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ケツ毛はサイレンサーだし金玉袋はデリケートだと声を大にして主張したい

作者: 赤おじ

なんということだ。

 ケツ毛バーガー事件という当事者の心中察して余りある痛ましい事件があったが、筆者のケツ毛はハンバーガーを通り越してクォーターパウンダーである。

 日本マクドナルドがクォーターパウンダーを販売中止してそれなりの歳月が経ったので知らない人も居るかもしれない。端的に言えばジャングルである。ガンズ・アンド・ローゼズである。

 ただ、自分のケツ毛はよほどの苦労をしないと見えないので、生えてようが生えていまいがあまり意識してはいなかった。


 ところで、筆者は会社で排便をする。

 これは排便中も会社から賃金が発生するバグを突いた会社へのれっきとした抗議活動である。筆者はこの活動を以って現代のパルチザンを自称している。

 単純にアパートでウンコすると便所掃除の頻度が増えるのを嫌っているためでもある。筆者は時に数ヶ月便所掃除をしないので、トイレの神様は憤激しているだろう。

 

 それはともかく、数年前の筆者は会社で朝イチの排便を済ませデスクへ戻った。


「ウンコ長くね?」


 隣席の先輩社員から小言を頂戴する。


「イヤ、俺のケツはキレが悪くて拭きとるのに時間かかるンすよ、へへへ。トイレット・ペーパーは毎回半分くらい消費しますね」


 当時の筆者のせいで南極のシロクマは苦しんでいるのかもしれない。SDGS的に。


「ウォシュレット使えばよくね?」

「なんかアレ他人のウンコ汁かかる気がしてイヤなんスよ。それに使ってもそこまでトイレット・ペーパーの消費量減るわけでもなくて」


 書いてて思ったが自分の家のトイレが汚いのはどうでもよくて会社のウォシュレットは使いたくない、というのはなんとなく嫌なやつっぽい雰囲気がある。


「あー、お前ケツ毛濃いだろ」

「そうですね」

「ウンコ拭き取れないのはそのせいだよ。ケツ毛にウンコが絡んでんの」

「え」


 盲点であった。


「ちょっとケツ毛剃ってみ。劇的に変わるから」

「帰ったらやってみます」


 肛門まわりにカミソリを当てるのはなかなか抵抗があり、とりあえずハサミでカットしてみた。



 

「おおっ」


 翌日、例のごとく会社でウンコして尻を拭く。一発で、とはいかなかったが三発ほどで拭きとり完了。

 筆者の脳内でモンスターハンターで砥石を使った後の「キーン」というSEが再生された。


「今日はウンコ早いな」

 と、隣席の先輩。

「いやあ、本当にケツ毛が犯人だったんスね」

「あんなもん百害あって一利なしよ。俺は除毛クリームでツルツルにしてる」


 除毛クリーム、そういうのもあるのか。


「おおー、今度やってみます」

「ドラックストアなんかでも売ってるよ」


 筆者はその日の帰り道、薬王堂に寄った。



 「スゲーッ」


 筆者は感激した。除毛クリームでツルツルになった肛門は、年一レベルで発生するレアイベント【ケツが一発で綺麗に拭き取れる】を連発させた。

 昔クレヨンしんちゃんかなんかに出てくる大工のジジイが言っていたが、ケツが一発で拭き取れるとその日一日いい気分で過ごせる。これは生活の質(QOL)を大向上させる。

 さらに筆者はケツの拭き過ぎが原因と思われる軽微な痔を抱えていたが、ものの見事に完治した。


 だが、いい事ばかりではなかった。


 【プゥ】


 会社で一番エロいスケ(筆者調べ)たるNさん(38)とおしゃべりしていた時、悪魔が産声を上げた。

 筆者はすかしっぺをしようとしたのである。筆者はすかしっぺに自信があった。音を立てぬように意識すれば、今までは100%の確率ですかしっぺにすることができていた。

 しかし、それはなんと今は亡きケツ毛のおかげだったのだ!!

 ケツ毛により生じる微細な隙間構造が放屁によるインパクトを分散し密やかなる秘め事へと変えていたのだ。 

 しかしケツ毛は死んだ。もういない。筆者に秘められた闇の力が暴走し、悪魔は産声を上げてしまった。会社で一番エロいスケ(筆者調べ)たるNさん(38)の前で。なんということだ……


 会社で一番エロいスケ(筆者調べ)たるNさん(38)は「オヤ?」という顔をした。その刹那、筆者の思考は加速し眼球はぐるりと周囲を見渡し素早く状況を掌握。

 筆者は、自身の真横でダクソに出てくる亡者みたいな顔でキーボードを叩いている先輩を「何やってんだこいつ……」という目でしばし見る。先輩がその視線に気づく前に視線を切り、会社で一番エロいスケ(筆者調べ)たるNさん(38)へ視線をやり、肩をすくめて「ヤレヤレっすね!」といった雰囲気を醸す。

 先輩は放屁音に気づいていない。これは完全犯罪であった。会社で一番エロいスケ(筆者調べ)たるNさん(38)も笑っていたので真実には気づいていないだろう。多分。


 筆者はそれから自身の闇の力(おなら)をコントロールする修行を始めることになる。



 自身の闇の力(おなら)を掌握し、制御下に置いて数ヶ月。

 除毛クリームが無くなった。


 もはや除毛クリームは生活必需品と言ってよい。再び薬王堂へ行くが、前回買った除毛クリームはなかった。

 やたらと高級なAという除毛クリームと、その半額以下のB。給料日前の金欠状態では当然のようにBを選ぶ。

 だが覚えておいてほしい。安い除毛クリームというのはたいてい、デリケート・ゾーンに対応していない。デリケート・ゾーンとはXXXとかXXXとかXXXXとか、とにかくそういうところだ。そしてその危険物質を筆者はまさにピンポイントで塗りたくった。

 

 しかし筆者の肛門は強い。強かったのだ。耐えた。耐えぬいた。だが、金玉袋はそうではなかった。

 

 ケツに除毛クリームを塗る作業をしていると、どうしても金玉袋がブラブラとする。自由運動する。するとクリームが付着する。まさにTHE デリケート・ゾーンの金玉袋に。

 そのクリームがデリケート・ゾーンに対応していないとどうなるか。除毛直後はなんともない。数時間後ベットでスヤスヤと寝ている筆者にそれは訪れる。激痛。


「ぐわぁぁぁぁーーーッ!!」


 二足歩行で斧持ったワニのような悲鳴が上がる。たまたま、たまたまが痛い。痛いというか熱い。

 跳ね起きてズボンとパンツを下ろす。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーッ!!」


 金玉袋はリンゴのようなサイズへ変貌を遂げていた。皮がツルンと剥け、色味までリンゴのようだった。

 金玉袋はデリケートだ。デリケート・ゾーンとはまさにDelicateなZoneなのだ。それを思い知った。痛すぎて普通に泣いた。会社は休んだ。


ブラジリアンワックスってどうなんだろうなアレ。だれかケツ毛で試してレビューしてくれ。今すぐだ。

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