3.お菓子作りは女の子のスキルなのか?
調理実習の時間、簡単なクッキーを作ることになった。
僕はこう見えて、お菓子作りが得意である…今更クッキーなんて、と思ったけどそれはそれ、これはみんなで楽しむ時間だ。
バターと卵をかき混ぜ、小麦粉をゆっくり混ぜる簡単な工程までみんな同時に進めていく。
さすが女子、みんな手先が器用でキレイな生地がボウルの中で出来上がっている。
さすが男子、ほとんどが粉だらけ。
そして佐莉亜さんは…滑らかな手の動きでゆっくり生地を混ぜていた。
しなやかな手の動きと落ち着いた雰囲気…彼女もお菓子作りが得意なのだろうか?
いや、違う。なんでか彼女も粉だらけだ。
「あ~サリーね、さっき思いっきり混ぜて小麦粉爆発してたんだよね…」
近くにいた女子が僕にそう伝える。
あぁ、そうなんだと苦笑いして返しすぐ自分の作業に戻る…彼女を見ていると周りに思われるのもまた恥ずかしいこと。
オーブンに火をつけ、みんなでクッキーの形作り。
僕はこだわらない、丸い形を作るだけだ。
男子はだいたい、星形にしたりヘンな形にしたりして
女子はだいたい、星形にしたりハート形にしたり…。
…気になる、佐莉亜さんの作る形が。
彼女のほうを見てみると、まだ形を作っていない…クッキーの生地が手にベタベタ張り付いて形どころじゃないみたいだ。
グループの女子も手伝っているようだが全く変わらない…しょーがない。
「佐莉亜さん、これ小麦粉が少ないよ…ほら。」
男子の意見にしては珍しいだろう、クッキーのアドバイスなんて。
グループの男子から軽く冷やかされながら僕はクッキーの残りを丸め、佐莉亜さんもようやく形にできているようだった。
…放課後、帰りのHR終わりみんなワイワイ帰るなか、佐莉亜さんは通り過ぎながら机に今日作ったクッキーの袋を置いて行った。
可愛いマスキングテープでメモが張り付けられている。
[アリガトウ、真クン☆]
照れ隠しかな…全部カタカナなのは…
そして彼女の作ったクッキーは、異常なまでに甘かった。