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第19話 傭兵3

声をかけてきたのは一人の女性?

 僕達に声をかけてきたのは背の高い大柄な女性だった。スコルもかなり大きい体格をしているけれど、それを上回る大きさ。こりゃどう見ても人間じゃないな。まぁ、大きさだけじゃなくて額に二本の角が生えているからそう思ったんだけど。


「なんだお前は?俺達に何か用か?」


 スコルが相手を見上げて話しているなんて光景はそう見れるものじゃないかもしれない。


「さっきも言ったけど、あんた達傭兵を探してるんだろ?」


 大柄な女性は親しげに話しかけてくる。彼女は笑顔だったけど、僕一人だったらかなり怖い思いをしただろう。威圧感が普通の人間の比じゃないんだから。


「あぁ、そうだが……」


 スコルが口を開いて答えた。


「だったらあたいを雇いなよ。安くしとくよ」


 スコルが何か言い終える前に女性は口を挟んできた。どうやらこの女性は僕達に雇ってもらおうと声をかけてきたらしい。どこかで僕達の事が噂になっているのかな。いろんな種族が行き交うエルフのマーケットだから、そんなに目立つわけじゃないと思うけど。


「お前傭兵か?」


 スコルが尋ねた。


「そうだよ」


 女性は短く答える。


「俺達に雇ってもらいたいって?」


 さらにスコルが尋ねる。


「そうさ」


 またもや女性は短く答える。僕達がいい返事をしてくれると信じて疑っていないみたいな顔だ。確かに彼女の見た目は強そうだけど、どうしたものやら。


「ちょっと待っててくれ」


 スコルは女性をその場に留めて、僕達を引き連れて道の端に行った。


「誰か、あのでかい女を知ってるか?」


 スコルは親指で女性を差しながら聞いたので、僕達は互いに顔を見合わせた。


「知りません」


 僕は首を横に振って答えた。次元移動できないから別の種族に会う機会もないのに、僕が知っているわけがない。


「残念ながらわたしも知りませんね。見たところオーガーのようですが。コルガは?」


 ディドが答えてコルガに声をかける。ディドの見立てによると、あの大柄な女性はオーガーという種族らしい。


「知らん」


 声をかけられたコルガは一言言うと口を閉じてしまった。コルガの声をまともに聞いたのは初めてかもしれない。いかにもドワーフらしい野太い声だ。


「あたしも知らない」


 エリスもそう言った。


「見たところ武器も持っていますし、傭兵というのは間違いなさそうですが」


 大柄な女性の方をチラリと見ながらディドは言った。確かに女性は金属の胸当てをしているし、かなり大きな金棒を持っている。あんな大きさの金属の棒はかなりの重さなんじゃないだろうか。それを軽々と持ち運びしているみたいだから、たいした力持ちに違いない。


「そりゃ見りゃわかるが。うーん、急になんのツテもない奴ってのはな。実力の程がわからんとおいそれと雇うわけにもいかん」


 スコルは悩むように言った。それを聞いた僕は突然何を思ったのか、こう口走ってしまった。


「実力なら彼女に聞いてみればいいじゃないですか」


「へぇ?」


 僕の言葉を聞いたスコルがなんだか間抜けな声を上げる。僕としてはスコルの為に何かしてあげたいと思っただけだ。オークの次元、エルフの次元と移動してから、僕は特に何の役にも立っていない。そんな事が続いていたから、多少は役に立つって事をスコルに見せたかったのかもしれない。傭兵との交渉には余計な口を出すなと言われていたけど、僕はそんな事も忘れてさっそく行動に取りかかってしまっていた。


「スコルが聞かないんなら僕が聞いてあげますよ」


 僕はそう言ってスコル達を道の端に置いたまま、スタスタと大柄な女性の方に歩み寄った。いざ彼女の前に立つと、その大きさに僕は少し怖気づいてしまった。下手な事を言うと、僕なんか簡単に捻り潰されてしまうかもしれない。できるだけ友好的に見せる為に僕は笑顔を浮かべる事にした。多分かなり強張った笑顔だっただろう。


