伍百文字【WEB】
伍百文字
伍百文字の話しをしよう。
育まれし伍百文字は、きっちり拾月拾日で世界の門を叩いた。
伍百文字は産まれしても、オギャアとは言わずオニャアとその壱声を上げた。
伍百文字は、何の因果か伍百家の長男として産まれた。
伍百文字は何の因果か、伍百家壱門の長家に産まれた。
伍人目にして待望の長男として産まれ、祖父の伍百文無の嫌らしいまでににんまりしたでれでれ顔は見ていても恥ずかしい程であった。
そして伍百文無に文字と名付けられた。
父の伍百壱文は、伍百文字の産まれた朝に"探すな"の壱文を残し旅立っていった。
伍百文壱を、溺れるほどに溺愛していた母があった。
母の伍百文子もまた、オギャアとは言わぬ文字を残したまま、伍百壱文を追うかのように、その壱月後に姿を消した。その真の意は定かではない。
父無し母無しとなった伍百文字は、伍百文無の養子となった。
そしてその参日後、伍百家の実質上の支配者たる伍百文華は他界した。
暫くして、伍百文字の乳母をしていた、文子の双子の姉文華が伍百文無の後妻に迎えられた。
伍百文華に伍百壱門の全てを掌握されるのに、それ程長い月日を要する事はなかった。
軈て伍百文字は、己も何も無い世界へ埋れてゆく。




