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モノクロサーカス団  作者: シエラ・レイ
13/15

代償と共に 時よ 戻れ

現在、モノクロサーカス団のリビングルームでは沈黙が続いていた。

ヴァレッサはミミラと会話し他団員は座って退屈そうに黙っている。団長とフィレーナ、ルークはずっと立ったまま。

双子は団長の命令にて部屋の様子を見に行き、ヴィンは大統領邸に侵入した後、オーバーメモリーのため昏睡状態。


「団長、お待たせしました。申し訳ありません…、電話が長引いてしまって。」


大統領は、身に覚えのない家宅捜査願書について団長から聞いた瞬間すぐに警視総監に電話をしていた。


「いいえ、大統領。それほど待ってはいませんよ?私達はこの警視官と話しておりましたから、お気になさらず…。」


ヴァレッサはエリック大統領に優しく言葉をかけた。


「あぁあ!ごめんなさいっ!!!お待たせしてっ!!部屋っ!!やっと綺麗にしたの!!!!大統領どうぞっ!」


タイミングよく双子がリビングに舞い戻り、姉のミルフィーは慌てて大統領の腕を掴み案内しようとする。


「お、お姉ちゃん…!そんなに慌てなくても大統領逃げないからっ…!」

「せっかくお国のお偉いさんが来たのっ!!待たせるわけにはいかないでしょっ!!団長の機嫌悪くしたら嫌だし大統領の機嫌も悪くなったら嫌っ!!エルフィーはお茶を用意してよっ!!」

「…お偉いさんに対して腕掴んで引っ張って言うかな?」

「……何?弟。私の言葉聞こえなかった??早くお茶用意してよっ!!!」

「わ、わかったよ…。」


弟エルフィーは渋々キッチンに向かいお茶を用意しようとした。

その様子を見たフィレーナは、少し笑ってエルフィーの手伝いをし一緒にお客用のお菓子とお茶を用意する。


「大統領早く〜!!ずっと立ってて、変な話も聞いて嫌な気分でしょっ!?座ったら落ち着くから〜!!」

「だ、大丈夫だからっ!!あ、ありがとう…ミルフィーさん?……ちょっと子供にしては力強く無いかな??」

「あぁ!!痛かったですか!?…ご、ごめんなさい。私、部屋案内するからついてきてね!」


大統領はまず団長に対して“失礼致します。”と声をかけてからミルフィーの後を追う。

SPのハルトンも団長に声をかけてから二人の後を追った。


「子供という存在はインパクトがあって場を明るくするな…。さすがは我らの双子だと思わないか?団長?」

「何よ今更…。私にその話振らないで。それでどうするの?この女。助けるって言ってどうやってこの状況を抜け出せるのよ…?」


ミルフィーの子供の声の明るさで場の雰囲気は一時的に明るく変わっていたがヴァレッサが発言した瞬間リビングは冷たくなってしまった。

あんなに動き回っていた警察官達もピシッと姿勢を直してしまったくらいだった。


「……ああ、忘れていた。ミルフィーが元気よく手際良く行動していたから、つい無能な警視官と警官お前達と比べてしまった。やはり、仕事ができる子は考えて行動する。優秀だ。」


