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呪いの支配者  作者: 春香秋灯
王国の聖女
65/101

過去は水には流せない

 親父が地面に倒れていた。それを嬉しそうに見下ろす次兄。

「勝った。約束だからな!!」

「なにやってるのよ!! 父さんがダメだってこと、なんでやるのよ!?」

「うるせぇな!! 親父に勝ったんだから、もう行く。時間がない」

 姉の手を払って、次兄は平民街のほうへ走っていく。

「おい、どこに行くんだ!!」

 親父と仲良しの伯爵が止めるが、次兄はさっさとその横を走り抜けていく。それは、珍しい光景だ。次兄は伯爵のいう事は素直に聞き入れていたからだ。それを無視した。

 伯爵は倒れている親父の腕をつかむと、引っ張り上げた。

「なんだ、負けたのか」

「油断した。あんなに技が巧みだと、力技では勝てないな」

「言い訳するな。だから、負けるんだ」

「………」

 親父は黙り込んだ。

 伯爵が俺の元にやってきた。

「見たか? だったら、よく覚えておくんだ。力技だけでは、いつか負ける」

「触んな!!」

 次兄のようにボクの頭を撫でようとするから、伯爵の手を払った。

「お前には、ずっと嫌われてるな」

 伯爵は苦笑する。それが、さらにボクを腹立たせた。

「それで、どうして、こんなことになったんだ? ただの親子喧嘩ではないだろう」

「武道大会に出ると言い出したんだ」

「武道大会って、今日だぞ。なんでお前はそんな時に負けるんだ」

 伯爵は深く溜息をついた。

「血は争えないのかもな」

 そう言って、伯爵はどこか遠くを見た。その方向に、何があるのか、ボクは知らないが、そこに向かって、次兄が走っていったのは確かだった。






 武道大会が終わったその日、俺は筆頭魔法使いの屋敷に強制的に連れて行かれた。リスキス公爵との賭けについてだな。

 俺は武道大会の後片付けを手伝っていたから、屋敷に入ったのは、一番最後である。

 部屋には、筆頭魔法使いハガル、リスキス公爵、リスキス公爵の血族サンセ、侯爵マキラオがいた。俺に長兄ライホーンは不在なのは、助かった。もうしばらく、会いたくないな。

「ロイド、すごいです!! 最後まで、短剣一本でしたね!!!」

「これで、ルキエル兄は優勝出来る実力があった、と証明出来た」

「あなたは、そんなことに拘っていたのですね」

 苦笑するハガル。俺は、サリーの将来なんかどうだってよかった。次兄ルキエルの実力が武道大会でも通じる、ということを証明したかっただけである。そのため、本戦では短剣一本で戦ったのだ。

「では、サリー嬢は王国がいただいていいな」

「ダメだ。負けたんだから、諦めろ」

 経過はともかく、結果は同じだ。俺はびしっとリスキス公爵に言った。リスキス公爵も、冗談で言ったんだけどな。笑ってるよ。

 武道大会が終わったから、やっと解禁みたいに、俺はさっさと酒を飲んだ。うーん、赤ワインかー。

「乾杯の前に飲むなんて」

「待ってられるか!! 俺は普段から禁酒なんだよ。もう大人だってのに、学生だからって、酒も飲ませてもらえないって、どうなんだよ」

 俺は酒のボトルを握る。絶対に離すもんか!!

