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第2話:クラス代表

「ふぅ、なんとか終わったか」


「何とか終わったか、じゃありませんよ」


自己紹介と適正魔術を言い終わり、一息ついたところで呆れた声が聞こえて来た。

その声は幼いころからサンドラの次くらいに聞いている女の声で、俺の友達兼喧嘩相手。

隣町を治めている貴族で、俺たちの家と先祖の頃から絡みがあったらしい。

とまぁ、言わば幼馴染に等しき存在、カレン・フレア。

代々先祖様から騎士としての職を引き継ぎ、皆魔術学校などの機関を卒業しているようだ。

因みに何の因果か隣の席がコイツだ。


「喋り方、仕草、態度。仮にも貴族令嬢としての在り方がなってないのではなくって?」


髪をふぁさーっ、となびかせながら俺に説教する姿は美人の一言に尽きる。

金髪ロングヘアーで、白を基調とした服は天使のようにも思える。

俺の体に聖剣が生えていて男性ホルモンが在れば、絶対に惚れていたであろう美少女だ。


「相変わらずカタいなー、別にいいだろー?同級生なんだし気楽に行こうぜ気楽に」


「はぁ……最早病気ですね、直りそうにありません」


「申し訳ありません、カレン様。お嬢様も、お嬢様なりに肩の力を抜こうと思ってくださっているので、どうか……」


サンドラはぺこぺこと頭を下げるが、何もお前が畏まることはないだろ。

第一、同い年で同じ人間だってのに何をこうも態度を低くする必要があるんだよ。

身分がどうこうと言っても、俺らは結局まだ親に食わせて貰ってるガキだ。

だからガキが偉そうにすることなんてないだろうし、フツーにタメ口でいいだろうに。


「あのなぁ、サンドラ。確かにお前は俺の侍女かもしれないけど、その前に同級生だろ。

いちいち様付けなんかしなくていいし、俺の事だって学校じゃ気軽にクロエって呼んでくれよ」


「ですが、それは私自身納得がいかなくて……」


いつもいつも、お嬢様お嬢様って畏まってるが故にサンドラに嫌われてるんじゃないかって思う。

でも、なんだかんだで世話は焼いてくれるし愛想は尽かされてないはずだと信じたい。


「……はぁ、サンドラもいつも変わらないようで安心しました。

クロエに流されず、常に自分の心がけていることを実践するのは良い事ですよ」


「お褒めに預かり、光栄です」


カレンに頭を撫でられ、サンドラはニコニコと笑う。

なんだか心がムカムカしたが、それは俺だけ咎められてサンドラが褒められたからと言うことにしておこう。


「で、次って何すんだっけ」


二人だけの空間みたいになっていたのをぶった切り、俺は話題を変える。

すると、カレンとサンドラは二歩ほど離れて、顎に手を当てる。


「確か、次は――」


「制服の配布、魔術学校では『生徒の心を統一』と、大昔から同じ服を配布するそうですよ。

私のお父様やお婆様もソレを着て、この学校で様々な事を学んだと聞いています」


サンドラが答えるよりも先に、カレンが家族のことまでまとめて話してくれた。

制服……制服ねぇ、まさか異世界の学校に来て制服が着られるとは思っていなかった。

で、早速その制服が配られ始めてて……男子はアレキサンダーが男子更衣室へと連れて行った。

女子たちは取り敢えず教室内でぱっぱと着替えろ、だそうで。


「個室で着替えではないだなんて……」


「使用人を連れてくることも許さないなんて……」


何やら我儘なお嬢様たちの嘆きがブツブツと聞こえるが、服くらい自分で着ろ。

まぁ、物心ついた時から誰かに着せられるのが当たり前として成長してきたなら仕方ないのか。

だがそんな事情は知らん、カレンは自分で着替えるのが当たり前って思考みたいで、むしろ周りの反応に怪訝な顔をしている。