ヴァレッサは遠慮なく発言し、それを聞いた警官達は俯いてしまった。

彼が笑っているから余計な発言ができないと考えたからだ。


「ヴァレッサ、時間の無駄。無駄口はそれくらいにして行動を開始してくれるかしら?」

「立っているだけのフィレーナが何を言っているんだ。あぁ、君はちゃんとエルフィーの面倒を見てくれているか…。」

「に、兄さん?姉さんはごはんの用意もしてくれてるしさ…?」

「あぁ、そうだったな。ルーク。私が間違っていたな。」


フィレーナはいつもより歯切れが悪いヴァレッサに対して違和感を覚えた。

トレーに乗せて用意したお茶とお菓子をエルフィーは震えながら持っていこうとしている。

その様子を見たフィレーナは小声でエルフィーに声かけた。


「…ど、どうしたの??大丈夫??」

「……。」


エルフィーは黙ってしまった

震えが異常でフィレーナが代わりに持っていこうとしたがエルフィーの手で止められてしまった。

突然エルフィーはキッチンから離れルークのところへ行ってしまった。


「ちょっと!エルフィー!!どうしたの!?」


ルークの所にやってきたエルフィーはルークの手を掴み震えながら見上げてきた。


「……エルフィー。何を感じた?」

「…い、いい…から。早く…。」


ルークはエルフィーが今どういう状況かすぐわかっていた。


《ウジャトの目》


無意識に力が発動し、ヴァレッサの思惑をわかってしまった。

まだまだ中身が子供なエルフィーはヴァレッサのやる事、考え方についていけてない。

ルークはエルフィーの手を取りメモリー・インフォメーション(記憶情報)で読み取る。


「……ヴァレッサ兄さん。貴方って人は…。」

「さすがはエルフィー。私の嘘がやっとわかったかな?」

「“嘘。”というより、貴方はエルフィーを利用したまでだ。」

「……使えるものは効率よく使うべきだよ、ルーク?あれ、我々“家族”ではなかったかな?」

「あぁ、そうだったな?僕は運悪く貴方と“家族”でしたね?反吐が出る。…その前にとっとと行動しようじゃないか。エルフィー、後は僕がやる。君はミルフィーの所に行け。」

「うん……。ありがとうございます、ルーク兄さん…。」


ルークはエルフィーの頭を撫で、エルフィーは元に置いていったトレーを取りに行った。

側にいたフィレーナに対して一礼し、双子の姉がいる部屋のところへ向かっていった。

対してヴァレッサは“作り笑い”をしていた。

口角は上がり、目を瞑っている。

その顔を目の前にいるミミラに見せている。

ルークもヴァレッサの隣まで行きミミラを見る。


《メモリー・ファブリケーション》(記憶捏造)


〈少しの間、大人しくしろ。何も見えない。何も聞こえない。俺が良いと言うまで能力は解除されない。〉


ルークのファブリケーションでミミラは人形のように止まった。

他の部下達は上司の様子を見てどうしたんだ?と声かけるものもいた。

一人の男が、ルークの所まで行き胸ぐらを掴んで発言する。


「貴様っ…!!さっきからなんなんだ!!ミミラ警視官に何をしたんだ!!」

「…っ!!〈お前も大人しくしろよ。何も聞こえず、何も見えない。俺が良いと言うまで動くな。〉」


ルークはその男にも能力をかけ黙らせた。

そしてヴァレッサは残った部下を見て能力を発動する前に発言した。


「…君達、ルークが胸ぐらを掴まれたじゃないか。何故誰も止めなかった?何故誰も動かなかった?君達は警察ではないのか?しかも警視官の部下だろう。冷静に物事捉え、この状況もまずいと分かっているだろう。正当な理由もなく一般市民に暴力を振るう事は警察官として問題だろう。早急にルークとこの男を引き離さなければならないはずだろう?明らかに君達の行動は違法であり、不適当なんだぞ?そう言った場合の対処法を学校で学ばなかったのか?まあいい。一人残らずこちらを見ろ。さもなくば拳銃で撃つ。私は嘘をつかない。本気だ。」


ヴァレッサは先程ルークを襲った男のポケットから銃を取り、持ち構えていた。

ミミラ警視官の部下達はヴァレッサを見た。

ヴァレッサは能力を発動しようとしたが、一人見てこない女性を見逃さなかった。

バンッ!

