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下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞

前世の星座は現代でも有効ですか?

作者: 夏月七葉

 夜の空に星が散らばっている。それはとても綺麗だが、僕はもっと沢山の星が煌めくのを知っていた。光の強いこの現代社会では、多くの星々を見るには明る過ぎる。

 今夜は、流星群が見られるそうだ。まだ時間はあるが、既に大勢の人がこの場に集まっている。町内会で行われる、夏休みの小さな天体観測会である。

 少し離れたところでは、子ども達が代わる代わるに望遠鏡を覗き込んでいた。流星群なら肉眼で観測できるが、折角だから他の星々も子ども達に見せたいと近所に住む大学教授の男性が持ち出したものらしい。

 僕はそれを横目で見ながら、手近なベンチに腰を下ろした。山の方へ足を延ばせばもう少し多くの星が見られるだろうかと、空を仰ぎながら頭の片隅で考える。

 しかし、こんな疎らな夜空でも、思い出すのはあの日の記憶だった。

〝僕〟がまだ〝僕〟ではなかった頃。

 何百年も前の、前世の思い出。

 一平民だった僕は、夜中にこっそり家を抜け出して、広い原っぱに寝転んで星を眺めるのが好きだった。時折幼馴染みのような存在だった少女も一緒についてきて、笑い合いながら適当に星を繋げて遊んでいたっけ。

 まだ成人を迎える前に勃発した戦争に巻き込まれて、彼女の行方は判らなくなってしまった。結局死ぬまで再会は果たせなかったのだが、あれからどうしただろう。無事に戦火を逃れて幸せになってくれていたら、それ以上に望むことはなかった。

 現世で考えても仕方ないことだとは解っているが、どうしてもそう思わずにはいられなかった。

 前世より暗い空を見上げて、僕は腕を伸ばす。指先で光の点をなぞって、それ等を繋いでできるのは――

「「花冠座」」

 呟いた声が二重に聞こえて、僕は驚いて横を見た。そこには、いつの間にか隣に座っていた、僕と同じように目を丸くした女性が一人。

(ああ……)

 彼女の顔を僕は知っている。

〝僕〟がまだ〝僕〟でなかった頃――記憶の中の少女の笑顔が目の前のそれと重なって、僕は泣き笑いのような表情を浮かべた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 幼馴染の彼女も同じ世界に生まれ代わっていたんですね。 2人が此れから幸せになると良いなと思う作品を読ませて頂き、ありがとうございました。 m(_ _)m
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