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第18話 傭兵2

次の傭兵探し

「自己紹介がまだだったな。俺はスコル。こっちはエリスとイオだ。よろしく頼むぜ」


 酒場を出たところで思い出したようにスコルが言った。ディドからは聞かれなかったけど、彼にしてみれば僕達が誰であろうと関係ないのかもしれない。お金さえもらえれば、どんな事でもやってのけるってとこだろうか。ディドは弓と矢、それに剣を持って僕達と歩いている。


「どうぞよろしく」


「よろしくぅ」


 歩きながらディドとエリスが挨拶を交わしている。ディドは無精ひげを生やしていて粗野な印象だったけど、言葉使いも丁寧だし物腰も柔らかい。僕の傭兵に対する印象はだいぶ偏見が入っていたみたいだ。喧嘩っ早い乱暴者がなるものだと思っていた。もしかしたら彼が特別なのかもしれないけど。


「ディドはどれくらい傭兵をやっているんですか?」


 僕はディドに聞いてみた。彼は若者って見た目じゃないから、結構長い事傭兵という仕事を続けているんじゃないだろうか。長ければ長い程それだけ実力と経験があるって事だから聞いてみたい。


「五十年はやっていますよ。人間にしてみれば、なかなかの長さでしょう。イオは魔術師になって長いんですか?」


 ディドは丁寧に答えてくれた。五十年か、僕の年齢よりも遥かに上だ。それだけ長いなら彼が戦うのを見るまでもなく、実力を信用していいかもしれない。それにしても彼は僕の事も一人前の魔術師と思ってくれているみたいだけど、ここは訂正しておかないといけない


「いやぁ、僕はまだ見習いなんですよ。スコルの弟子なんです。残念ながらスコルやエリスに比べれば、まだまだひよっこなんですよ」


 僕は正直に言った。きちんとした魔術を教えてもらうようになってまだ一年にもならない。スコルもよく、僕なんか素人に毛が生えた程度のものだって言っている。


「ほぅ、師匠の戦に付き合わされているという事ですか。弟子もなかなか大変ですね」


 ディドは同情するように言ってくれた。こんな事を言ってくれるなんて、なかなかいいエルフじゃないか。戦に巻き込まれたのは、ガラテア達に会いに行くべきだと言った僕の自業自得という見方もあるけど。


「わかってくれますか」


「お前ら何勝手な事を言ってやがるんだ。ディド、さっさと案内してくれ」


 自分の事を話していると聞きつけてスコルが口を挟んできた。


「もうすぐ着きますよ」


 ディドが指差した先は一軒の鍛冶屋と思しき店だった。


 その店からはカーンカーンと何かを叩く音が聞こえてくる。剣か鎧か、とにかく何かを作っているみたいだ。そして店の中に何人かいるのは僕よりも背の低いずんぐりむっくりとした体型の豊かな髭をたくわえたドワーフ達だった。


「やぁ、コルガはいますか?」


 ディドは店先にいたドワーフに声をかけた。


「コルガは中にいるはずだ。入って探してみてくれ」


 親指で店の中を差してドワーフが言った。僕達はその言葉に従って中に入ってみる。中にも幾人もドワーフがいる。みんな忙しそうに剣を研いだり、鎧を磨いたり、革をなめしたり。赤く熱された金属を槌で叩いているドワーフもいる。みんな顔の大半が髭で覆われていて、誰が誰やら区別がつかない。


 ディドは目的のドワーフを見つけたようで、鎧を磨いているドワーフに近づいていった。


「コルガ。話があるのですが、ちょっといいですか?」


 そのドワーフはチラリとディドの方を見るとこっくりと頷いて鎧を磨いていた手を止めた。ディドがドワーフと一緒に僕達の方に戻ってくる。ディドと並んでいると、ドワーフの小ささが際立つようだ。でも、背は小さいけど腕なんか僕の倍はありそうな太さだ。小さいからって甘く見ちゃいけないのかもしれない。