ヴァレッサは自身の方を見てこなかった女性に目掛けて、顔の真横を掠めるように銃を撃つ。

女性の頬に擦過傷が出来る。

それでもヴァレッサの方を見ない女性に対して、ヴァレッサはゆっくりと話しかけた。


「一応聞こうか、何故君だけをこちらを見ないのかな?なぜ反抗心を持った?何か考えがあるのかな?」

「……貴方様は、学校関係者の方ではございませんか?」


部下達はその言葉に驚き、皆一斉にその女性の顔を見てしまった。


「……私、知ってるの。だけど、たまたまあの男が学校入って生徒に挨拶していくの見てしまった。今と全然違う顔つきで…。私ここ入ってきた時にどこかでみたことがあると…。」

「君、後ろの手で何をこそこそといじっている?探知機でここを突き止めることができると思ったか?悪いが緊急端末使ってもここに部隊がくることないぞ?」


バンっ!

ヴァレッサは拳銃で女性の肩を撃った。

打たれた衝撃で女性の足元には何かの端末が転がり落ちる。


部下達は息を呑み、一人は女性を助けようと走り寄ろうとした。


「全員動くな!…余計な事をするな。私はその女の話を聞こうと言った。君達が動いて良いなんて一言も言ってないんだよ。とっととこっちを見てくれないか?余計な事をした者は遠慮なく撃つ。私は嘘をつかないと言った。」

ヴァレッサの言葉が聞こえているのかどうか、ミミラの副官であろう男は懐の銃を取り出しながら部下全員に命令を言い放つ。


「構え!!!!」


全員がそうするつもりであったのか、それとも日常の訓練の成果か、部下達は皆一斉に銃を構えヴァレッサへと向ける。

肩を撃たれた女性すらもヴァレッサへ銃口を向けている。

何とかして止めようと動いたフィレーナは団長の手の合図によって止められてしまった。


「やっと見てくれたか…。この無能ども。」


《メモリー・ファブリケーション》(記憶捏造)


〈ミミラ警視官の無能な部下達にお願いをする。さっさと私達の前から消えてくれないか?人に迷惑かけない程度にな。以上だ。〉


ヴァレッサにより能力にかけられた部下達はバラバラにリビングから出て行き、家の外へと出て行った。

残ったのは二人。

ミミラ警視官、そして先程ルークを襲った男。


「ルーク。能力を解除するな。そのままにしておけ。わかっているな?」

ヴァレッサの顔からは笑みがなくなり、いつもの冷酷な顔つきに戻っていた。

団長はヴァレッサの行動に困り、頭を摩ってしまった。


「これからどうなさるのですか?ヴァレッサお兄様?」


ルークとヴァレッサが落ち着いた瞬間、レアが話に入ってきた。

ルークとヴァレッサはレアに顔を向けた。

団長はレアがいる方向を見ず、ミミラ達の様子を見ている。


「……今、お前が出る幕だと思うか?レア。」

「だぁって?ヴァレッサお兄様、ずぅっと無駄話ばかりではございませんか?いつまで呑気に人間とままごとされるのでしょうか?私は、忠告したまででございますよ?時間が勿体無いです。」


