情報を操作する力
というわけで、母サツキは幽体となって、俺の側にいるのだ。普段は妖精の目を休止させているから、俺は母親の存在なんかわからない。ついでに、サツキのこと、ちょっとおかしな能力があるお嬢さんサリーでさえ幽体のサツキが見えないという。
お陰で、王都から男爵の邸宅まで戻る道中は平和だっだ。最初は、母サツキの存在にサリーが気づいたら、なんて警戒していた。ところが、サリーは全く、気づいた様子がなかった。
母サツキの幽体が見える者はそれなりにいるのだが、誰も気づかず、無事、男爵の邸宅まで到着したのだ。
母サツキは、俺の側にやってきて、ちょっと抱きついたりしてくる。幽体だから、俺はそれを退けられない。
『もう、ずっと無視されていて、暇でした』
「ずっと暇してればいいだろう。死んだくせに、贅沢なこと言うな」
『お話相手がいっぱいいましたから、つい』
「だったら、ハガルのトコにいれば良かっただろう。実験手伝ってほしそうだったぞ」
ハガルは俺よりも、母サツキの幽体のほうに、熱い視線を送っていた。貴重な人材、なんて見てたな。
『冗談じゃありません。あの子がやろうとしていることは、人の理を越えることです。いくら、千年といえども、許されません』
「だから、俺にくっついてきたのかよ」
『まあ、ちょうどいい理由でしたし。ロイドのことが心配なのは、本当ですよ!!』
感動とかそういうのが半減した。やっぱ、この女、最低最悪だ。
母サツキ、筆頭魔法使いハガルから逃げるために、俺を利用しただけだ。ハガルは、貴重な才能を持つサツキに色々と手伝わせて、貴重な知識も欲しかったのだろう。
ハガル、甘いんだよな。力づくで出来ることだってのに、母サツキの上辺だけの理由を鵜呑みにして、諦めちゃうんだからな。まあ、この女がいなくても、ハガルは勝手に実験進めるけどな。想像しただけで、ぞっとするよ。
与えられた私室だが、ともかく豪勢なので、居心地が悪すぎる。ベッドにも座れないよ。ちょっと汚れて、弁償しろ、と言われて、その挙句、サリーと結婚しろ、なんてことになったら、お先真っ暗だよ。
イヤな想像をして、俺は壊れても、俺だったら弁償出来るな、程度の椅子に座った。母サツキは、遠慮なくベッドに座ってる。幽体でも、座れるんだな。
『それで、ロイドはサリーと結婚するのですか?』
「しないよ!! あのガキが勝手に言ってるだけだからな」
幽体の母親まで外堀埋めようとしてくるよ。そこはしっかり否定しておく。
『そうでしょうね。貴族になるには、最低限、貴族の学校を卒業しないといけませんからね』
「じゃあ、ないな」
『ですが、過去にいくつかの特例がありましたよ。マイツナイト様は、学生になる前に爵位を引き継ぎましたからね。後見人として祖父母がいたからですが』
「………」
不安だ。後ろ盾、いるからな。
まず、男爵マイツナイトだろ。あと、筆頭魔法使いハガルだ。兄貴の貴族友達だって、後ろ盾になってくれるなー。問題解決出来そうだ。
一気に不安になった。妖精の目の休止させたいが、他にも不安要素が残っている。
「一体、誰が、誰を狙ってるんだ?」
王都から戻る時の襲撃は酷いものだった。
王都に向かう時は、平和だった。たぶん、下手に手を出すと、帝国が調査に出ると危ぶんだのだろう。十年に一度の帝国主催の舞踏会は、帝国中の貴族を集める、帝国が威信をかけた催しである。そこに、貴族同士の足の引っ張りあいをして、招待客を減らすような真似をしようものなら、帝国が出てくるのだ。
だから、往路は平和だった。まあ、ちょっと野党が出てきたが、大したものではない。皆、首だけになったからな。
