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少し大人なクラスメイトに溶かされる  作者: ノノンカ
本編
5/32

いつもと違う夜

 「白世さん。期末試験どうだった?」

「いつも通り、そこまで酷くはなかったです。」

「そっか。私は前回よりちょっと下がっちゃった。」

「それでも私より上なんですね。というか一位でしたね。」


すごいな、この人は。ポッキーゲームをしてきた人物とは思えないくらい優秀だ。

キスしようとしてきたけど。


「どうしたの。もしかして普段勉強してなさそうなのに、なんて思ってる?」

「そんなことは考えませんが。点を取るコツでもあるのかなと。」

「ん〜。そうだねぇ。頭のいい人たちの集団に入っていれば自然とわかるようになるというか。周りの環境が大事だと思うよ。」

「私には無理そうですね。」

「あー。拗ねないで〜。」

「拗ねてないです。あとそろそろご飯を作りますけれど。今日も食べていきますか?」

「はーい。お願いします。」


いつも通りの定型文の投げ合いだったので、その後の言葉は耳を素通りしてしまった。


「あのさ、今日お泊まり会してもいい?冬休みだし、いいかなって。」


お泊まり会。友人の家に宿泊する行事のこと。

どういうこと?なぜ私と?

ここで頑なに拒否すると、面倒事になるかもしれないので慎重に言葉を選ばねば。


「やっぱ、ダメかな。」


これは頷かないとまずい。そう思って返事をする。


「いいですけど。ご存じの通りなにもありませんよ。」

「いいのいいの。どうせおしゃべりしてたらすぐ朝になるだろうし。じゃあ、私一回お泊まり道具を取りに帰るから、すぐ戻ってくるね。」


お泊り会か。多くの人にとっては楽しい行事なんだろうな。



 「白世さん、お風呂ありがとう。」

「はい。それでは、私も入ってくるので好きにくつろいでいてください。」


七瀬さんに先に入ってもらい、続いて私も入浴する。

今日は心なしか暖かい気がする。すぐそばに人がいることの大切さを知った気がした。こんなことで泣いてしまっては困るので、胸の奥底に仕舞い込む‥‥‥。



 「さてさて、お待ちかねのベッドタイムー。やっぱりお泊まり会の醍醐味と言えばこれだよね。」

「そうなんですか。初めてなので知りませんでした。」

「そっかー。じゃあ私が教えてあげる。」

「よく分かりませんがお願いします。」

「あのさ、寝る時ぐらいその丁寧語?やめない?」

「無理です。」


どうしてそんなに口調を変えさせることに固執するんだろう。


「むぅ。」

「それでは、私はこちらのソファーで寝ますので、七瀬さんはベッドで寝てください。」

「え?ソファーに寝るの?」

「はい。まだ高校生なので必要とは思ってなくて。お布団を買っておけばよかったですね。」

「うん。違う。こういう時って、一緒に夜を明かすものだよ。」

「そんな文化があるんですか。でも、私のベッドは大きいわけではないので一人で寝てください。」

「いや、それだと無理を言った私が申し訳なくなるから、私がソファーで寝るよ。」

「お客さんにそんなことさせられませんよ。」


しばし押し問答をして、結局私のベッドに二人で寝ることになった。


「寝づらかったら言ってくださいね。向こうに行きますので。」

「そうすぐに寝ないだろうし、寝るとしても白世さんを抱いて寝るから平気。」

「ぬいぐるみじゃありませんけど。」

「かわいいからいいの。」


七瀬さんの謎理論。


「それで、寝ないといっても何をするんですか。うちには、カードゲームの類もないですが。」

「こういう時は恋バナって相場が決まってるんだよ。ということで、白世さんの好きな人は誰ですか。」


好きな人なんかいるわけがない。もし好きになったとしても、理性と感情のどちらもが受け付けないのだ。


「いませんね。」

「そんなつまらないこと言わないでさ、ちょっと気になる人とかでもいいんだよ。」

「残念ながら一人もいませんね。過去にも。これからも。」

「その意志の強さはすごいと思うけど。もうちょっと空気読んでー。」

「空気を読むも何も、わざわざ虚偽発言をする必要性を感じないだけです。」

「なんかそういうところ、理系っぽい。リケジョだ。」

「私より成績が上なあなたには言われたくないです。」

「それとこれとは別の話。仕方ないから、私が話すけど。」

「好きな人いるんですか?それなら公言していただけると学校で変な視線にさらされずに済むのですが。」

「あれは気にしなくてもいいって。それで私の気になる人だけど、小っちゃくてかわいい子かな。」

「ふむ。」

「もう少し話を広げる工夫をしてもいいんじゃない?」

「では、具体的には?」

「なんでそう先走っちゃうのさ。じっくりと段階を踏んでいかなきゃ。そもそも、私の場合も理想を言っているだけで実際にそういう男性がいるわけではないから。」

「そうですか。ではこれでおしまいですね。寝ましょうか。」

「ヘイ、ストップ。まだまだ夜はこれからだよ。」


騒がしい人だ。まあ、流石に寝ようというのは冗談だが何か話すようなことがあるわけでもない。何にもないというのは本当だし、できそうなことといえば‥‥‥スマートフォンをいじるくらいか。