「今日の勝利者なんですから、大目に見てあげてください。それに、酒に酔った勢いでしか話せない事ですし」

 筆頭魔法使いハガルがおかしなこと言った。お前、酔わないじゃん。

 妖精憑きには薬が効かない。酒も同じである。人にとっては酒でも、妖精憑きにとっては、ちょっと苦い水である。

 その場にいる全員が突っ込みたいが、頑張って飲み込んだ。偉いな、皆、大人だなー。

「皇族マリィと皇族エリカのことは、帝国では禁忌に等しい扱いなんです。王国での伝説を否定せず、そのまま聞き流しています」

「あれか、大昔の話だから、真実からねじ曲がった、というやつだな」

 よくある話だ。ハガルが言いたいことは、そうなんだろう。

「王国は、これ以降、皇族エリカの子孫を要求しない、と約束してください」

「それは、また、一方的なことを。王国も、帝国でいう皇族が必要なんだ。今の王族は、残念ながら、能力が足りない」

 何かを思い出すように、リスキス公爵は目を伏せる。

「サリー嬢は、立派だな。まだ成人前だというのに、欲ばった商人たちを黙らせるのだから。今の王族では、無理だろう」

「サリー嬢には、大局を見る目があるからでしょう。ですが、皇族エリカに似ているから、という理由で連れて行くのは許しません。それでは、過去、皇族マリィを毒殺し、皇族エリカに王国の負債を押し付けた王国と変わりません」

「それは、一体、どういうことだ?」

 まだ、真実が隠されていた。きっと、皇族エリカの子孫の話を出る度に、筆頭魔法使いは語ったのだろう。そして、王国は沈黙したのだ。

 沈黙し、墓場に持って行ったのだろう。だから、リスキス公爵は知らず、同じことを繰り返してしまったのだ。

「リスキス公爵が口伝で伝えてください。当主のみが知っていればいい内容です」

 もう二度と、同じことを繰り返させたくないハガルは、リスキス公爵に頼んだ。

「内容にもよります」

「皇族エリカは、王国では信仰の象徴です。真実を広めることは、悪手となります。そこだけは、心に留めてください」

「それ、俺も聞かないといけない?」

「あの、私も聞くのは、場違いなような」

 俺と侯爵マキラオは、その場から逃げたかった。もう、サリーのことは解決したのだ。それ以上、知らなくていいと思う。

「マキラオは、本来、知るべき立場です。あなたは侯爵家の当主ですから。何故、知らないのか、そこが疑問です」

 首を傾げる筆頭魔法使いハガル。それを見て、聞いて、侯爵マキラオは黙り込んだ。前当主マイツナイトの後継者はサリーである。つまり、サリーが隠された秘密を知っているということだ。

「まず、皇族マリィの毒殺です。マリィの毒殺が発覚したのは、王国のクーデター後です。皇族エリカの父親、義母、義妹が捕縛されました。帝国は、皇族エリカの虐待を知り、即、父親、義母、義妹を帝国に連れて行き、拷問の末、その事実を知ることとなりました。ですが、毒殺という事実に、女帝は疑問を挟みました。皇族マリィは妖精憑きであることは有名でした。毒は効かないのですよ」

 この伝説の最初の疑問、それは、皇族マリィの毒殺であった。

 それは、妖精憑きのことをそれなりに知ると、最初に疑問に持つことである。皇族マリィは妖精憑きの力を悪用して、罪人を呪われた赤ワインで毒殺したのだ。

「妖精憑きの力を悪用した、という話だよな。悪用、ということは、妖精憑きにとっては、格を落とすことだったんじゃないか?」

 まず、呪い自体、格を落とす行為のはずだ。皇族マリィはそのため、妖精憑きでなくなったのではないか、と俺は思った。

「まず、妖精憑き、という部分に、人々は騙されます。いいですか、マリィは皇族なんです。皇族には、筆頭魔法使いの妖精が守護についています。妖精の守護により、皇族は病気にならない、怪我もしない、毒殺だって防がれるのですよ」

「確かに」

 矛盾が生じた。伝説がおかしいのだ。皇族マリィは、毒殺出来ない。

「ここから、もう一つの伝説が交差します。妖精殺しの貴族です」

「っ!?」

 むちゃくちゃ知り合いだ!! 貴族は恐ろしい、ということをガキに教えるための伝説である。妖精をも殺すことが出来る貴族がいる。その貴族は、妖精憑きをも殺す、恐ろしい人だと。

