第33話 戦の理由1
ノーザのオークと話す
「俺に何か用か?」
恐る恐る僕達に近づいてきたオークが尋ねてきた。視線を素早く動かして、僕達の誰かが動こうものならすぐに踵を返して逃げ出そうとしているみたいだ。
「おぅよ。あのドラゴンを見たかい?」
スコルは友好を装っているのか、歯をむき出して笑って見せている。彼に言われてオークはチラリと檻に戻ってしまったドラゴンを見る。
「あぁ。どうしたんだろうな」
ドラゴンを操る宝石が壊れてしまったので、言う事を聞かなくなったという事情をこのオークは知らないらしい。それをいい事にスコルがでたらめな事を言う。
「どうしたもこうしたも細かい説明は省くが、俺達に恐れを為して戦を放棄しちまったんだ。そんなわけであのドラゴンはもう戦わないって事だ」
「本当か?」
そう聞いてきたオークに本当の事を言ってもいいけど、ここはスコルに調子を合わせておこう。
「見てくださいよ。どう見ても戦いませんよ」
檻の中で目をつぶって眠っているんだろうか、とにかくドラゴンは動きそうにない。オークはまたチラリとドラゴンを見る。
「そうかもな。それで?」
オークが僕達に視線を戻して聞いてきた。
「それでってどういう事だよ?あのドラゴンが戦わないんだから、俺達の勝ちって事でいいんだよな?それとも今度はお前らが相手になるってか?」
スコルの言葉でようやく理解したのか、そのオークは慌てたように答える。
「あぁ、そういう事か。えぇと、俺の一存じゃ決めかねる事なんで、ちょっと相談してきてもいいかな?」
ノーザの仲間達の方に戻ろうとするオークに意外な人物が声をかけた。
「待て」
僕達は一斉にそう言った人物を見た。
「どうしたんです?コルガ?」
僕は珍しく声を発したコルガに尋ねた。彼が自分から話すなんてびっくり。
「聞きたい事がある。何で戦っている?」
コルガがオークだけじゃなく、僕達全員を見ながら言った。
「「はぁ?」」
何人かの声が重なって聞こえる。僕の口からも同じ声が出た。言葉は短いけど、コルガは僕達が戦っている理由を聞いているみたいだ。
「何を言っているんですか、コルガ。僕達はガラテアとアリエル、スコルの両親に依頼されたから戦っているんじゃないですか。あなただって会ったでしょう?」
コルガの意外な質問の驚きから立ち直って、僕は口を開いた。スコル達も頷いているんだから、僕の答えは間違っていないはずだ。だけど、コルガの聞きたい答えじゃなかったみたい。
「それは知っている。だが、戦が始まった理由は?」
コルガの口から出た言葉に対する答えを僕は知らなかった。
「それは……スコル、知ってます?」
「ふーむ、戦の始まった理由ね。俺も聞いてなかったな。エリス、何か知っているか?」
「あたしも知らないわよ。てっきりスコルが何か聞いてるものと思ってたわ」
僕達三人ともコルガには答えられないわけだ。
「俺とした事がうっかりだな。そもそも戦の始まった事情を聞いてないなんてな」
スコルは腕を組んで首を捻った。僕もスコルが詳しい事情やらを聞き及んでいるものと思ったけど、そうでもなかったらしい。
「そんなに重要な事かい?傭兵はただ戦えばいいだけだと思うけど」
イソルダは言った。その時、まだ僕達の側にいたノーザのオークが口を挟んできた。
「あんたら、戦の理由を知らないで戦ってたのか?」
不思議そうに僕達の方を見ているオーク。
「なんだ?お前は戦が始まった理由を知っているってのか?」
「あぁ、一応ね。聞いているぜ」
スコルに尋ねられたオークが頷く。
「だったら、その理由ってのを教えてもらえないか?」
「なんでそんな事教えてやらなきゃいけないんだよ」
スコルが頼むとオークはそう答えた。まぁ、戦の相手にわざわざそんな事教える義理もないよね。
「教えてもらえないのか?なら、言いたくなるように多少手荒なまねをしてもいいって事だな?」
スコルが不気味に微笑んでみせると、オークの方にじりじりと近づいていく。
「わかった!よせよ、教えてやるよ」
スコルの圧力に耐えきれなくなったのか、オークが両手を上げて降参した。
「よし。で、理由ってのは?」
スコルが話を促すと、オークは言った。
「タセンの村の族長、ガラテアって言ったっけ。そいつが酒代を払おうとしないからだよ」
「「はぁ?」」
またもや僕達の口から間抜けな声が漏れた。
一同拍子抜けの理由