「あのぉ、あなた名前は?」


 僕はなんとか怖気づく自分を頭の片隅に追いやって女性に聞いてみた。


「あたいはイソルダってんだ。まだ売り出し中の傭兵だから、この辺りじゃ知られてないかもね」


 彼女は特に気にした風もなく答えてくれた。よかった、僕みたいな若造が偉そうに名前を尋ねたら、いきなり殴りかかるような危険人物じゃないみたいだ。


「イソルダ、あなたを雇ってあげたいのは山々なんですが、僕達はできれば腕が確かな人を雇いたいんですよ……」


 僕は少し安心してイソルダに話しかけた。でも、この言い方は悪かったかもしれない。


「なんだい、あんた達あたいは腕が悪いって思ってるのかい?」


 イソルダは少しムッとしたように眉間に皺を寄せた。


「いやぁ、そんな事思ってませんけど、あなたがどれくらい強いかわからないじゃないですか。傭兵をよく知っている人に紹介してもらったならともかく、いきなり声をかけてきたからちょっと疑っているってだけですよ」


 僕は慌てて言い繕おうとしたけど、うまい言い訳が浮かんでこなくて思った事を口にしてしまった。


「そりゃあたいの実力を疑ってるって事じゃないか」


 ますます機嫌の悪くなるイソルダ。彼女がどんな経歴を持っているかも知らない僕がプライドを傷つけてしまったみたいだ。


「いや、イソルダ。このぼうずが失礼な事を言っちまって悪かったな。ただ……」


 僕とイソルダの間に険悪な空気が流れているのを感じ取ったのかスコルが割って入ってきた。


「あたいの実力が見たいなら見せてやるよ」


 取り付く島もないと言って感じで、おもむろに金棒を持ち直すイソルダ。彼女は一体何をしようとしているのか。僕は口をぽかんと開けたまま、その場に突っ立っていた。


「下がれ、ぼうず」


 スコルがそう言って、僕の服の襟を掴んでイソルダから離れる。彼女は両手で持った金棒を頭の上に振り上げてから、勢いよく振り下ろす。風を切るような音がする。少し離れた僕にまで振り下ろした時に起こった風が届いた。こりゃ物凄い力だ。あの金棒の中身は空洞になっているのかもしれないし、木に金属を張り付けているのかもしれない。でも、どのみちかなりの重量なのに変わりはない。それをあんな風に扱うなんて。


 僕が驚いている間にもイソルダは金棒の素振りを繰り返している。その度に風が巻き起こり、道行く人々は何事かと振り返る。


「あれは何だ?暴れている奴がいるぞ」


「警備を呼んだ方がいいんじゃないか?」


 やがて素振りを続けるイソルダを見ている見物人達が口々に言いだした。


「このまま続けたんじゃ、そのうち捕まっちまうかもな。ぼうず、あの女を止めてこい」


 スコルは今度は僕の肩を押してイソルダの方に近づける。


「僕が止めるんですか?」


 僕は彼女に近づくのは遠慮したい。話しかけた途端、あの金棒で叩かれるんじゃないだろうか。そんな事になったら無事じゃ済まない。


「お前さんのせいであんな事をしてるんだから、お前さんが止めるんだよ」


 スコルは僕に押しつけてきた。えぇい、こうなったら仕方がない。僕は覚悟を決めてイソルダに声をかけた。


「イソルダ!もう十分あなたの実力はわかりました!もう止めてください!」


 金棒が風を切る音に負けないように僕は大声を出した。それが聞こえたようで、イソルダはピタリと動きを止めて僕を見る。


「あたいを雇うかい?」


 イソルダが僕に聞いてきた。僕はスコルの方を振り返ると、彼は頷いた。スコルのお許しが出たって事だろう。


「わかりました。あなたを雇いますよ」


 僕はため息をついてそう言った。なんとも強引な雇われ方をする傭兵もいたものだ。

これで仲間が三人

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