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22. ヘルメスが眷属になったのは


「アドリエンヌはなかなか頑張っているようだな」


 王都にあるシャトレ商会の会長室に、アドリエンヌの眷属である梟のヘルメスが報告の手紙を運んできた。

 それを読んだ侯爵はフッと笑いを零して独りごちた。


『お父様、やはりフルノー伯爵領の森林はホワイトオークでしたわ。

 林業に就きたい人材も思いの外多く集まるそうです。冬には伐採できるように今から下準備に入ります。


 それと、伯爵領ではイヌバラが多く見られるのです。ローズヒップの効能を宣伝すれば、美容や健康に敏感な貴族に売れるのではないでしょうか。

 もし販売するのならば、加工から販売まで領内の女性たちの働き手は十分確保できます。林業と家具作り、そしてローズヒップで伯爵領は潤うでしょう。


 アレックス様はまだ私を婚約者にしてくださる気配はありませんが、少しずつ仲を縮められている気がいたしますのよ。


それでは、また報告いたします。   アドリエンヌ』


 ホワイトオークだけでも伯爵領はかなり豊かになる、その上ローズヒップという特産品が出来れば安定した収入を幅広い領民が得られるというアドリエンヌの案はアレックスへの愛ゆえに思いついたことである。


「我が娘ながら、商売になるものを見つける才覚は私以上かも知れんな。出来れば商会を継いでもらいたいと思っていたが、番いであるアレックス殿が許さなければそれも叶うまい。一番大切なことは、アドリエンヌの幸せが私の幸せだということだ」


 侯爵は、娘の才能を高く買っていた。


 しかし、それと同じだけ娘の幸せを願っていたからもし商会を継ぐことがなくともアドリエンヌが幸せならばそれで良いと、少しばかり寂しそうに傍で控えるヘルメスへ餌を与えながら話しかけた。


 侯爵がローズヒップについての返事をしたためた手紙を、再びヘルメスはアドリエンヌのいる伯爵領へと届けるために大空へと飛びたった。


 その姿を会長室の窓から侯爵は眩しそうに見つめていたのだった。



 ヘルメスは生まれてまだ間もない頃に、幼いアドリエンヌの眷属となった梟である。


 幼いアドリエンヌが母親と庭で遊んでいたところに、フラフラと近くに降り立った梟は体中が傷だらけで瀕死の状態であった。

 その瀕死の梟を助けようと、アドリエンヌは咄嗟に吸血行為を行い眷属としたのだ。

 眷属となった梟はみるみるうちに傷が治り元気になった。

 

 それからアドリエンヌは梟に、富と幸運の神で商業の守護神『ヘルメス』と名付けたのだった。


 それからヘルメスは眷属としてアドリエンヌを見守っている。

 梟としての元々備えた能力に合わせて、吸血鬼の眷属となったことで疲れ知らずとなったヘルメスは手紙を迅速に運ぶことができた。


 ヘルメスは自ら言葉を発することはなくとも、アドリエンヌや侯爵の気持ちは察することができた。


 だから、侯爵がアドリエンヌのことで少しばかり寂しい気持ちを持っていることも、アドリエンヌがアレックスのことをとても愛しく想っていることも理解していた。


 しかし梟のヘルメスには時に慰めるように主人とその家族へ寄り添うことと、手紙をいち早く届けることしかできない。


 そうしてヘルメスはどんどんと風を切り伯爵領に向かって青く高い空を進んでいった。




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