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許容範囲。
『近藤さん…。貴方は美咲さんに何と云う事をしたんですか!!』
普段、冷静沈着な神木が激昂した。
「私は、何もしていませんよ…。何故、貴方が怒ってらっしゃるのか…理解出来ないのですが…。」
近藤は、冷静に言葉を並べる。
「先程も貴方にお伝えしたじゃないですか…。美咲は人魚になって戻ってきたと…。」
近藤は此処ではない空間を見つめ、此処にはいない誰かに話し掛ける様に見えた。
イアァイィ。ォエアァイ。オォオォイェ。
美咲は聲にならない奇声を発する。
「ある人が死ぬ間際の美咲をー。」
ー人魚に変える事で助けてくれたのです。
近藤は笑みを浮かべている。
これの…。どこが…。人魚なんだ?
ある人が死ぬ間際を助けたって?
莫迦な事を云うな…。
美咲さんは…この状態にされたからこそ…
死にかけているのではないか?
其処で神木は我に返った。
もしかしたら近藤さんは、この状況を受け入れられずにいるのでは無いのだろうか…。
「その人には感謝しているのですよ。」
近藤は穏やかに微笑んだ。