しかし、復路では、一日に三つも四つも野党やら何やら襲撃にあったのである。男爵家の邸宅に戻るまで、馬車で一週間かかったのだが、馬車の足が遅かったからではない。襲撃を受けて、その事後処理で時間がかかったからだ。ほら、襲ってきた奴らのほとんど、首だけになっちゃったから、それなりの所に届け出をしないと、帝国に叱られちゃうから。
『マイツナイト様ご自身も、色々と後ろ暗いことをされていると聞いていますが、話だけですし』
母サツキは、男爵マイツナイト関係を疑っていた。そっちだろうな。あまりにもしつこすぎる。
「それにしては、情報が漏れすぎるな。内通者がいると言ってるようなものだぞ」
道順に襲撃を受けているのだ。誰かが、男爵家の帰路の情報を流したのだろう。
疑うべきは、男爵家の私設騎士団だ。俺の大事な剣を盗むような、手癖の悪い平民が混ざっていたりするんだから、そういうこと、あるよな。
『それを泳がせているのでしょうか?』
「そうなるな。マイツナイトの奴、誰が裏で糸ひいてるか、わかってやってるよ。可愛い娘がいる道中だってのに、何やってんだか」
『マイツナイト様は、騎士団にも普通に入団出来るほどの実力を持っていますから、守り切る自信があるのでしょうね』
「あのお嬢さんが誘拐されまくりなのも気になるけどな」
話を聞けば、お嬢さんサリーは、ちょくちょく、誘拐されているという。サリーの兄である侯爵の話では、この一年で、十回は誘拐されているのだ。それなのに、男爵マイツナイトは、サリーを好き勝手させている。
何をしたいのやら。男爵マイツナイトの考えもわからない。
まだ、出会って一か月未満である。俺は信用されていない。それ以前に、俺は縁を切りたいのだ。
だが、男爵マイツナイトは、絶対、俺を手放さない。
男爵マイツナイトにとって、俺は大事な大事なサツキの息子だ。他にもいるんだが、こうやって、手元にやってきたのは俺だけだ。マイツナイトは選んでいる場合ではないと考え、手元にやってきた俺をどうにか留めようとしている。
「あー、逃げたい! 他人の人生に責任とるなんて、イヤなんだよ!!」
『マイツナイト様、そんなこと考えていませんよ。ただ、わたくしの身代わりとして、あなたを側に置いておきたいだけです。サリー嬢のことは、話半分、聞き流しておけばいいですよ』
「あんたは、俺とサリーを結婚させたいんじゃないのか?」
てっきり、母サツキは俺とサリーを夫婦にしようと考えていると思っていた。
苦笑する母サツキ。
『あなたがあんなにイヤがっているのですよ。強くは進めません。ただ、サリーにはあなたが必要です。彼女を生涯、理解出来るのは、あなただけです』
「出来ないよ!!」
『サリーが見ている景色をロイドは見えるではないですか』
「………」
サリーが見ている世界は、他とは違う。ただの人には見えない猫を理由に護衛を撒いたり、人を遠ざけたりしている。残念ながら、俺は普段、妖精の目を休止させているから、サリーが見ている景色は見えない。
逆に言えば、妖精の目を通せば、サリーが見ている景色を俺が見ることが出来るということだろう。
「だったら、俺じゃなくってもいい。妖精憑きだったら、誰だって見えるもんだろう」
『どうでしょうか。わたくしが侯爵家で悪戯している時、帝国の魔法使いはわたくしを視認出来ませんでした。見るためには、何か必要なのでしょうね』
「ハガルは見えたじゃん」
『あの子は、見方を学んだんです。城には様々な魔法が施されています。あの城でわたくしを視認するのは、かなり困難なんですよ。わたくし自身は希薄となってしまいますから。賢者でさえ、あの城でわたくしを視認出来ませんでした』