いつもよりレアは冷静に冷たくヴァレッサに対して意見を呈した。

ルークは足早にレアの所へ行き、頬を掴み上げた。


「んぐっ!?!?」

「レア。緊急だから忠告する。今は黙ってくれないか…?わかるな?お前はこの言葉をすぐに理解できるよな?な?レア。」

「んふふふんぐっ…!!!!」


レアはルークに頬を掴まれているにも関わらず激しく抵抗したが、ルークの深妙な顔をみて、レアは泣きそうな顔をしながらコクン、コクンと頷いた。

団長はレアを見ていない。

ヴァレッサはレアの話を最後まで聞こうとしている。

対してルカリアはレアをどうにかしようとしない、止めもしない。

ルカリアはぼうっと斜め下を眺め、目を瞑ったり暇そうにしている。


「レア。」


団長はレアの名前を言い、それを聞いたルークは頬を掴み上げた手を離し、レアを解放した。


「いぃぃ…!!。…はい、団長。」

「私、“二度と喋るな。”と言ったわよね?」

「えぇ、重々理解承知しておりますわ、団長。でも、あまりの無駄な策を付け加えるヴァレッサお兄様の言動が我慢なりませんわ。何か問題点ございますでしょうか?」


団長はレアの方向をやっと見ることにした。

フィレーナはまた団長の機嫌を悪くしたかもしれないと目を細めていた。

しかし——————

そこに出た表情は、口角をニィっと上げ笑っていた。


「ハハハハハハハッ!!!!アハハハハハハッ!!」


団長はお腹を抱えて笑っていた。

リビングにいるモノクロサーカス団員全員がその光景に誰もが黙って見ていた。

そして団長はだんだんと落ち着きを取り戻し、それにともないパチパチと拍手をしていた。


「レア、今の発言は許すわ!!確かにそうね?確かに確かに…。私も我慢ならないのは同じ。二度と喋るなと言ったのにと思ったけど、今回は許す許す。ねえ?ルカリアもそう思うでしょ?」

「……私が出る幕ではない。」

「ルカリアのケチ〜。………いいわ、レア。先程の出来事許してあげる♪それで無駄な時間を過ごしてしまったからどう解決したらいいかしら?事をちゃんと進めなかったルーク、ヴァレッサ。貴方達考えなさいよ。」


団長が話し終わったあと、ヴァレッサはルークに顔向けて話しかけた。


「ルーク、君ならどうする?」


ルークは今の状況を整理した。

今ここで考える時間をくれと発言したら間違えなく団長に遊ばれる。

だけど、今の団長はレアの言葉により機嫌はすごぶる良い。

対してヴァレッサは納得してない部分があると感じる。


(ファブリケーションしてもな…。団長効果ないし…。全体にファブリケーションできる力がない…。)


「ヴァレッサ兄さんが筆頭に全体にメモリー・ファブリケーション(記憶捏造)して頂いてこの女警視官をどうにかしたり、警察内部をどうにかすればよろしいかと。」

「うんうん、なるほどね。対してヴァレッサは?」


ルークが話した後、団長はヴァレッサに話を促す。

ヴァレッサは探偵のように手の指を顎に乗せ考える。

ヴァレッサはブツブツと呟きながら目を細めて考える。


「…時間か。時間…。失礼、レアもう一度聞いてもいいかな?」

「…な、なんでしょう??」

「僕が行動した策が時間の無駄…。君は私が考えた内容が効率の悪いものと認識していいのかな?効率が悪い所を具体的にお聞かせ願いたい。」


レアはヴァレッサの発言にポカンとし、レアも手の指を顎に乗せ思いついた事を話す。


「…えっと、まず初めに。玄関先で留めなかったのもアレですけど…でもわかっていた兄さんは止めるべきだったと思います。すぐさま能力使って少しでも私達モノクロサーカス団の練習を作るべきだと思います…。あとは…アレです!ルークお兄様はもう少しヴァレッサお兄様に対して意見を言うべきです!お互いが記憶能力の力をお持ちなのだから上手く二人だけでも事を納めるように出来るはずです。相手は人間ですが、最も簡単に」


