シスツィーア ① ~新しい日常~
新しい生活がはじまった
「・・・・・・・ここは・・・・・・・・?」
アランとの『儀式』の途中でいつのまにか気を失っていたわたしが目覚めたのは、薄暗い部屋のベッドのなか
「気がついたか」
すぐにあかりが灯され、今度は明るさに慣れなくてぼんやりする視界で見えたのは、ほっとした顔のレオリード殿下
「新しい君の部屋だ」
「えっと・・・・・・・ですが、この部屋は・・・・・・・」
レオリード殿下に支えられながら起き上がり部屋を見渡すと、部屋には白衣を着た女性とメイド服を着た人もいて
「・・・・・・・アランの、部屋・・・・・・・」
家具はすべて入れ替えられているとは言え、見覚えのあるここはアランの部屋
さすがに驚いたし、アランが帰って来たときに部屋がなくては困るだろうと思うけれど
「ここが一番、魔力が集まりやすい。それに、アランからの提案だ」
「アランの・・・・・・・」
わたしが魔力不足になったとき「少しでも緩和できるように」と、アラン自ら部屋を出て行ったと言われては断ることも出来なくて
(気を使わせて、申し訳ないわ)
わたしが知ったら断るのを見越して、秘密にされていたお部屋替え
アランの家具はすべて運び出されていて、わたし用にと別の家具が運び込まれていては断ることもできなかった
そのあとは、白衣を着た人が診察してくれて
「うん。身体に異常はなさそうね」
見覚えがある人だけれど、頭のなかがぼんやりして思い出せなくて
まだ夜だからと、そのまままた眠って
翌朝には
「この度、シスツィーアさま付きとなりました、キーサと申します」
わたし専属のメイドだと、一人の女性を紹介された
「えっと」
ひざを折って腰を深く落としたまま動かなくて、どうして良いのか分からずにレオリード殿下を見上げる。
「キーサ、顔を上げてくれ」
レオリード殿下が苦笑まじりの声で言うけれど、キーサさんは顔を上げることなく、なんだかレオリード殿下を叱るような声を出す
「殿下、恐れながら」
「ああ。だが、彼女が戸惑っているだろう。今日のところは顔を上げてくれ」
レオリード殿下も気にする風でもなく
(なんだか親しそう)
ふたりのやり取りからそんな感じがしていると
「・・・・・・・かしこまりました」
女性がスッと姿勢を正す
(初めて見る方だわ)
しゃんと伸ばされた背筋と、きっちり束ねられた髪
たぶん歳はメイド長よりも上で、なんだかメイド長より威厳を感じる、仕事ができる雰囲気の女性
「キーサが中心となって、君の世話をしてくれる」
「何なりとお申し付けください」
にこりと微笑まれて、慌ててベッドの上でお辞儀を返す
「シ、シスツィーアです。よろしくお願いします。キーサ・・・・・・さま」
「どうぞ、お顔を上げてくださいませ。わたくしのことは、キーサとお呼びください」
きっと高位貴族の方だと思うから「さま」をつけて呼んだけれど、にこりと笑みを深めて訂正されて
「シスツィーアさまの体調がよろしければ、朝食の前に身支度をお手伝いいたします」
そう言うと、レオリード殿下に退室を促して、わたしには「まだベッドから出る許可がないから」と、顔を洗うための容器やタオルをテキパキと用意してくれた
そのあとも
「ルリと申します」
「サラと申します」
朝食が終わった後に紹介されたのは、わたしに歳の近いまだ新人のメイドさんたち
「わたくしとこのふたりのどちらかが、お世話を致します」
大人数だと気が休まらないだろうと、この三人がお世話をしてくれることになった
最後までお読みいただき、ありがとうございます
次話は1月17日投稿予定です。
お楽しみいただけると幸いです。