サンドラも当然同じで、着せて貰うのが当たり前なのを理解していても『何も口に出して怒ることはないでしょう』って顔だ。


「おー、割とカッコいいなコレ」


動きやすさを考慮してかスカートの下にはインナーがあってパンツが見えることはないし、短いので引っかかりにくい。

上着の方は長袖だが、その下に半袖のシャツを着ているために上着を脱いだとしてもブラが見えたりもしない。

おかげで暑い時は上着の方をサッと脱げるし、かといって邪魔なモノってわけでもないし合理的な制服だ。

ポケットもあちこちにあって非常に便利、俺としてはずっとこれを着ていたい。


「まぁ、華やかさのない服ですわ」


「えぇ、平民と同じ服だと思うと嫌になりますわね」


名指しではないが、サンドラを馬鹿にするような声が二つほど聞こえて来た。

声の方にチラリと視線をやると、偉そうにしてる赤髪の女と茶髪の女がいた。

生理的に受け付けないタイプだし、出来れば関わりたくないが……サンドラを馬鹿にされちゃこっちも困るな。


「あー、カッコいい制服だけど馬鹿なお嬢様と同じ制服って思うとちょっとヤになるなぁ」


「ちょっとクロエ、急に何を言い出すのですか」


「別にいいだろー?どこぞの誰かさんだってこの制服の批評してたんだし、俺だって言う権利くらいはあるだろ」


俺はそう言ってから偉そうにしてる二人の方に顔を向け、ヘッと笑う。

別にお前らのこと名指ししてねーし、カチンと来てなんかしてくんならこっちのものだ。

……と思ったが、流石にすぐ手を出すほどの馬鹿ではないようでフンッと首を向けて黙った。

ま、いいか。


「……全員着替え終わったか?」


「あ、はーい。無事着替え終わってますよー」


バカ二人の方に夢中になっていたら、扉をコンコンと叩く音と一緒にアレキサンダーの声がした。

わざわざ女子たちの着替え終わる時間を待っていてくれたのだから良い先生だな。

……因みに、脱いだ服は制服が配られた時の皮袋に畳んで入れてある。


「さて、これで男女が制服に身を包んで揃ったわけだ。

ここでまず、このクラス内で決めることがいくつかあることを説明しておこう」


アレキサンダーは教卓に手をついてそう言うと、チョークを取って黒板にカッカッカッと何やら書き始めた。

えーと、ちゃんと読み書きは母ちゃんの方から習ってるので二か国語くらいは話せるし読めるし書けるぞ、俺。

何々……『クラス代表者決め』ね。


「まぁ書いて字の通りだ、このクラスで代表となるものを選ぶ。推薦でも立候補でも構わん」


「その前に質問を宜しいでしょうか、アレキサンダー先生」


「カレン・フレアか。なんだ」


カレンが手を挙げて立候補するのかと思えば、質問。

クラス代表をやるといくら貰えるとか、そんな質問だろうか。違うか。


「クラス代表とは、具体的にどのようなことをするのでしょうか」


「あぁそうか、その説明を先にするべきであったな。わざわざ挙手してくれた事に感謝する。

コホン、クラス代表とは言葉通りこのクラスの代表となり、他者を引っ張ると言うことだ。

時に学校で開かれる行事で表に立ち、時にクラス間で行われる物事の立会人等になる……等だな。

特別な役割と言うわけではないが、大事であることは変わらぬ故に責任を持って取り組まなければならない」


「なるほど……ありがとうございます、アレキサンダー先生。

ではその役目、我が友であるクロエ・テイラー・テンペストを推薦させていただきます」


「はぁ!?」


カレンが立候補するかと思ったら、なんと俺の手を掴んで挙げさせてきた。

カレンの方を見ると、含んだような笑いが微かに見れた……コイツ、何考えてんだ?

でも、クラス代表って委員長みたいなもんだよな……なら引き受けても……いい、のか。


「あらクロエ、普段から私と競い合っているのなら出来ないことはないでしょう?

