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第30話 三回目の戦3

ドラゴンとの戦い

 スコルは勇気のある方だと思っていたけど、まさかドラゴンの背に乗るなんて僕もびっくり。エリス達四人がドラゴンの相手をしている間に、彼は後ろに回ってドラゴンに飛びついていた。自分の背に飛びつかれた途端にドラゴンも気が付いたらしく、尾を振って彼を振り落とそうとする。だけど、スコルもドラゴンの鱗の隙間に爪を喰い込ませてしがみついて落ちまいとしている。


 スコルはそのままドラゴンの体をよじ登って翼の辺りまで来ている。僕はいつ振り落とされるかハラハラしながら見ていた。もちろん彼が落とされた時には浮遊の術を使って受け止める心の準備はしてある。


 僕の心配を余所にスコルはそのままドラゴンの首の根元の辺りまで移動する。そして長い首を伝って、とうとう頭のすぐ近くまで来た。その間にもエリスは飛び回ってドラゴンの注意を引き、ディドとコルガとイソルダは前足や後ろ足の辺りを攻撃。僕は彼らを殴りつけようとするドラゴンの足の前に防壁を張って攻撃を食い止めていた。


「振り落とせ!」


 オークの魔術師が輝く宝石の付いた杖を掲げて声を上げる。ドラゴンはその声に従うように、首を振ってスコルを振り落とそうとする。だけど、両手両足でがっしりとしがみついたスコルは落ちない。やがて首を振り過ぎて目を回したのか、ドラゴンの動きが止まる。その隙にスコルはドラゴンの頭の上まで行き、両足で首を挟みこむと拳を振り上げる。


「こいつでも喰らえ!」


 気合の声と共にスコルの拳が振り下ろされる。そのままドラゴンの顔に滅多やたらにパンチを繰り返すスコル。さすがにドラゴンも痛みを感じたのか、低い唸り声を上げると目を閉じて体をよじる。


「いいぞ!スコル!もっとやってやれ!」


 ドラゴンの足に金棒を叩きつけていたイソルダが歓声を上げた。スコルはますます勢いに乗って拳を振るう。いやはや、ドラゴンを素手で殴るオークだなんて滅多に見られるもんじゃないだろうな。


 その様子にオークの魔術師が怒りの声を上げる。


「えーい、さっさとそいつを振り払え!空を飛べ!」


 魔術師の叫び声が届くと、ドラゴンは大きな翼を伸ばして羽ばたかせた。辺りに猛烈な風が巻き起こる。僕は思わず身を屈めて、風に飛ばされないようにした。ドラゴンのすぐ側にいたディド達も同じように屈んでいる。宙を飛んでいたエリスは風に押されて、後ろに下がった。さすがにスコルも手を離している余裕はなくなったらしく、ドラゴンの首に手足を使ってしがみついている。


 ドラゴンの巨体がフワリと宙に浮いた。ひぇー、翼がついているんだから空を飛ぶんだとは想像できたけど、本当に飛んでいる。翼を広げていると、ドラゴンがより大きく見える。おまけにもの凄い風。僕が身に付けた旋風の術なんかとは比べ物にならない。


 僕が身を屈めながらドラゴンを呆然と眺めていると、翼を羽ばたかせたドラゴンはそのまま空に飛んでいった。そういえばスコルがその首にしがみついたままだったな。大丈夫かな、そのうち落ちてくるんじゃないだろうか。僕は心配になって飛び回っているドラゴンを見つめた。


「さすがドラゴン、タフだねぇ」


 僕と同じように空を飛ぶドラゴンを見ながら、イソルダが口を開く。


「スコルは大丈夫ですか?」


 ディドも空を見ている。コルガも心なしか心配そうだ。


「大丈夫ですよ。落っこちてないところを見ると、まだしがみついているんでしょう」


 僕は念の為辺りを見回してみたけど、地面に激突して呻きを上げるスコルの姿は見えない。


 ノーザのオーク達は空を飛ぶドラゴンを見て何やら盛り上がっているようだ。ドラゴンを指差して興奮したように互いに話している。彼らからしてみれば、いい見世物だろう。まったくいい気なものだ。