「口伝ではありますが、大昔、皇族を殺せる毒を妖精殺しの貴族が作ったという話があります。実は、ある皇族が、それを隠し持っていました。本来は、手に負えない皇族を毒殺するために使われていた毒です。皇族マリィに、それを使われたのですよ」

「それでは、皇族マリィを殺したのは、同じ皇族だということですか!?」

 王国は冤罪を被せられたというふうに聞こえたリスキス公爵は机を叩いて叫んだ。

「毒を保管していたのは皇族でしょう。ですが、毒を盛ったのは、当時、王太子の愛人であった、皇族エリカの義母です。皇族マリィを毒殺したい義母に、マリィを恨む皇族が与えたのです。毒を渡した皇族は、この事が発覚後、家族ともども、処刑されました」

 結局、毒殺したのは、皇族エリカの義母であった。その事実に、リスキス公爵は黙り込むしかなかった。

「そして、皇族エリカは虐待の限りをつくされました。幸いというか、不幸というか、皇族エリカは力の強い妖精憑きでした。だから、生きていられたと言えます。その知能は幼児に止められ、父親、義母、義妹の都合のいい常識を植えつけられました。その中で、最低最悪だったのは、婚約者のことです」

 ここから、リスキス公爵が関わってくるのだ。

「皇族エリカは、リスキス公爵の子どもと婚約を結ぶこととなりました。両者は、一度も対面したことがありませんでしたが、貴族の婚約では、よくある話です。皇族エリカは皇族と王族の血筋です。リスキス公爵は貴族の中の王族。これほど、血筋的な良縁はないでしょう。本当に、血筋だけで結ばれた婚約です。婚約者は、皇族エリカに会ったことはないのに、噂を間に受けて、信じました。悪逆の限りをつくす皇族エリカを嫌悪したという話です。ですが、皇族エリカは婚約者を愛しました」

「一目惚れだったと日記に書いてありました」

 リスキス公爵は過去の日記を読んで、そう、信じていた。それを聞いて、ハガルは嘲笑う。そう言われるだろう、とわかっていたのか、部屋の片隅から、布がかけられた額縁を持ってきた。

「これは、大昔、普通に帝国では一般公開されていたものです。これを見て、帝国民は王国民を許さなかったのですよ」

 布を外された額縁に入っていたのは、悍ましい肖像画であった。

 やせ細った、成人女性だ。顔のあちこちにも傷が見られ、髪だって薄い。

「これは、帝国にやってきたばかりの皇族エリカです。長年の虐待により、とても目もあてられない姿でした。これを王国が行ったのですよ。これを見て、婚約者は皇族エリカに一目惚れ出来ましたか?」

「………」

 リスキス公爵は黙り込んだ。聖人であっても、無理だろう。まず、人に見えないな。ハガルはすぐに、額縁を部屋の片隅に戻した。

「意地悪をしました。あれは、妊娠して、ああなってしまっただけですよ。力の強い妖精憑きであった皇族エリカは、王国ではもう少し、人らしく見えましたよ。ただ、一目惚れは不可能ですね。そして、皇族エリカのは、一目惚れではありません。洗脳ですよ。皇族エリカが閉じ込められていた地下牢には、たくさんの肖像画がありました。それは、婚約者のものでした。婚約を結んだけど、結婚するまで会わない、ということは貴族の結婚ではよくあります。そういう場合、肖像画を送って、互いの顔を覚えさせるのですよ。皇族エリカとの婚約もそうでした。ただ、皇族エリカの肖像画はなく、婚約者の肖像画だけを一方的に渡すだけだったのでしょう。そして、父親、義母、義妹は、肖像画を地下牢に置いて、皇族エリカを洗脳したのです。この人と子を為すのだと」