勿論私ならば完璧にこなしますが、私にできるような事ならクロエに出来ないことはないでしょう?」


「ぐぬぬ、あぁいいよ、わかったよ。受けてやるよ、クラス代表!」


「流石お嬢様です、単純ですね」


「サンドラ、お前……」


いくらサンドラでもチョロいとか単細胞みたいなニュアンスな事言われたらヤだ。

ので、後で俺がこの世界で見つけた趣味に付き合って貰おう。


「ふむ、ではクラス代表はクロエ・テイラー・テンペストに決ま――」


「お待ちください!」


「む?ヴィオレッタ・ムーアか」


クラス代表が俺に決まりそうだったってのに、立ち上がって声をあげた奴がいた。

それはさっき制服やら着替え環境に文句を言っていた赤毛女だ。

随分偉そうで、顔を見ただけでも心の中で『コイツと友達になれる気がしない』って思ってた奴だ。


「中級貴族程度が代表になるのは認められませんわ、そう!この上級貴族である私!ヴィオレッタ・ムーアが!」


「ふむ、そうか。では誰かを推薦するのか?それとも貴様自身が立候補するのか?」


「勿論、この私が立候補致しますわ!そこなる中級貴族よりも遥かに優れている、と言うことも証明できますもの!」


ヴィオレッタとやらはドヤ顔でそんなことを言っているが、身分に拘りすぎだろ。

別に俺やお前がその貴族の座を維持してるってわけでもないし、金だって親が稼いだもんだろ。

それに、中級貴族って言われたってそんなに格好のつかない身分ってわけでもないだろ。

有象無象で平民以上に貧乏になりかけている下級貴族とかと違って、俺たち中級貴族は不自由ない生活が出来ている。

まぁ、上級貴族はアホみたいにリッチだし、王族とかとなるとリッチ通り越した別次元なんだけど。

特に王族の社交界で出た飯は舌がどっか飛んで行きそうなくらい美味かったなぁ……

って、なんか脱線してきてる……ともかく、中級貴族は恥じるような位じゃないってことだ。見栄くらいは張れる。

だからこの偉そうな女の目に物見せてギャフンと言わせてやる。


「おい」


「何か?」


俺は立ち上がってからヴィオレッタの方に歩み寄って睨みつける。

この体は割と目が細いので、目つきを悪くすることだって出来るので割と便利だ。

と言っても、あんまり凄味はないだろうけど。


「お前さ、さっきから貴族貴族とか言ってるけどさ。このガッコは身分とか関係ねえだろ。

ただ生徒が等しく学び、等しく育ち、明るい未来への一歩を踏み出すための学習機関なんだよ。

だからさ、上級貴族だの中級貴族だの言われてもクラス代表を譲る理由にはならねえんだよ」


「ハンッ、笑わせてくれますわね。私は平民や下級貴族たちに『貴族への接し方』をお教えするだけですわ。

貴方のような無礼者にも、私のような優れた上級貴族が手本を示してあげなければわからないようですし――

ここは一つ、私がいかに優れているかをその身に刻み込んであげましょう!」


「なんだよ、ハナッからそう言う気か?なら言えよ。楽しませてやるからよ」


どうやらヴィオレッタは生意気な俺を叩きのめしたいみたいだな。

だったらこっちにだって考えがあるし、インド人もビックリな勢いでボコボコにしてやる。

と、俺たちが睨み合っているとアレキサンダーがいつの間にか間へと割り込んでいた。


「まぁ待て二人とも、そこまで言うのならば私が厳正に審査してやろう。

どちらがクラス代表へと相応しいのかをな」


アレキサンダーがそう言って指をパチンと鳴らすと、教室の空いた窓からカラスが飛び込んできた。

カラスはスイーッと綺麗なフォームで飛行してアレキサンダーの肩へと止まった。


「闘技場の使用許可を取ってこい」


『了解!』


カラスは機械的な音声で声を出したと思うと、アレキサンダーの命令に従って何処かへと行った。

使い魔……というか、獣を手なずけた……のかはよくわからないけど、ちょっとカッコイイなアレ。

俺も蝙蝠とかカラスにあんなことやってみたい。


「今私のカラスがお前たちのために羽を羽ばたかせているためしばし待て。

その間に寮の見取り図とお前たちを割り振っておいた票を配る、しっかりと見ておけ」


「はーい」


アレキサンダーが薄く切った木の板を俺たち一人一人にと配り始めた。

木の板にはわかりやすく寮の部屋や設備などが書かれていて、部屋の番号も振られている。

加えてどの番号の部屋にどの生徒がいるか、なども書かれている。


「俺は……お前らとかよ」


三人一組で一部屋辺りもそれなりに大きい部屋なのだが、俺はカレンとサンドラと一緒だった。

やりやすいっちゃやりやすいが、なんだか新鮮味がない気がするなぁ……

って言って、全然知らない奴と同じ部屋になったらサンドラが心配になるんだろうな、俺。


『使用許可ガ取レマシタ!』


「うむ、ご苦労」


部屋割りを見ていたら、アレキサンダーの飛ばしたカラスが戻って来た。

アレキサンダーはカラスにご褒美なのか、何やらエサのようなものをあげてからカラスを何処かへと飛ばした。

さてと……闘技場って所の使用許可が取ってこれたっつーことは、だ。


「ステゴロか」


俺は口を思いっきり釣り上げて笑った。

隔週投稿になる可能性があります。下手をすると月1かもしれません。

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