「こちらのドワーフはコルガという者です。鍛冶屋にいますが、れっきとした傭兵ですよ」


 ディドがドワーフを紹介してくれた。コルガと呼ばれたドワーフはじっと僕達の方を見て口を開かない。


「ドワーフの傭兵か」


 スコルが呟いた。


「そうです。コルガ、こちらのスコル達が腕の立つ傭兵を探していらっしゃいます。わたしはもう雇われているのですが、一緒にどうですか?」


 ディドはコルガに話しかけている。コルガはぼそぼそと何か呟いているようだけど、僕達まで声は届かない。


「金額はどうなるのかと言っています。どうされますか、スコル?別個、コルガと交渉なさいますか?彼はわたしと同額ならいいと言っていますが」


 コルガの声に耳を傾けていたディドが僕達の方に向き直って、コルガの代わりにスコルに話しかけた。


「金貨五十枚か。そいつがそれでいいってんなら雇おうじゃないか。ディドは信用しているみたいだしな。それにしても……」


 スコルはそう言ってディドと僕達を店の隅に引っ張っていく。コルガに聞かれたくない事があるらしい。


「あのドワーフはどうかしたのか?」


 スコルはチラリとコルガの方を見て言った。


「彼ですか?初めてのお客にはいつもああなんですよ。人見知りの恥ずかしがり屋なんです」


 ディドにとってはいつもの事らしい。平然とそう言った。


「人見知りで恥ずかしがりの傭兵ですか……」


 僕は思わず口を開いてしまった。そんな事で傭兵ってやっていけるんだろうか。恥ずかしいからって戦の時に後ろに引っ込んだりしないよね。少し不安だ。僕は顔をしかめていたかもしれない


「おっと、イオ。そんな事で偏見を持ってはいけません。たとえそうであろうとも腕が立つのは確かです。わたしが保証しますよ」


 僕の考えを読んだようにディドが指摘した。彼がそう言うなら大丈夫なんだろう、と思う事にしよう。コルガの戦いぶりを見るまでは心の底から頼りにすることはできないけど。


「いいじゃない、彼。お髭がチャーミングなドワーフね」


 エリスはそう言って一人ぽつんと待っているコルガに笑顔を向ける。するとコルガは音を立てるような勢いで顔を真っ赤にして目を逸らした。僕も最初のうちは彼女の笑顔を見るだけで心臓の鼓動が速くなったものだ。今ではだいぶ慣れてしまったけど。僕はコルガの反応がおかしくてクスリと笑ってしまった。


「おいおい、あんまりからかうなよ。あいつが気を悪くしちまったらどうする?」


 そう言うスコルも口元が緩んでいる。僕は笑ってしまったからスコルの事を責める事もできない。


「コルガはそんな事気にしませんよ。何にせよ彼も加わるという事で決まりですね?」


 ディドがスコルに確認する。


「あぁ、決まりだ」


 スコルが頷いた。これでディドにコルガ、二人の仲間が増えたわけだ。


「コルガ!戦の準備をしてきてください」


 ディドはコルガに声をかけた。それを聞いたコルガは頷いて何か呟くと店の奥へと消えてしまった。


 僕達はしばらく鍛冶屋の前で待つ事にした。やがて出てきたコルガは何やら重そうな袋を背負って、大きな両刃の斧も持っている。斧は鈍い光を放っていて、新品じゃない使い込んだ感じがした。これで今まで何人もの敵の首でも刎ねてきたんだろうか。僕は嫌な光景が頭に浮かんできて思わず身震いしてしまった。この斧が自分に向けられるものじゃなくてよかった。あまり変な想像はしないようにしよう。


「さて、どうしますか?まだ傭兵を探しますか?」


 ディドがスコルに声をかけた。僕としてはディドとコルガだけじゃ心許ない気がするけど、スコルはどう思っているんだろうか。


「そうだな……」


 呟いて首を捻るスコル。すると鍛冶屋の前で立ち止まっていた僕達にふいに誰かが声をかけてきた。


「あんた達傭兵を探してるんだって?」

声をかけてきたのは

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