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ミステリーリレー小説2021『カガミの呪い』  作者: ミステリーリレー小説2021「ホラー×ミステリー」参加者一同
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第4話 貴女に似た人 (乾レナ)

「お待たせ致しました」

 オーダーを受け、ペペロンチーノとカプチーノ、ホワイトチョコチャンククッキーとホットココアを運んできた霧音を。店内のBGMにリズムを取っていたカップルの女性は、不思議そうな目で見上げた。

「あれ? 貴女……」

「どうかなされましたか」

 首を傾げる霧音。

 彼の切れ長な瞳と長い睫毛に釘付けになった女性が、ハッと息を呑んだ。

環稀(たまき)、どうした」

 カプチーノを啜りながら彼氏のほうが問う。

「私、見たことあるわ。貴女に似た人」

 倒置法まで用いて。ミステリーのタイトルみたいだと霧音は内心で思った。

「デジャビュかしら。きっと歳も同じくらい。まるで双子みたいだわ。違っている点は貴女のほうが背が高くて、若干だけど男顔ね」

 霧音を女だと思っているのだろう、女性――環稀は続けた。

「三週間前のことよ――」

 環稀はココアが冷めるのも構わず、テーブルに両肘を付けて頬杖をつくと。ソファーに身を沈めながら、記憶を回想するかのようにゆっくりと瞼を閉じる。



 霧音の勤め先『ストレンジテール』とは三駅離れたM街。都心にも関わらず新宿の華やかさとは打って変わった地。区外に位置する穴場のカフェで、同じように店を切り盛りする若い女性がいた。楚々とした身のこなし、ミステリアスな雰囲気を纏う彼女に、環稀は徐々に興味を惹かれていったらしい。

 ある夜。通りすがりの環稀は、店仕舞いをした例の彼女が夜道を歩きだすのを見かけた。街路樹を通り越し、人気のない脇道に入っていったと云う。住宅街や最寄り駅とは逆方向。環稀の好奇心が疼いた。

「ほんの出来心だった。跡をつけたのは」

 環稀の尾行に気づいているのかいないのか、貧寒の地をさらに奥へと進む彼女が立ち止まった場所は。〝ダンジョンの洞窟〟と秘かに噂される墓所――カタコンベだった。M街の住人が誰も近づかないのは、幾つかの都市伝説があるからだ。

◆入ったら最後、出てこられない。

◆洞窟の中には、白骨化した哺乳類の頭蓋骨――髑髏が埋まっている。

◆その昔、豪邸で一家連続殺人事件があった。その地下に当たるのが此所の洞窟。

 中でも、最も霧音の琴線に触れたのは。

「洞窟からの奇跡的な生還者は、入っていく時と出てきた時で人格や容姿が変わっている」

 そこで一旦、言葉を切った環稀は面白そうに冷笑すると、ふたたび顔を強張らせた。

「件の彼女、入っていったわ。その中に」

 店内を流れる音楽はいつしか消えていて、ふたたび静寂に包まれていた。

 環稀のマグカップから猶予っていた湯気も。

 彼氏はパルメザンチーズを振りかけたペペロンチーノを、フォークに巻き付けながら鷹の爪を弄んでいる。

 霧音の脳裏に、鷹野橋から見せつけられた画像が甦った。考古学者の友人が体験したという『現代版カタコンベ』に、想像が膨らむM街の洞窟が重なっていく。

 じっと環稀の語りを聞いていた霧音は、意を決して訊ねた。

「卒爾ながら。件の女性が働いていたカフェの店名を教えていただけますか」

「〝レイニーサウンド〟」

 (レイニー)(サウンド)……?


 ガシャーン


 静まり返った店内に突如、響く破壊音。カウンターで白磁を磨いていた創一郎が、ティーカップを落としたのだった。

「これは失礼しました」

 すぐさま謝罪して平静を装う伯父だったが、彼の表情には明らかな焦りの色が塗られている。 

 まさか……!

 霧音は半身が引き裂かれるような衝撃を受けた。

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