「そうだろうな。あそこは、それなりの力のある妖精じゃないと侵入出来ないからな」
『………』
ちょっと寂しそうに笑う母サツキ。城にはちょくちょく、遊びに行っていたんだろう。
俺が道中、散々、無視して寂しがるのだ。城の中で見つけてもらえなかった母サツキ、寂しかったのだろうな。
「おいおい、お前を殺した皇帝のトコに遊びに行くって、どうなんだよ!?」
しかし、思い返せば、城って、母サツキの死に場所だよ!! 賢者にすら見えなかった、というのだから、皇帝の側まで行っていたということである。ほら、賢者と皇帝は常に一緒だ。
『ちょっと、悪戯してやろうとしただけですよ。何せ、わたくしを殺してくれた男なんですから』
悪戯っ子みたいに笑う母サツキ。死んでも、その性根は変わらないな。呆れるしかない。
「そんなトコに行ってないで、家族の元にも顔を出せよ!!」
『今だからいいますが、あなたたちが暮らしていたあの家は、邸宅型魔法具です。あの周辺には、わたくしは近づけませんでした』
「な、聞いてない!!」
『あの邸宅を買うようにお願いしたのはわたくしです。あの邸宅は、不活の魔法具でした。それをわたくしが復活させたのです。帝国にバレないように、色々と仕掛けをしたのですよ。言い訳になってしまいますから、黙っていました』
言われて、俺は母サツキへの怒りが半減する。サツキはわざと、黙っていたのだ。そうやって、悪者になって、俺の怒りを受け止めた。
急に恥ずかしくなった。俺はガキみたいに、母サツキに怒りをぶつけただけだ。サツキはそれを母親として、大人として、受け止め、言い訳もしなかった。
誰だって、悪者にはなりたくない。だけど、母サツキは悪者になって、全ての罪を背負おうとした。
俺はいたたまれなくて、妖精の目を休止させた。途端、母サツキの姿が見えなくなって、声も聞こえなくなる。
だけど、側にいるんだよな。俺は無言で、膝に拳をぶつけて、時間が経つのを待った。
食事の場に呼ばれた。
「いやいや、俺は家族でも何でもないから」
心底、遠慮する。俺、貧民だからね!!
「ロイド様、お隣に座ってください!!」
「ここはいやー!!」
心底、叫んでやる。なんで、俺は男爵家家族に囲まれた場所に座らされるんだよ!!
初めて、男爵家で食事をとってからずっと、俺は、男爵マイツナイトとお嬢さんサリーの間、正面には男爵夫人アッシャーという、恐ろしい場所に座っての食事だ。干し肉でいいのにぃ。
「固い肉とパンが食べたい」
「私も、たまに、そういうものを食べたくなるな」
妙な所で育ち悪いところを見せる男爵マイツナイト。いっつも、豪勢で、ちょっと噛んだだけで消えちゃうような料理を食べてると、歯ごたえのあるものが食べたくなるんだよな。こう、腹持ちが悪くって、すぐ、お腹すくんだよ。
そう、俺と男爵マイツナイトが言ったからか、固いパンと肉が出てきた。いや、そういう意味で言ったんじゃないんだよ。俺は、路地裏とかで、こういうのを食べたいんだよ。こんな食事のマナーに縛られる場所で食べたって、美味しくないよ。
せっかく出してくれたから、俺は食事のマナーを守って食べる。
「わたくしも食べてみたい!!」
「歯が折れるぞ」
見るからに貴族令嬢のサリーでは、まず、噛めないな。綺麗な真っ白い歯を見て思う。
食後のお茶を出された所で、男爵マイツナイトは人払いをする。その人払いには、男爵夫人アッシャーと、お嬢さんサリーまで含まれた。
「えー、ロイド様と一緒にいたいー」
「お勉強の時間ですよ」
サリーが駄々をこねても、アッシャーが許さない。貴族なんだから、勉強は大切なことだ。将来は、サリーの夫が男爵を継ぐという。大丈夫なのか?
