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第32話 三回目の戦5

杖を壊すと……

 浮遊の術で僕に向かって飛んできた杖を掴もうと手を伸ばす。と、僕の手が届く前にスコルが割り込んできて杖を奪ってしまった。


「ちょっと、スコル!」


 僕の抗議の声を無視してスコルは手に取った杖をじっくりと眺めている。ふと声がしたので顔を向けると、僕に杖を奪われたオークの魔術師がこっちに走り寄って来ていた。


「こっちに来ますよ!」


 僕が慌ててスコルに声をかけると、彼はようやく杖から目を離して向かってくる魔術師を見た。


「その杖を返せ!」


 オークの魔術師が杖を持っているスコルに飛びかかる。僕が浮遊の術で魔術師を止めるよりも早くスコルは杖を振り回して魔術師を殴りつける。すると杖はその衝撃に耐えられずに、ポッキリと二つに折れてしまった。


「あぁ!高かったのに……」


 スコルに殴られて地面に倒れた魔術師が、折れた杖を見て嘆いた。魔術師の様子から見て、結構値が張る代物だったようだ。


「そいつぁ悪い事をしたな」


 そう言ったけど、にんまりと笑ったスコルはちっとも悪いと思っていなさそうだ。彼は地面に落ちた杖の残骸を踏みつけた。杖に付いていた宝石が踏み砕かれる。あーぁ、きれいな宝石だったのにもったいない。

僕がそんな事を思っているとエリスの声が聞こえる。


「二人とも、ドラゴンをあたし達にまかせっきりにして何してるのよ」


 おっと、そうだった。エリス達はまだドラゴンの相手をしているんだった。僕が慌ててそちらの方を見ると、ドラゴンはキョトンとこちらを見ながら動きを止めていた。


「あのドラゴンはどうしちゃったんですか?」


「それがついさっきから何もしてこなくなっちゃったのよ」


 エリスが肩を竦めて言った。ドラゴンの周りにはディド、コルガ、イソルダが油断なく構えているけど、当のドラゴンはもう彼らに攻撃を仕掛けたりしなかった。


「いやぁ、お前さんの予想が大当りだったってわけだ。でかしたな、ぼうず」


 スコルが僕の肩に手を置いて言った。えっと、ということは……。


「本当にあの杖でドラゴンに命令していたって事ですね?それを壊したから……」


「まぁ、杖と言うより、あの宝石だな。あれにドラゴンを操る力があったんだろう。俺が今砕いちまったから、効力が失われてドラゴンがおとなしくなったのさ」


 粉々になった宝石を指差しながらスコルが説明する。


「へぇ、じゃあ、あのドラゴンはもうあたし達を攻撃してこないって事?」


「多分な。俺達から攻撃しない限りはおとなしくしてるだろうよ」


 エリスとスコルが話している間にもドラゴンは飛びかかったりして来ずにおとなしくしている。やったね!僕の大手柄じゃないか。と思わず笑みがこぼれそうになった時、僕達の声が届いていなかったんだろう。何もしてこないドラゴンに対してイソルダが金棒を振り上げた。


「ちょっと待ってください!」


 僕はとっさに魔力を操って彼女の金棒を宙に浮き上がらせる。手からすっぽ抜けて宙に浮いた金棒を見て、イソルダは僕の仕業だと気付いたらしい。


「何するんだい!イオ!」


 僕の方を睨みながら大声を上げるイソルダ。


「イソルダ!こっちに来てください!ディドとコルガも!」


 僕は事情を説明する為にみんなを呼び寄せた。危ない危ない、あのままイソルダがドラゴンを攻撃していたら、せっかく宝石を壊したのにまた襲いかかってくるかもしれない。


 三人が集まったところで宙に浮いた金棒をイソルダに返して僕は説明する。


「あのドラゴンはオークに操られて戦っていたみたいなんですよ。で、操る為の宝石を壊してしまったから、僕達の方から余計な事をしない限り、もう襲って来ないって事です」


「なんだ、そうなんだ。せっかく盛り上がってきたところなのに」


 僕の説明を聞いて納得したけど、不満そうなイソルダ。


「と言う事は、ドラゴンについてはこれで終わりという事ですか?」


「まぁ、そういう事になるな。見てみろよ」


 ディドの疑問に答えたスコルが指差した方を見ると、ドラゴンがどこかに歩き出している途中だった。僕達が見ていると、ドラゴンはそのまま檻の中に戻っていき、ドスンと腰を下ろすと目を閉じてしまった。ノーザのオークの中には何事が起きたのかと檻を覗き見ているオークもいた。


 杖を持っていたオークの魔術師、いやもしかして魔術師じゃないのかもしれない。あの宝石でドラゴンを操っていただけなんだから。とにかくあのオークはよろよろと立ち上がって、他のオーク達の方に向かっていく。合流したところで他のオーク達から何か詰問されているようだが、何か喚くとそのまま立ち去ってしまった。いやぁ、何だか気まずい場面を見てしまったな。きっとドラゴンをどうにかしろと言われたけど、宝石を砕かれてしまってお手上げだって事なんだろう。


「今度はあのオーク達が相手かい?」


 イソルダが口を開く。


「さぁ、どうする気だろうな。少し聞いてみるか」


 スコルはそう言ってにんまりとした笑顔を見せてノーザのオーク達の方に手招きをしてみせた。牙をむき出したスコルの笑顔なんて見ても安心できない。でも、オーク同士だからスコルの笑顔も少しは効果があったのかもしれない。ノーザのオーク達の中から一人、僕達の方におそるおそる歩いてきた。

戦は続くのか?

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