「ちょっと白世さん。人がいる前でスマホを触るのは良くないんじゃないかな?」

「こういう場合に何をすればいいのかを検索していただけです。」

「なんかさ、虚しくなるから。やめよ。そういうの。

‥‥あれ?そういえば、私たちまだ連絡先交換してなくない?」

「そうですね。機会がなかったので忘れていましたね。」

「すっかり忘れてたよ。じゃあはい。これで入れられる?」

「大丈夫です。出来ました。これで登録されているのが二人になりました。」

「えっ。まじ?本当に現代人?タイムリープしてきたみたいな?」

「ちゃんとあなたと同じ年に生まれてます。少ないのはわざわざ交換しようとしてくる人が叔母さん以外にいなかったからですね。」

「なんか、つらいな。ごめんよ~。」

「どうして謝るんですか。そんなこと気にしませんよ。」

「そっか。じゃあしんみりとしたお話はこれまで。ホントにやることないし。ここまでとは思ってなかったけど。私はできる女。最終手段をちゃんと残している。」


そう言って出ていった七瀬さんが戻ってきたとき、その手に握られていたのはほかでもないポッキー。アレだ。


「嫌がらせですか?」

「いやーここまでとは思ってなかったから。余興というか、必要にはならないだろうなと思って用意してたんだけど、必要になるとは。これは白世さんのせいだね。」

「確かに何も話しませんでしたけど。」

「というか、ポッキーって普通に食べることもできるんだよ?だれもポッキーゲームをするなんて言ってないけど。」

「それは、七瀬さんが悪いです。状況が状況ですし。」

「ふっ。私、罪な女だね。」

「でも夜食は太りますよ。いくら冬休みに入ったからってはしゃぎすぎではないですか。」

「じゃあ話題を提供しなさい。暇なの。何かお話ししたいの。」

「そう言われても‥‥‥やっぱググりますね。「お泊まり会 やること」っと。」

「結局こうなってしまうのか。」

「えっと、スイーツ作り?時間があるならやります?」

「さっき夜食は太るとか言ってなかった?」

「生地とかを寝かせるのに時間がかかるものを選べばいいのではないですか?」

「でも、この時間から作り始めるものじゃないよね。もう十時だよ。」

「では、ええと。あ、映画鑑賞。これなら今からでもできますし、観終わったら眠くなっているのではないでしょうか。」

「仕方ないか。ポッキーでもつまみながらのんびりしますか。」

「おじさんみたいですね。」

「花の女子高生になんてことを。私傷ついちゃった。」

「事実なので。ええと、確かタブレットが引き出しに‥‥あった。何か見たいものとかあります?」

「特にないけど、恋愛ものはベタだしなー。敢えてホラー?」

「じゃあホラーで一番人気のものにしますね。あ、登録しなくちゃ。」

「今から登録するの?申し訳ない。」

「こうなった原因の一端は私なので気にしないで下さい。」

「かたじけなし。」

「いつお侍さんになったんですか。っと。登録できましたし、観ましょうか。」

「わーい。ホラーだホラーだ。」

「ホラーでワクワクしないで下さい。」

「大丈夫。私怖いの平気だから。」

「私はそこまで平気ではないです。」


 結果としては、怖かった。夢に出てくるね。まあ、夢でも独りぼっちじゃないだけましかもしれない。

七瀬さんは全然平気そうだった。むしろ、ここの音楽が微妙にミスマッチとか言ってたし、本当に怖くなかったらしい。羨ましい。

というわけで、今私は七瀬さんに抱きついている。怖いときに人肌の温もりが近くにあるというのは非常に安心。

それに、七瀬さんに撫でられていると胸があったかくなるというか、嬉しくなる。別に恋愛感情だとか、親みたいだから安心、というわけではないが。だから私が七瀬さんにくっついているのは必然であって、決して私が怖がりなわけではない。

あれ?矛盾してる。


「白世さんかわいい。庇護欲が刺激される。」

「そうですか。小さくて悪かったですね。」

「全然悪くないよ~。はぁ~。髪さらさら。ずっとこうしてたい。」

「あの、そうやって触られてると眠れないのですが。」

「ふふっ。今夜は寝かせないよ。」

「なんですかそれ。」

「一回言ってみたかった言葉。」

「でも寝ないと明日がつらいですよ。」

「大丈夫大丈夫。帰るのが遅くなっても問題ないから。」

「ふぁ。私は眠いので寝ますね。」

「はいはい。おやすみ。」

「おやすみなさい。」



その日は久しぶりに夢を見なかった。


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