嫌々ながら出ていくサリーの背中を見て、一抹の不安を感じる。サリーには立派な兄姉がいっぱいいた。王都の侯爵家の邸宅では、歳の離れた妹であるサリーを可愛がる兄姉たちが集まっていた。むしろ、あっちこそ、男爵家の跡継ぎにするべきだろう。
男爵マイツナイトの考えがわからないが、他人事だから、口出ししない。ほら、俺はこの家から逃げたいから。
食後であるし、俺は姿勢を崩して椅子に座った。
「で、俺はきちんと護衛をこなしたし、お役御免だよな? もう、十分、お嬢さんを助けたお礼もいただいた。お腹いっぱいだ」
早速、俺は家を出ていくための交渉を始める。
お嬢さんサリーの護衛を引き受けたのも、仕方なくだ。きちんと内容を聞いていたら、絶対に引き受けなかったけどな!! あれは、考えなしの俺が悪い。
だが、男爵マイツナイトは余裕で笑って、自らの首をとんとんと指先でつついた。
「まだ、サリーの傷のお礼が終わっていない」
「責任とりたくなかったから、消したんだよ!!」
傷物になったら一生責任とります、なんて俺が人前で言っちゃったから、サリーについた傷を消すしかなかった。ほら、傷さえなくなれば、俺は責任とらなくていいから。
「そう、お陰で、サリーは傷物ではなくなった。そのお礼がまだ終わっていない。どうせ、行く所もないだろう。しばらく、この屋敷で過ごしているといい」
「ハガルが言ってた。あのお嬢さん、天涯孤独の悪運の持ち主だって。さっさと、神殿に送ったほうが、この家のためにもなるだろう」
「そういう話もあった。サリーがいるところ、何事か起きる」
「だったら」
「私の血筋には、まれに、ああいう子が生まれるんだ。だが、不思議と、いい感じに収まる。かくいう私も、悪運の持ち主だ。一度、侯爵位を返上までした。結局、戻ってきたがな」
「確かに、そうだな」
男爵マイツナイトの過去は、大変だ。母サツキに関わったばかりに、家を没落までさせたのだ。だが、数年で、マイツナイトは爵位を戻された。本来、マイツナイトも天涯孤独の悪運なんだろう。そうならなかったのは、何か別の力が働いたといっていい。
そういうのは、神と妖精、聖域のお陰、というしかない。理由なんて、調べるだけ、無駄だ。
「君には、もうしばらく、サリーの護衛についてほしい」
「断る!!」
やっぱり、そうなったよ!! 男爵家の邸宅に戻ったらお役御免のはずなのに、部屋やら食事やら与えられて引き留めるから、こうなるとわかっていた。
俺が拒否するのなんて、男爵マイツナイトだってわかっている。ほら、常々、逃げたがっているし、態度にも、言動にも出してるから。だから、怒ったりしない。
「じゃあ、サリーの婚約者として、しばらく、社交に出てもらおうか」
「なんで!?」
「十年に一度の舞踏会で、筆頭魔法使いハガルの前で、婚約者と認められたんだ」
「っ!?」
そうだったーーーーー!!! 悔しくて、声も出せない。
「あ、あれは仕方がないだろう!! 俺は、発言の許可貰ってなかったんだから。一方的に言われたけど、俺は肯定してない」
「だったら、護衛につけばいい。そうすれば、婚約者ではなかったんだ、と周囲は納得するだろう」
「いやいや、それ以前に、俺がいなくなれば、立ち消えするよ!!」
「サリーと君宛の茶会の招待状がいっぱいきてるんだ。あれほど派手なことをやったんだから、皆、興味津々だし、筆頭魔法使いと繋がりを持つ君とは仲良くなりたいんだ」
「………」
「まずは、私の友人からだな。皆、いい奴だから、心配ない。君が貧民なんて、気にしない、いい奴らばかりだ。何せ、私が落ちぶれた後も、友人でいてくれたからな」
そうやって、どんどんと外堀を埋めていく男爵マイツナイト。お前、可愛い娘の婿には厳しい審査をするんじゃないのかよ!?