「ちょっと、イオ。のん気にしてないでドラゴンの方を見てなさいよ。スコルが落っこちてきたら受け止めるのよ」


 いつも間にか近くにいたエリスに注意される。彼女はそう言うと空を飛ぶドラゴン目がけて飛行の術で飛んでいった。僕だって飛行の術は使えるけど、好き好んではばたくドラゴンに近づきたいとは思わない。追いかけ回すのはエリスに任せておこう。


 エリスが近づいて行くとドラゴンは彼女を避けるように逃げていく。しばらくエリスとドラゴンの空中での追いかけっこが続いた。上に上がったり下に下がったり、右に逃げたり左に逃げたり。僕はその間もドラゴンから目を離さないようにした。


 やがて、エリスがひと際スピードを出してドラゴンに近づいた時だった。ドラゴンの首の辺りからポロリと何かが剥がれ落ちるのが見えた。


「あっ!落ちたよ!」


 イソルダの声が聞こえた。僕は落ちた物体に目をこらす。ドラゴンの鱗が剥がれ落ちたとかじゃないみたいだ。スコルが空中で手足をバタつかせているのが見える。いくら頑丈な彼でも、この高さから落ちたら無事には済まないだろう。というわけで、僕の出番だ。僕は手をかざして魔力を操り、スコルの体を包み込む。浮遊の術で彼を受け止めると、ゆっくりと地面に降ろす。彼は両足から地面に降りると僕ににんまりと笑顔を見せる。


「ナイスキャッチだ、ぼうず」


「あんまり無茶しないでくださいよ」


 と僕が言ってもスコルは片手を上げるだけ。


「こっちに来るよ!」


 イソルダが叫んだ。彼女の言う通り、ドラゴンが僕達に向かって高度を下げている。


「やれ!」


 オークの魔術師の声が辺りに響いた。すると、ドラゴンが大きな口を開けた。噛みつくつもりだと思ったけど違った。ドラゴンの口から炎が噴き出した。


「ぼうず!防壁だ!」


 スコルの声が聞こえると僕は炎を防ぐ為に防壁を張って叫んだ。


「みんな僕の近くに寄ってください!」


 ディド達は慌てて僕に近づく。そこに一陣の炎が襲いかかってきた。幸い僕の防壁の術はきちんと作用しており、炎を防いでくれた。炎を吐いて僕達の頭上を通ったドラゴンが方向転換をして、またこっちに向かってくる。その後も、二度、三度と僕達に炎を吐きかけてくるドラゴン。エリスがドラゴンの後ろを飛んで攻撃を仕掛けているけど、あまり効果はなさそうだ。ディドが炎の隙間を縫って矢を放ったけど、こちらも鱗に阻まれてしまう。


「空を飛ばれたんじゃ、なかなかこっちから手出しできないな」


 スコルはじれったそうにドラゴンを見ながら言う。さすがの彼も宙を飛ぶドラゴンには手を焼いている。


「どうしましょう?何かいい手は思い付きませんか?」


 僕はスコルの方を見て言った。浮遊の術では止められない。ドラゴンの前に防壁を張る事も考えたけど、あの巨体で体当たりされたんじゃ破られるかもしれない。そこに炎でも吐きかけられたら僕達は丸焦げになってしまう。


「イオ、あたいを飛ばしてよ」


「へ?」


 イソルダの言葉に僕は間抜けな声を出してしまった。飛ばすって文字通りの意味だろうか?


「飛ばしてどうするんですか?」


 僕は思わず聞き返した。


「あいつの頭の近くに飛ばしてくれれば、あたいがこいつで叩き落としてやるよ」


 イソルダは自信満々に金棒を持ち直して答えた。確かに地面に降りてもらわないと僕達は防戦一方だ。僕はスコルの方を見てみる。


「まぁ、物は試しだ。イソルダに任せてみるか」


 スコルが頷く。師匠のお許しが出たんだからやってみるか。


「じゃあ、次に近づいてきた時に飛ばしますからね。気を付けてください」


 僕が言うとイソルダは金棒を構えた。そこにまたもやドラゴンが炎を吐いて近づいてくる。僕は防壁でそれを防ぎ、炎が途切れると同時に浮遊の術を使ってイソルダの体をドラゴン目がけて飛ばした。

戦は続く

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