ルークはレアがまだ話しているのにも関わらずまたレアの頬を掴み上げ黙らせようとしている。


「喋るな。レア。」

「むんんっ!!!!!!」

「エルフィーが何でわざわざ俺の所へ来たと思う?爪が甘いな…。そこで察しろ。」

「ご、ごめひぃなしゃい…。」


レア、ルーク二人で話していた所ヴァレッサは痺れを切らしたか、上から目線で眺めるように目を細め話しかけた。


「ルーク。私は君達の遊びを見続けるつもりはない。私はレアの話を聞きたい。邪魔をするな。」

「レアは効率が悪いと指摘した、そして答えたじゃないですか。安易な行動したレアの件について申し訳ない。とりあえず行動を開始をしましょう。ヴァレッサ兄さん。」


ルークはまたレアの頬を離し、ヴァレッサの顔を見た。

レアは頬を摩り、流石に二回もやられて目をギュッと閉じながら自分の頬を撫で続けた。


「団長、レアの能力の使用を許可して頂けませんか?」

「え?……なんで?」


団長は突然のヴァレッサの発言に対して素っ頓狂の声をあげてしまった。


「御許可を。」

「いや……今関係あるの…??」

「…耳を貸していただけますか?」


ヴァレッサは小声で団長に説明した。

話は長いが、周りは聞こえてない。

ヴァレッサの話を団長は聞き、段々と笑みが溢れていた。

そして、フィレーナは勘づいたのかレアの体を覆った。


「ちょっ!!フィレーナお姉様!?今度はルークお兄様の次に何をなさるの!?」

「息を今すぐ大きく吸い続けなさいっ!!!早く!!」

「ルカリアっ!!今すぐレア諸共フィレーナを攻撃しろ!団長命令だ!!」


ルカリアはフィレーナに攻撃しようとしたが、頬から風を感じた物で動くのをやめた。


「……百発百中。これでイベントはどうにかなるんじゃないのか?ヴァレッサ兄さん。」

「……いやまだだ。適当に投げただけだ、ルカリア。」


フィレーナの背中には先程のヴァレッサが投げたナイフが一つ目の前で刺さっていた。


“死神用の護身ナイフ”


人間の場合刺さってしまったらすぐに死に至る。

だが、我々モノクロサーカスの場合不死身なため死にはしない。ただ凄まじい激痛を感じる物。


「フィ…フィレー……お姉様…?」

「……っ。……ハー…。ハーッ……。」


団長はフィレーナの所まで行き、足を使ってフィレーナをうつ伏せにさせた。


「ちょっと〜?ヴァレッサな〜にしてんのよ〜。……能力使われずに済んだわね。」

「……っ。…んん…。」

「フィレーナ、何を感じたの?……流石、察しがいいわぁ…。」

「い、いや…フィレーナお姉様!!」

「ヴァレッサ、今すぐ行動して。面倒になる前に。レアの能力、許可するわ。」


団長はリビングからはけ、何処かの部屋に行って去ってしまった。


「ヴァレッサ…。また貴方って人は…!!」

「効率が悪いと言ったな。」


レアはフィレーナを抱え、強く抱きしめながら震えてヴァレッサを睨んだ。


「私は聞いている。君は効率が悪いと言ったな。それにお前とルークが話していた時も無駄な時間が発生した。」

「うぐっ…。ひく……。そ、それが何よ!!!!」

「なら時間を戻せ。」


レアはヴァレッサの言葉に今更ながら全て察した。


何故時間の無駄なのか教えて欲しいとか、ルークが頬を掴んで話をやめさせたり…あれは、レアを守る為にやった事。そうする事で必要以上にヴァレッサに追い詰められる事がなかったから。そしてエルフィーがルークの所へ行った時からヴァレッサの作戦は実行されてた事に今この瞬間気がついてしまった。

団長にレアの能力の許可をお願いした事、耳でヴァレッサは何か話していたが、それは多分—————


「……私の能力を使うための口実を……。」

「そうだよ、レア。団長にちゃんと説明と現状と今後どうなるか、僕はね、団長に弁明したんだ。それにわかるだろう?多くの時間を大損失した。大統領は大分待たされているだろう。双子がなんとかしているがそれも無駄の時間にすぎない。なら君の能力を解禁させないと団長は許してくれない。君の力を管理しているの団長だからね。君の能力を今解放したらこんなふうに大きなメリットが生まれる。しかし話し込んでいたらフィレーナが勘づいてしまった。……愚かな奴。」


