2話
こんにちは、続くと思いませんでした
というか続きかこれ?
短編集だと思ってください
という訳で大河内サヤのダイナミックで繊細な伝統芸能みたいな異世界冒険活劇は終わり、元の世界に帰還したのでした。めでたしめでたし!
と、僕は彼女に関する物語を締めくくったのでした。
えげつなく長い彼女の話を簡潔まとめると、異世界救って最強の武器持って帰ってきた、だ。
大河内さんはたちまち北星高校戦闘力ランキングトップ10に入ったのではないだろうか。
とまぁ、今回の事件もとい件は誰の犠牲も無く終わったのだった。
大河内さんが持っている武器の危険性を考えるとこの先誰かが死ぬかも知れないけど、その時は十二宮先輩を頼ろう。
完全無欠の探偵であるところの十二宮先輩ならきっと助けてくれるだろう。
10年前から十二宮先輩にはお世話になりっぱなしだ、そろそろ恩を返していかないと申しわけなさで満たされて潰されそうだ。
10年前か、懐かしいな。
あの日初めて十二宮先輩に助けてもらったんだっけ。
まぁ僕が直接助けてもらった訳じゃないけれど。
やっぱりとても感謝してる。
彼女を初めて見た時の印象は「黒い」だった。
全身黒ずくめで背の高い綺麗な女性。
背の高いといっても当時のぼくからしたらというだけで今の僕と同じくらいの身長だと思う。
彼女と目が合った時の事は今でも忘れられない。
あんなに悲しそうな人をぼくは見た事がなかったのだ。
涙も涸れて感情も涸れて悲壮感に潰された人間を初めて見た。
否、彼女は死神だった。
彼女を見る事の出来る人間は1週間以内に必ず死ぬ、幸せでも死ぬ、不幸でも死ぬ。
彼女は人間に死を告げる神だった。
本来彼女が罪悪感を覚える必要は全くない。
彼女を見た人間が死ぬのではなく、死が決定された人間が彼女を見えるようになるだけなのだから。
本当に可哀想で美しい神だった。
そんな神をぼくは10年前に見つけた。
彼女がぼくに気付いた時、自分を見ているぼくに気付いた時、表情は変わらなかった。
老人も子供も男も女も多くの死をみた彼女にとってぼくが子供で死ぬのが可哀想なんて感情はわかなかったらしい。
そもそも僕よりも若い子の死を何度も見ているのだから当然の事なのだけど。
とにかく最初の出会いはお互いに特に関わる事もなく別れていった。
だから本当にぼく達が出会ったのは2回目のあの日だったのかもしれない。
初めて彼女を見てから1ヶ月以上経ったある日、ぼくは彼女を再び見たのだった。
あの時の彼女の顔をどう表現すればいいのか、傑作とでもいえばいいのだろうか。
よく分からないけれど感情としては多分喜んでいたのだと思う。
彼女はそんな顔で公園の砂場でお城を作っていたぼくに駆け寄ってきて力強く抱きしめたのだった。
正確には彼女の腕はぼくを貫通して空を切っていたのだけど、もしも2人を認識できる人が見ていたのならきっと抱きしめている様に見えたはずだ。
暫くそのまま泣き崩れている彼女にぼくはひたすらに困惑していた。
見えているけど触れない年上の女性、駆け寄って来る彼女に驚いてぶつかって潰してしまった砂の城、恐怖と不安と訳の分からなさで危うく大声で泣き出す所だった。
それでも泣き出さなかったのは彼女の表情が緩みきって安心しきっていたからだと思う。
10分の困惑の後にぼくは泣き崩れている彼女をほったらかして砂の城の改修工事に取り掛かることにした。
見なかった事にしたのか怖さのあまりに目を逸らしたのかは分からないがとりあえず無視する事にしたのだった。
そんな所に彼女がやって来た。
泣き崩れている彼女とは対象的な印象を与える少女だった。
綺麗というよりは可愛らしいという印象なのにどこか気品があって落ち着いているような年相応なようで年不相応な少女。
十二宮さんのお出ましである。
続くかも
多分
おそらく
もしかしたら
いや
頑張るぞ!