 何もない地下牢で、唯一の繋がりは、家族と、婚約者だという男の肖像画。皇族エリカは、家族のいう事をそのまま受け入れたのだ。

「帝国の女帝は、噂で散々、悪女とされていた皇族エリカをそれでも愛していました。会ったことがなくても、妹の忘れ形見である皇族エリカが望むなら、何でも与えたといいます。その溺愛ぶりを皇族エリカの家族は、皇族エリカと婚約者の間に生まれた子へと受け継がせようと企んだのです。そして、子が出来れば、皇族エリカは不要です。また、皇族エリカを毒殺し、次はその子に全ての罪を押し付けようと企みました」

 荒唐無稽な企みであった。だけど、クーデターが起こらなければ、成功してしまったかもしれない企みだ。帝国の女帝は、クーデターに協力するも、皇族エリカを無傷で引き渡すことを条件としたのだ。

「皇族エリカは、ただ、言われた通り、婚約者と子を為しただけです。その方法も知らないから、皇族エリカから、婚約者に迫ったのですよ。そして、婚約者は罪悪感から、皇族エリカを受け入れました」

 そして、皇族エリカとリスキス公爵の子の間に子がいる、という話が出たのだ。そして、それは真実だった。

「いくら、妖精憑きといえども、体は子を育むには耐えられませんでした。皇族エリカは、帝国に来てしばらくして、流産しました。そして、数年で、女帝の息子との間に子を為しました。ですが、寿命を削る出産となりました。皇族エリカは、どうしても子を望み、寿命を捧げて、出産したのです。ここで、悲しいことが起こりました。皇族エリカは、生まれた子を婚約者の子だと思い込みました。周囲はどんなに説明しても、皇族エリカはわかりません。家族から長年受けた洗脳の成果ですね。そして、皇族エリカは、王国に渡り、国王となった婚約者に言ったのです。元気な男の子が生まれた、と。そして、皇族エリカは婚約者であった国王に愛を語ったといいます。ですが、婚約者であった国王は、皇族エリカのこと、これっぽっちも愛していませんでした。それよりも、利用したのですよ。国王はうすっぺらな愛を語りながら、王国を救ってほしい、と皇族エリカに頼みました。そして、皇族エリカは、国王の願い通り、王国各地にある聖域の穢れを引き受けました。見るに無残となった皇族エリカを国王は帝国に送り返したのです。そして、帝国に戻った皇族エリカを見た女帝とその息子は怒り、王国との国交を断絶したのです」

 リスキス公爵は言葉もない。リスキス公爵の血族サンセだって、この真実には、真っ青になる。

 王国側の自業自得だ。いつまでも過去のことを蒸し返して、と王国側はいう。だが、この真実は、俺でもひど過ぎると思う。それを帝国は許し、隠したのだ。皇族マリィと皇族エリカの肖像画を封印し、王国側が勝手に作った伝説を黙って受け入れた。

「だから、何度も言います。皇族エリカと婚約者であった国王の血を引く子はいません。もう二度と、その事を王国は蒸し返さないように。王族がああなのは、自業自得なんです。妖精憑きである皇族エリィを毒殺し、妖精憑きである皇族エリカに王国の穢れを押し付けたから、王国は天罰を受けているのです」

 この話は、幾度となく、帝国は王国の使者に語ったのだろう。筆頭魔法使いハガルは、うんざりした顔で、この話を締めくくった。







 リスキス公爵の血族サンセは、しばらく、リスキス公爵の元で過ごすという。お陰で、俺は侯爵家の離れを広々と使えるはずだった。

「サリーお嬢さん、叱られるぞ」

 ベッドにサリーが座っていた。随分と夜遅くだから、サリーは眠そうに、目をこすっていた。

「お話があります」

「皇族エリカのことか?」

「そうです」

 リスキス公爵が肖像画を持って貴族の学校にやってきてから、サリーは勘付いていた。とても頭のいい女だ。サリーに内緒で何が起こっているか、読み取っていたのだ。

 どうせ、俺はベッドを使わないから、サリーを寝かせた。

「我が家は、皇族エリカの子孫です」

「だろうな」

「皇族エリカの孫に、おかしな子が誕生しました。皇族エリカの孫ですし、殺すわけにもいかず、地下に幽閉されたのです。不気味な子だと、家族でさえ毛嫌いしたと伝えられています。ですが、皇族エリカの孫は、その不気味な子しか残りませんでした」

