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僕が見た人達  作者: 真咲
4章 心臓争奪編
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13話

こんにちは単位がやばめな真咲です。

読みに来てくれてありがとうございます!

「上石美命……その子の心臓を娘に食べさせればいいんだね?」


「え……あ……」


僕君ちゃんに流れ込んできた情報は能の処理能力を超えて強烈な疲労感で意識を刈り取ろうとしている。


「うっ……う」


「まだ意識が混乱しているようだね、少し横になっていなさい。君のおかげで娘を助けることが出来そうだ。ありがとう」




「うっ」


僕君ちゃんが見上げている天井は決して見慣れたものではなかったけれど全く知らないものでもなかった。


僕君ちゃんが目覚めたのは北星高校の保健室だ。


「あらあらあら、目が覚めたの」


保健室にいるのは僕君ちゃんともう1人、白衣の女性だ。


北星高校の保険医である葉羽井ははい 桃。


物腰柔らかで温もりを感じさせる大人の女性ということで北星高校の男子生徒からは非常に人気の高い先生だ。


「えっ……はい。ここは保健室ですよね。どうして……僕」


「理事長先生が意識のない君を連れてきた時はビックリしたよぉ」


保健室の扉が開いて男が入ってくる。


十二宮十三、北星高校の理事長で十二宮先輩グループの総帥で十二宮先輩の父親。


その男だった。


「すいません葉羽井先生席を外してもらえますか?」


「あらあらあら、内緒のお話ですか?分かりました。君は安静にしててねぇ」


そう言って保健室から出ていくと保健室は瞬く間に気まずい空間へと変化した。


だが、その静かな空間は十二宮十三によってすぐさま破られる。


「これを見てくれるかい?」


十二宮十三が僕君ちゃんに渡したのは文字のびっしりと書かれたA4の用紙1枚だ。


ざっと見ただけで書かれている内容が名前であることがわかる。


正確にはランキングだった。


「君は北星高校戦闘力ランキングというものを知っているかい?」


それは北星高校の生徒ならば当然知っていることだった。


「知っています。それがなにか?」


僕君ちゃんが渡された紙に書かれているランキングは僕君ちゃんの知っているそれとは違う内容だった。


「それは北星高校裏戦闘力ランキングだよ」


それは僕君ちゃんが初めて聞くものだった。


「対人戦を想定していて学生しか順位に入っていない表と違ってそれは単純な戦闘能力によって生徒、教師が順位付けされているものだよ」


ピックアップされた30名の戦士の名前を僕君ちゃんは目で追っていく。


「東堂士……齋藤柔木……」


いくつか僕君ちゃんが知っている名前もランキングに載っている。


「葉羽井桃……葉羽井桃!?」


中でも僕君ちゃんの目に止まったのはついさっきまでこの部屋にいた葉羽井桃の名前だった。


「ん?あぁ。強いよ彼女。なんたってピ」


ドンっ!


突然保健室が轟音とともに揺れた。


ぱらぱらと天井から剥がれた塗料が落ちてくる。


「……それより2位とかも驚くんじゃないかい?」


そう言われて僕君ちゃんが2位を見ると知っている名前があった。


「大河内サヤ!?」


北星高校表戦闘力ランキングでは10位に位置付けられている大河内サヤの名前がそこにはある。


「彼女は人間相手に本気を出さないからね、単純な破壊力で考えればそれくらいが妥当な所だと思うよ」


「……なるほど。やばいな大河内サヤ」


(彼女が協力してくれれば心強いんだけどね)


「何か言いましたか?」


「いやなんでもないよ」


「まぁいいですけど……それでこのランキングをどうして僕に?」


「その中から何名か役に立ちそうなのをピックアップした。君には彼らを連れて上石美命の心臓を手に入れて欲しい」


「僕は……」


僕君ちゃんの脳をよぎるのは十二宮妃の姿だ。


今まで救われてきた恩を返したいという思いが僕君ちゃんに溢れる。


「頼む、娘を救ってくれ」


十二宮十三は深く深く頭を下げる。


その雰囲気から彼の本気度、本音が見えてくる。


十二宮十三は本気に娘を愛していて娘を救おうとしている。


「少し……少し考えさせて下さい」


「わかった。今夜10時にもう一度君の応えを聞こう」


「……はい」


十二宮十三が保健室を出ていき、室内はまるで無人になったかのように静まり返る。


(僕は十二宮先輩を助けたい!生き返らせてもっと話たい!それが本音だ、僕の偽りの無い気持ち。だけど……だけどそのために誰かを犠牲になんて……僕には荷が重い)


僕君ちゃんは考える。


(命の価値は平等じゃない、きっと十二宮先輩が生きている世界と死んでいる世界だと何もかもが変わって居るはずだ。十二宮先輩は歴史のターニングポイントになれる人間なんだ。十二宮先輩に比べたら誰の命だって軽い)


僕君ちゃんは考える。


(十二宮先輩はきっと望んでいない、誰かを犠牲にして生き返らせることなんてあの人が望むはずがない。誰かを犠牲にしたことを知った瞬間に自殺するかもしれない……)


僕君ちゃんは考える。


(そもそも僕が断ったところできっと十二宮十三は僕抜きで上石美命を殺しに行くだろう。だから結局僕が上石美命の殺しに関わるか、見捨てるかの違いでしかない)


僕君ちゃんは考える。


(僕が行っても上石美命は殺される、僕が行かなくても殺される。なら……せめて……見届けるべきなんじゃないか)


僕君ちゃんは結論を噛み締める。


どうしようもない事実を噛み砕けない真実をせめてもの想いで受け止める。


「よっ、なんか倒れたって聞いたから見舞いに来たぜ」


保健室の扉が突然開いて見慣れた人物が入ってくる。


「祐樹……」


「おいおい顔真っ青じゃん、兄ちゃんが大学受験した時よりやべぇ色してるぞ」


保健室に入ってきたのは後藤祐樹、僕君ちゃんの親友であり、悪友だ。


後藤家の次男で兄が1人、妹が1人いる。


全く特別な能力を持たない平凡な普通人だ。

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