レアは涙をボロボロ流し、ヴァレッサはそんなレアの姿を冷徹に見る。

キュッとまたフィレーナを抱き、レアはフィレーナに「ごめんなさい…。」と言いヴァレッサを睨んだ。


「能力が解放されるんでしょ?」

「レア…余計なことはするな……。」

「ルークお兄様は黙ってて!!!!」


レアはフィレーナを抱きしめていた手を離しヴァレッサの前に立ちはだかった。


「…望むところよ。何が古株よ…。フィレーナお姉様ったら勝手な事して……。私はもうワガママ令嬢でもなんでもないの!!いつでも子供扱いしないで!!確かに私は能がなくて、突拍子もなくてルークお兄様みたいな頭の良さなんてない……わかっているわよ!!!!でもね、いつまでも利用されると思わないで!!!!私、これでも意地と執着心が誰よりも強いんだから!!いつか貴方方三人を超えてみせるわ。無理でも絶対に…!!能力解放されたならやり直せる……。」

「…君は、頭がおかしくなったかな?レア。」

「…ヴァレッサお兄様?貴方の大切な方はどなた?ルークお兄様でしょ?」


レアはニタァと笑みを浮かべ、能力を唱えようと準備を始める。


「お兄様が私を利用するなら、私も利用してやる。」


目の色はシルバーベースに瞳から柄が徐々に広がっていく。


〈ルーク・トゥリスの記憶を代償に。私の血を代償にこの日を最初からに!!〉


ルークはその言葉を聞き、ヴァレッサの腕をすぐ掴む。


(俺にはまだやる事あったのに…この状況仕方ないよな……。)


ヴァレッサはルークの行動に疑問を浮かんだ。


ヴァレッサは、殺されて目覚めてから記憶がない。

ルークだけが記憶を全て持った状態で目覚めている。

殺られて起きてから確かにヴァレッサの言葉は少し流暢じゃなくなった。

今のヴァレッサは少しモノクロサーカス団に対して、ルカリアチームだけに対して道具としか見えていない状態の頃。いや、好奇心と言うべきか。探究心というべきか…。


「ヴァレッサ兄さん。兄さんからお願いされた事、今ここで全て渡すよ。エテルさん言っていたよ。意味ない事して、無理でもやるってそういう事だよなって。」

「……何故そこでエテルが出てくる。」

「…だからお願いされた事を今ここで伝える。」

「レアに記憶なくされて君は何が困るんだ?すまない、話が見えない。理解ができないんだよ。記憶なくされても君は普通だろう?」

「……そうだな。“今のヴァレッサ兄さん”ならそう思うな。」


ルークは虚しさを感じた。

確かにヴァレッサはルークに対して誰よりも優しく接しているつもりだったのだろう。


(それが時に気持ち悪いなと思うことあるけどさ…まあヴィンっていう大親友いるし良いけど…)


“記憶なくされるって事は、ルカリア。俺はお前が恐ろしかったことや、ヴァレッサ兄さんがヴィンに対してファブリケーションしていた時無理させて辛かった思いとか…ヴァレッサ兄さんの気持ちとか知らないふりとか、あとは……あとは…。”


「俺って解放されるんだな、ヴァレッサ兄さん。今度は、兄さんの番だよ。ま、兄さんって苦しいとかそんなの無さそうだけど。」

「離してくれないか?ルーク。下がっていろ。記憶はどうにかなるだろう。」


《メモリー・シェア》(記憶共有)


ヴァレッサはルークの記憶の映像を見させられた。全ての記録が走馬灯のように流れ、そこにはヴァレッサが知らなかった記憶が流れていた。

団長に殺される日——————

それだけじゃなかった。


“……な、に…?なんだ、この記憶は…。”


ヴァレッサは久しぶりに一人で動揺していた。


ヴァレッサが団長の持ち物を盗もうとする前、そしてさらに昔々の出来事。


そこには出会う前のルークの映像。

出会った頃はルークは病弱だった。

病弱のルークはそれでも体力がある限り、勉強を昼の時間休まず勉強し続けていた。

ヴァレッサはルークに対してあくまで“生徒”として見ていなかった。

わからない事は最後まで付き合ってやった。

—————うるさかった。

問題が納得するまで帰りたくないとか、どうして答えをすぐに教えてくれないんだと…

“ヴァレッサ先生!!!!どうしてボーッとするの!?俺聞いてるんだけど!!!!”