 何やら、雲行きの怪しくなる内容だった。俺はサリーを見下ろす。サリーは淡々と語り続けた。

「皇族エリカの孫は、皇帝の孫です。皇帝はその血筋を絶やしたくなくて、その不気味な子を当主として、周囲には優秀な家門で固めたのです。そうして、政治の上でも頑強は侯爵家が誕生しました。それから、おかしな子からは、また、一人だけ、おかしな子が誕生しました。次こそは、とまともな子を大事に、おかしな子は幽閉したのです。なのに、まともな子は全て死に、おかしな子だけ残りました。さすがに、これには、筆頭魔法使いもおかしいと気づいたのです。皇族エリカの血筋は決して絶やすことは出来ない、妙な加護が与えられていました。そして、その血筋は、何やら不思議な力を持った子が継代しているようです。試しに、次の代に誕生した、おかしな子を次期当主として教育し、育てました。そうすると、他のまともな子どもたちは生き残り、侯爵家を支える優秀な家門となりました。帝国では、幾度となく、皇族エリカの子孫を絶やされそうなことがありました。しかし、そういう勢力は皆、何らかの不幸でいなくなるのです」

 おかしな子、とサリーは表現した。そうじゃない。物凄く賢い子なんだ。

 人は、異物を排除する。大多数は異物に恐怖を抱くのだ。同じなのだ。生まれ持った才能が化け物であるため、凡人が恐れたのだ。

 優秀な家門が支えて、と聞こえはいい。そうじゃない。皇族エリカの血筋に発現する優秀な子を隠したのだ。そうでないと、周囲は恐怖を抱いて、排除しようとする。

 それは、皇族エリカの孫たちがそうだったのだろう。たった一人の才能の化け物に恐怖して、集団で排除しようとした。そこに、神の加護が働き、ただの人であった孫たちは天罰によって死に絶えたのだ。

 そのことに気づいた筆頭魔法使いは、皇族エリカの子孫を逆に大事にするように働きかけた。それは、その子孫の家族もだ。大事に、だけど、きちんと教育を施して、当主としたのだ。そうしたら、その一族は驚くほど繁栄したのだ。神の加護によって、当主の才能によって、帝国に良い風まで吹いたのだろう。

 その事は、時代とともに忘れ去られたが、当主だけは口伝で伝え聞いているのだ。侯爵家の本来の当主は男爵マイツナイトである。そして、マイツナイトの後継はサリーだ。

 サリーは、皇族マリィと皇族エリカの真実を口伝として知っているのだ。

 サリーは小さい手を伸ばして、俺の手を握った。

「わたくしのために戦ったわけではない、と知っています」

 侯爵マキラオが話したんだな。今回の武道大会の結果で、サリーの行先が決まることとなっていた。

「悪いな。途中から、変わっていた」

 最初は、確かにサリーのための戦いだった。

 俺はポケットから一枚の紙を出して、それをサリーの手に握らせた。

「本戦に出られなかった兄貴のための戦いだ」

 サリーは紙を広げてみて、笑う。それは、本戦で俺が勝ち進むと賭けた券である。これは、本戦の一回戦から決勝まで、相手側が真っ白である。こういう券は倍率が恐ろしく高い。一枚の金貨が百枚の金貨になることもあるのだ。

「わたくし、もっとすごいものを持っていますよ。ほら」

 サリーもポケットから紙を取り出して、広げて見せてくれた。

 それは、予選から本戦の決勝まで、俺が勝ち残るという対戦相手が真っ白となっている券だった。

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