しるふ
実は日本は滅びかけた。第三次世界大戦で中国の核ミサイルが日本に落とされた。しかし、風を司る精霊【シルフ】が現れ、空間を操れるシルフの転移魔法により核は宇宙の彼方へ。シルフは言った「【豊臣秀吉】との約束が違う」と。
タッチアップが来たのは神聖江戸時代光栄五年。
「ここがジャパンか。さて、どこから探そう……」
「よう兄さん、探し物かい?」
突然声をかけてきたのは中年の男。腰に刀を下げている。
「ああ、シルフ或いはシルフとの契約者を」
「へへっ、まぁこっち来な」
二人は裏路地へ。
「さぁ、金出しな!」
刀を突き付けられた。が。
ビリビリ。
「な、なん、だ?しびれ」
「ああ、ちょっと電気でマヒさせた」
タッチアップは電気使いである。
「先が思いやられるな。おい、スモウレスラーはどこで格闘してる?」
「こ、こくぎ、か、かん」
急に塩らしくなる中年。
「そこはどこだ?」
「りょう、ご、ごく」
「そ、んじゃ!」
「お、おい!」
中年はマヒしたまま置いてきぼり。目指すは両国国技館。
「なんじゃコリア!?」
日本の鉄道路線図に慌てるタッチアップ。無理もない。日本の鉄道路線図ほど難しい路線図はないだろう。
「スミマセン、リョウゴクは?」
「地下鉄ですね。それなら……」
駅員に聞いて正解だった。と、思ったら!
「240円です」
「え?」
「二百四十円です!」
「あ、」
「ニヒャクヨンジュウエン!」
タッチアップは【円】、日本の貨幣はもっていなかった。
「やっぱり、歩いていきます……」
「待ちな!」
「お前は!」
マヒさせた中年だ。
「二百四十円くらい貸してやるよ、兄さん」
「本当か?」
「但し!」
タダではなかった。
「兄さんに興味がある。電気使い。ちょっと力を試したい。だが、とりあえずそっちの用件をとっとと済ませちまえ」←
地下鉄で乗り換える事五回。通過した駅三十二。やっと着いた! 両国国技館!
「すごい人だ。オーストラリアでもこんなに集まるのは滅多にない!」
「今、人気の力士がいるからな。そいつ以外は外国人だ」
土俵にはまだ幕下の力士達の戦いが繰り広げられてた。しかし、長髪だったり、Tシャツ着てたりもう残念な事この上ない。
客も見てみぬふりのような、白けた雰囲気だ。
やっと幕の内! 客も賑わってきた!
「どうしたんだ?」
「これからが、相撲ってことさ」
「?」
確かに、くらいがあがるにつれふんどしや髪、立ち居振舞いが【らしく】なってきた。そして、その人気の日本人力士が控えに入ると、客は歓声をあげはじめ、遂にその力士の番。
行司が名を挙げる。「ひがーしー、【台風】!たいーふーうー!」
「わぁー!!」
歓声は行司の声を消し、相手の名前がわからない。
「見合って見合って、はっけよーいっ!」
ブォオオ!
台風の張り手からものすごい風が追いかける。
バシバシ! バシバシ!
「台風ぅ~!」
あっという間に勝敗は決まった。
「さすが!」「つえぇな! オラわくわくすっぞ!」などと、歓声がこだまする。
「……間違いない、今、風の力を使った! 彼はシルフと契約しているはずだ! 会いに行かないと!」
午後二十時。
「今日も楽勝でごわすな」
「台風さんが強いんす!」
「シルフのおかげだよな?」
「そうそう……って、誰だ!?」
「タッチアップって言います。驚かせてスミマセン。できればお話しませんか?」
「い、いいでごわすよ」
その後話し合う為誰もいない場所に移動した。
「ここなら思いっきりやれるでごわす!」
「なに?」
「くらうでごわす!」
ゴオオオオオオオオ!
風がタッチアップを巻き上げる。
「その高さ、死ぬでごわすな」
「それはどうかな?」
タッチアップは近くの鉄柱に張り付いて落下しない。
「俺は電気を使える。あとはわかるな?」
「くせものでごわすな! ならば! 空……」「待て!」
「誰だ!?」
闇に誰かいる。
「外国人、貴様何者だ?」
「姿を見せろ! そしたら答えてやる」
「闇に忍ぶ者、それこそ忍者の本質。忍者とは闇に忍ぶ」
「え?忍者?ラッキー!」
「は?」「え?」
「スモウレスラーに忍者! 求めていた者達だよ!」
そう、ピックアップは風使いで強い者を探していた。
「忍者は忍ぶ者。そのような戯れ言聞かん!」
ビュッ! っと音がして忍者は去った。
「くそう、忍者は無理かぁ、じゃあ後はサムライだな。しかし、忍者といいジャパンの人は扱いにくいなぁ」
「侍ならここにいるじゃないか」
「へ?」
そう、中年の男、刀を持っている。つまり侍。なぜ気付かなかったのか……。
「俺は【風丸】。あんたといると面白そうだから着いていくぜ!」
「ふふ、侍なんて無職と同じ、つまり食い扶持を探してたんでごわすな」
「それを言うな!」
「そうだったのか?いいよ、飯ぐらい。その代わり命を賭けてもらう」
「どういうことだ?」「ごわす?」
タッチアップは【デビルメイ八王子】との大戦に備え日本に来た事、助力を求めていることを告げた。←
「なるほどな」
「それは大変でごわすが、我々は力を貸せないのでごわす」
「なにっ?」
「兄さん知ってるか?豊臣秀吉って」
「さぁ」
風丸はシルフと豊臣秀吉が交わした約束を話した。
シルフは力を貸す、豊臣秀吉はシルフが住みやすい世界を作る。それが約束。
「住みやすい世界って具体的じゃないな」
「豊臣秀吉とはある程度打ち合わせていたらしいんだが、誰にも明かしてないからな」
「そうだ! それこそデビルメイ八王子との大戦に勝利することが住みやすい世界を作るきっかけになるんじゃないか?」
一理ある。日本をどんなに綺麗にしてもデビルメイ八王子が地球に君臨し日本も地獄のような場所にしては元も子もない。
「決まりでごわすな!」
「ああ、来てくれシドニーへ!」
こうして三人はシドニーへ旅立った。