「わかった、護衛で」
「わかっていると思うが、手を出すなよ」
「出さないよ!!」
俺は強く否定しておく。あんな胸もない、小さいガキ、女以前だ。
と仕方なく護衛を受けたが、そこからは、きちんと話をしないといけない。
「それで、誰が誰に狙われてるんだ?」
そこだ。ただの男爵令嬢のサリーを誘拐するって、ただ事じゃない。
「狙いは私だ。サリーが一番、誘拐しやすいから、狙われているにすぎない」
「あれか、情報を操るという力目当てか」
「そうだ」
男爵マイツナイトの後ろ暗い力目当てであった。侯爵家と繋がりをとりたいからといって、サリーは誘拐しないよな。普通に社交していれば、普通の繋がりは持てる。
「それにしても、急だな。ここ一年で誘拐が頻発してるなんて」
マイツナイトが男爵となったのは、随分と昔からである。それなのに、マイツナイトはアッシャーの父親からその力を受け継いだのだ。それから随分と時が過ぎている。今更な話だ。
「義父は、もともとは、中央都市の貧民街の支配者であった。そこで、運命の出会いとやらがあったらしく、貧民ではかっこつかないから、と貴族となったんだ」
「よくある話だな。もしかして、情報を操る力ってのは、中央都市の貧民街の支配者が受け継いでたものなのか?」
「いや、義父が一代で作り上げたものだ。だが、誰だって、あれほどのものは欲しがる。実際、義父の居場所を見つけた奴らは、脅したりしてきたがな。それも、義父の力で、消えてなくなった」
「それで、誰が狙ってるか、わかったのか?」
情報を操る力を持つマイツナイトが、狙ってくる奴ら、わからないはずがないんだ。
襲撃を受けて、俺が情報を持っていそうな奴らを全て殺しても、ちょっと怒っただけで、後追いもさせなかったのは、マイツナイトが全て知っているからだ。
「先代の中央の貧民街の支配者とは、仲良くやっていたんだが、今代とは、全くだ。元は先々代が持っていた力だから寄越せ、と言ってきた」
「あげりゃいいじゃん。もしかして、惜しくて、持ってる?」
「能力がなー」
そうではなかった。男爵マイツナイトとしては、この後ろ暗い力を新しい中央都市の貧民の支配者に渡しても良かったのだ。
「先代とも、一度、それを引き継ぐ話があったんだ。ところが、引き継ぐ段階で、能力不足が発覚した。あんなに頭がいい男でも、引き継げなかったんだ」
「どういうこと?」
「だから、頭が足りなかったんだ。義父はな、文章では残さなかった。全て、口伝だ」
「………は?」
「情報網は私の頭の中だ。それも、年々、変わっていく。それを書面に残さず、私の頭の中におさめている。こう言ってはなんだが、今代の支配者は、頭が悪い」
「だったら、紙に落として」
「情報の流出は、情報網を崩壊させる。情報網として使われたいる者たちは私を通して繋がっているにすぎない。どこの誰が情報網として使われているかなんて、情報網にされた者たちは知らないし、調べようとしないし、考えない。そうして、私は情報を操っている」
「もう、捨てればいいだろう、そんな情報。いいか、人を選ぶような力、持っていても無駄だ」
「サリーは出来る」
「なっ!?」
「だから、サリーが男爵家を継ぐんだ」
俺が思っているよりも、サリーの立場は重かった。
跡継ぎがいないままであれば、男爵マイツナイトが死んだ後は、その情報網は死ぬ。だが、マイツナイトはお嬢さんサリーに情報網を与えたのだ。
酷い親だ、と言いたい。だが、マイツナイト自身も、サリーが引き継げるなんて、思ってもいなかったのだろう。
「どうか、サリーを守ってほしい」
だから、俺みたいな貧民にも、男爵マイツナイトは頭を下げた。なりふり構っていられないのだ。