“……あぁ、すまないね。少し別の生徒の考え事だよ。なんだ?また分からない事でもあったかな?少しは頭を使ったらどうだ?全ては教科書に記されている。読んでもわからなかった部分を教えてくれるかな?”

“え、先生…。勉強終わってるじゃん…。俺の…その……好きな人の話…。”

“は……あ……、すまない。”

“先生疲れてる??ハハッ、ヴァレッサ先生って案外抜けてんだな!!え?せんせ〜い!何々〜?気になる生徒でもいる〜??確かにヴァレッサ先生モテるもんな〜!!!羨ましいわぁーーー!!!俺健康体じゃないからさ、家庭とかそんなの支えられる自信ねえもん…。それに人を好きになるとかまあ……、一人でも生きてその間楽しいの見つけられたらいいな……。”


《メモリー・シェア 解除》(記憶共有)


ヴァレッサは、全ての記憶を知り、最初から最後まで思い出す事が出来た。

一部、自分のものじゃないと信じ難かったが、ルークが器用に嘘をつけるはずがない。


確かに、目覚めてから所々違和感を覚えていた。

団長はルークの話をするとまた話すのかと発言していた。

私にとっては初めて話すのにどうしてそんなこと言うのだろうかと思っていた。

双子がまたルークお兄さんの話ですかと言われた時も、フィレーナにも…。

全て僕にとっては君達に初めて話す内容だった。

皆やる事があるから忘れているだけだろうと考えていた。

フィレーナにナイフを投げた時、ルカリアは謎の言葉を言っていたな。

“百発百中。これでイベントはどうにかなる——”

イベントが近い日なんてあったのか?と疑問に思っていた。


「レア!!お前にお願いがある!!!!俺の記憶無くすついでに、俺も血を流すから願いを聞いて欲しい!!」

「…何でしょう?ルークお兄様。」

「時間を戻す時、ヴァレッサ兄さんの記憶だけは残せ。理由は聞くなよー。俺の血と……そしてもう一つの代償として……」


ルークはレアに笑顔を向けて決意を示した様に綺麗に背筋を伸ばしてヴァレッサの前へ立つ。


「わかりました、願いを承ります!」


やめろ————-


〈ヴァレッサ・エーナスの記憶を残す、ルーク・トゥリスの血と…を代償に〉


ルーク、やめてくれないのか?——————


〈願いは叶った〉


君はどこまで記憶を維持していたんだ…。

あぁ、今度。

エテルに聞き出してやる。


〈私の血とルークお兄様の記憶を代償に、この日を最初からに———〉


「ルーク。」

ルークは呼ばれた方向へ顔を向けた。

そしてヴァレッサを見つめていた。


「……あの、どちら様でしょうか?」


ヴァレッサは、目を今まで以上大きく見開き、言葉を失った。

残されたルカリアは、その現場をじっと見つめ、一人だけ眠そうに眺めていた。


そう、もう今この空間はレアの能力。

時間能力を操り、言葉ですら自由自在に操る事ができる。

他の能力とは違って、時間能力は多くの代償が発生する。

レアは、復活後その能力を手に入れてしまった。


《リセット》


〈血と記憶を代償に 時よ 戻れ〉


空間は色を無くしていき、時はその日の最初へと戻ることになった。

時が戻るとみんなの記憶はもちろん無くなる。

だが、ルークのお願いにより、ヴァレッサだけは記憶を維持されたまま時を戻ることになった。

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