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38. やっと同じになれましたわね


 やがてアドリエンヌの寝室にアレックスが訪れたが、アレックスはアドリエンヌの方をまともに見られないようで視線は常に下を向いていた。


「アレックス様? 何故下を向いているのですか?」

「アドリエンヌがそのような夜着を身につけているからですよ。私には眩しくてそちらを見ることが出来ません」

「まあ、それでは私たちはいつまで経っても初夜を迎えることができませんわ」


 そう言ってアドリエンヌは寝台のそばで立ち尽くすアレックスの手を引いて抱き寄せた。

 アレックスは恐る恐るアドリエンヌの夜着の上からその身体を抱きしめたのであった。


「アレックス様、心臓がドキドキしていますわよ」

「当たり前です。初めてなんですから」

「まあ、初めてなんですの?」


 あんまり驚いたようにアドリエンヌが尋ねるものだからアレックスは耳まで真っ赤に染めてそっぽを向いた。


「いけませんか? 誰かを愛したのも貴女が初めてなんです」

「いけなくなんかないですわ。嬉しいです」


 そう言ってアドリエンヌは上を向いて口づけをねだった。

 アレックスはやっとアドリエンヌの方へと視線を向けて甘い口づけを何度も落とす。

 そしてそうっと二人は寝台へと移動し、アドリエンヌはアレックスを押し倒し、馬乗りになったのであった。


 アドリエンヌの銀の髪はサラサラと揺れて夜着の上に落ち、薄い生地から見える裸身を隠している。

 その光景は淫らというよりも崇高な美しさであったから、アレックスは暫しその姿に見惚れたのであった。


「ハア……。もう噛んでもいいですか? 我慢できませんわ」

「どうぞ……」


 もう一度だけ濃厚な口づけを交わした後に、アドリエンヌは高揚したままでアレックスの首筋にいつもより深く牙を埋め込んだ。


――ヅプッ……ヅプリ……!


「アドリエンヌ、愛してる。……ッ、僕は貴女と生きたい……っ」


 そう苦し気に囁いたアレックスの瞳は血のように紅く変化した。


「やっと……。やっと貴方は私と同じ吸血鬼になれましたわね。本当に強情な方なんだから」

「すみません。別に抵抗しているつもりはないんですけどね。でも、身体に力が漲ってくるのを感じます。僕はもう貴女の本当の番いで吸血鬼なのですね」

「そうですわ。吸血鬼は人間よりも体力は十分ですし、回復力も並大抵ではないのですよ」


 アドリエンヌの言う言葉はどこか他の意味を含むような気がしてアレックスはフッと笑った。

 そしてアドリエンヌの僅かに血のついた唇をひと舐めした後にそのまま深い口づけを行い、ゴロンとアドリエンヌを組み伏せた。


「アドリエンヌ、愛しています」


 そう言ってアレックスはアドリエンヌの白い首筋に初めて牙を埋め込んだ。


――ツプリ……


「あっ……、アレックスさ、ま……」

「噛まれる方はどうですか?」

「不思議な……感覚ですわね……」


 そう言ってお互い恍惚とした表情で熱い吐息を混じり合わせて何度も血とその身体を貪りあった。










 


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