明後日!?」


さすがに日のなさに驚きで声をあげる。


「はい・・・・・・・・早朝に、発つと」


アルツィードがここへ来たのは、ルドルとシスツィーアを最後にせめて会わせたいと頼むため


レオリードに断る選択肢はなく、すぐにシスツィーアを連れていくための手配を始めた。


当日、なんらかの不測の事態によって会えなくなり、シスツィーアが傷つくことがないよう行き先はぎりぎりまで秘密にし


そうして、シスツィーアをルドルと会わせたのだ


おわかれの、ために


最後までお読み下さり、ありがとうございます。

次話もお楽しみいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