表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕が見た人達  作者: 真咲
4章 心臓争奪編
13/37

11話 プロローグ

心臓編開幕

十二宮先輩は僕に人生をくれた。


「君がどうやって産まれたのか、何者なのか、私は直感しているけれどそれは君に伝えるべきではないと思っているよ。人間じゃくても人間らしく生きる事はできるから。私よりもよっぽど人間が上手いと思うよ」


人として生きることを教えてくれた。


「大丈夫、君は確かに人間ではないけど化け物という訳じゃない。君は幸せを目指していいんだよ」


きっと恋愛感情ではない、家族愛とも違う。


敬愛、友愛、言葉で表現できないけれど愛していた。


「君はこれから私の後輩になるのだから私のことは先輩と呼ばない」



僕の干からびた眼球からはもう涙が流れない、腫れた目蓋に歪んだ口角。


僕の顔も身体も全ての力を失ってまるで糸の切れた人形のようで。





十二宮先輩が死んだ。


どうして?


わからない


殺された?


人類最強の先輩が?


ありえない


いや、死に際を見た。


先輩が死ぬ物語を理解した。


南極での戦いを知った。


先輩が死んで物語の幕が閉じたから僕が理解出来るようになった。


手遅れだ、僕には何も出来なかった。


安藤も齋藤も意識不明。


役に立てよ、せめてお前らは先輩をサポートしてくれよ。


どうしてだ、安藤の生者確殺の能力も齋藤の聖武器も通用していなかった。


あいつらでも先輩でも通用しない相手ならあの場に誰が居ても一緒だ、わかってる。


わかってるけど!どうして先輩だけが殺されてあいつらは生きているいるんだよ!


代わりに死ねよ齋藤!安藤!人を殺すことしか能のないお前らよりも先輩が生き残るべきだろ!きっと先輩は今後世界を何回も救うんだ!


そんな人が死んでいい訳がないだろ!


おかしい……おかしい!おかしいだろ!!


ああああああああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぬああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ





「君の力を貸してもらうよ、私の娘の為なら君は何だって棄てられんだろ?」


僕君の前に初老の男が立っている。


僕君はその男を知っている。


彼の通う高校、北星高校の理事長。


十二宮 十三、十二宮先輩の父親であり十二宮グループの現総帥にして北星会の元ボス。


安藤に殺し屋としての技術を叩き込み、齋藤の支援者する謎の人物。


「もう知っているのだろうけれど私の娘が死んでしまってね、君の力を貸して欲しいんだ。娘はが死んでいると私も君も困るだろう?」


「僕が力を貸せば先輩が生き返るんですか?」


「それは分からないけれど可能性は高いと思っているよ。私の直感は娘ほど強力じゃなくてね」


「……可能性はあるんですね。教えてください!どうすれば先輩生き返るんですか!」


「さぁ?もうすぐ知れるんじゃないかい?」


僕君の足下の感覚が無くなっていく、まるで宙をまうような感覚が僕君を襲う。


足だけじゃない、頭から力が抜ける、思考力が欠けていく。


人としての輪郭が溶ける。


「今の君は過去と現在の事なら何だって知れるはずだよ。さぁ教えておくれ、娘はどうすれば助かる?」


「あ……ああ……あ……上石 美命みことは真っ白な髪を持つ少女である」


「真っ白な髪をなびかせて、エメラルドグリーンの瞳を輝かせる女の子」


「7歳になったばかりの少女は毎日のように山で遊んでいる」


「誕生日プレゼントの赤いシュシュを身に付けて日が昇り沈むまで山で動物達と遊んでいる」


「彼女の周りには生き物が集まってくる」


「家族に愛され、隣人に愛され、動物に愛される」


「彼女の人生は愛に満ちたものだ」


「今日も真っ白なワンピースと赤いリボンで着飾った少女は山で幸せな時間を過ごす」


「動物に囲まれた可憐な少女、そこに雪なんて降ってきた日には余りの幻想さに泪を零してしまいそうだ」


「そんな可愛いざかりの女の子」


「暗い感情なんて持ち合わせていな」


「元気いっぱいで善良で、きっと悪人だって改心させてしまうような綺麗な女の子」


「彼女は平凡な女の子ではないけれど平穏な人生を歩む、幸せな人生を歩む」


「そのはずだった」


「彼女は自身の特異性にはまだ気づいていない」


「当然だろう。彼女の特異性に彼女が気が付くはずが無い」


「最低だ、最悪だ」


「知りたくなかった」


「知ってしまった」


「安心した」


「先輩を蘇生できる」


「駄目だそんな事はできない」


「7歳の女の子の心臓を先輩に食べさせるなんて」


「僕にはできない」


「僕?」


「僕僕私私僕私私僕」


「きっと些細な違和感だ、気にすることじゃない」


「やっぱり、もう気にならない」





身体の感覚が僕君ちゃんの脳に戻ってくる。


僕君ちゃんの溶けた輪郭も浮き出てきて1人の人間として認識することが出来る。


見た目は完全に人間であるが、1つ。


明らかに以前と変わったことがある。


情報量が減った。


僕君ちゃんを構成する要素が1つ消滅した。


僕君ちゃんは性別を失った。

ここまで読んでくれたあなたは神様だとおもいます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