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第17話 傭兵1

仲間を探しに来たイオ達

 少し歩くと目的の酒場らしき建物が見えてきた。その酒場の周りには武器や防具の店が立ち並んでいて、いかにも傭兵御用達の酒場といった感じ。辺りを歩くさまざまな種族も鎧を着込んだ者が目立っていて、ただの通行人じゃなさそう。


「あの酒場ですかね?」


 僕は酒場を指差した。


「あぁ、そうだろうな」


 スコルは頷いて酒場に入っていこうとするけど、エリスが彼の腕を掴んで止める。


「ちょっと待って。入る前に聞いておきたいんだけど、あんた傭兵は何人ぐらい雇うつもりなの?」


「そうだな。俺としちゃ、少数精鋭でいきたいところだな。二、三人の百人力の奴がいいな」


 スコルは立ち止まってエリスに答える。


「そう。腕の立つ傭兵ってなると結構値が張ると思うんだけど、それでも構わないの?」


 さらにエリスが尋ねる。


「別に俺達は文無しってわけじゃあるまいし、ちょっと値が張るくらいなら問題ないさ。それに交渉次第では、そんなに出さなくても済むかもな」


 スコルにしては太っ腹じゃないか。まぁ、交渉してなるべく安く済まそうとしているのかもしれないけれど。


「ぼうず、注意するのを忘れるところだった。傭兵と話す時はあんまり余計な事は言うなよ。俺達に軍資金がたんまりあるとわかったら、たかってくる奴もいるかもしれないからな」


 僕が口を滑らせて交渉がこじれるのを心配しているんだろう。スコルは僕を見ながら言った。


「わかりました。余計な口を挟まないように気をつけますよ」


 傭兵を雇った事なんてないから、どんな話しをするのか僕にはわからない。何か言いたくなるかもしれないけど、なるべく我慢する事にしよう。交渉はスコルとエリスに任せておけばいいや。


「よし、入るぞ」


 そう言ってスコルは酒場に入った。僕とエリスもそれに続く。


 酒場の中はお客でごった返していた。ここはエルフが多いみたい。僕の想像では傭兵って言うと、周囲を威嚇するように鋭い視線を放っているんじゃないかと思っていた。いついかなる時も用心を怠らないというか、そんな緊張感が漂った人達なんじゃないかと。でも、この酒場の中にいる人達には、今のところ緊張感のかけらもない。皆お酒を飲んでいたり、食事をしていたりで、僕の住んでいる小屋の近くにある村の酒場と雰囲気はそんなに変わらないかもしれない。もちろん見た目はただの村人とは違う。シャツとズボンを着たエルフもいるけど、あれば酒場の店員だろう。コップや料理を両手に持ってテーブルの間を縫って歩いている。革や金属でできた鎧を着ていたり、武器を背負っていたりと傭兵らしい格好のお客が大半。武器屋の主人が言っていた通り、ここにはそういう人達が集まっているらしい。


「団体さんには声をかける必要はないかな。しかし、こりゃ見当がつかないな」


 スコルが酒場の中を見回しながら独り言のように呟いた。どうも傭兵の多さに驚いているみたいだ。誰が僕達が必要としている人物なのか、手当たり次第に声をかけるわけにもいかない。


「まずはこの酒場の人にでも聞いてみましょうよ」


 困惑しているスコルにエリスが提案した。


「それもそうだな」


 スコルは頷いてカウンターの中でお客に酒を注いでいる店員に向かっていった。店員は見た目は若いエルフといった感じ。


「なぁ、俺達ちょっと傭兵を探しているんだが、聞いてもいいかい?」


 スコルが店員に声をかけた。


「どうぞ、なんなりと。お答えできる事はお教えしますよ」


 店員のエルフは愛想良く笑いながら言った。


「人数は少なくていいんだが、腕の立つ奴を探しててな。できれば戦闘経験の豊富な奴がいいな」


 スコルが言った。


「個人で傭兵している者もおりますよ。ここはエルフの傭兵がよく利用しておりましてね。腕が立って経験豊富となりますと、そうですね……」


 店員はそう言ってしばらく店内を見回して、


「ディド!あなたにお客様ですよ!」


 と店にいた傭兵の一人に声をかけた。ディドと呼ばれた傭兵は片手を上げる。


「あそこにいるのはディドという弓の使い手です。どうぞ、行って話してみてください」


 店員の言葉を聞いて僕達は手を上げた傭兵のいるテーブルに近づいた。


 耳がとがっていて端正な顔立ち。彼はエルフみたいだ。ただ、エルフにしては珍しく無精ひげを生やしている。僕が今まで見てきたエルフは小奇麗にしているエルフが大半だった。オルクスって魔術師協会の一員のエルフも髭を生やしていたけど、きちんと整えて威厳のある髭って感じだった。このディドはまさに無精ひげって感じで、少し粗野な印象がある。年齢もそこそこいっているみたいで壮年って感じ。でも、若過ぎず年寄り過ぎず、経験を感じさせる佇まい。このエルフなら頼りになりそうな気がする。


「わたしはディド。一介の傭兵です。わたしにご用があるようで」


 ディドはそう言いながら僕達に椅子をすすめた。僕達三人が椅子に座るとスコルが話し始めた。


「そうなんだ。ちょっとした戦があってな。加勢してくれる傭兵を探していたんだが、さっきの店員があんたを紹介してくれたんだ」


「戦とは?」


 ディドは興味深そうにスコルに尋ねる


「ここじゃなくてオークの次元でな。部族間で揉めてるんだ。俺達は魔術師でな、その戦をどうにかしろって頼まれてるんだ。俺達だけじゃ少し頭数が足りないと思ってな。人数は少なくていいから腕の立つ奴を探してたんだ」


 スコルが説明する。僕達三人だけじゃ数が足りないなんてものじゃないと思うけど、ディドは気にしていないみたい。


「魔術師ですか。通りでオークに人間に吸血鬼、変わった組み合わせだと思いました。それにしてもオークの戦ですか。それは歯ごたえがありそうですね」


 僕達の組み合わせの方がよっぽど興味深いらしい。それにしても見た目だけで僕達の種族を言い当てるなんて、なかなか鋭い観察眼なんじゃないだろうか。


「ところで、あんたいくらぐらいで加勢してくれるんだ。こっちも出せる金額には限りがあるんでな。あんたがあんまり高額なら、縁がなかったって事になっちまうんだが」


 ずばり言いにくそうな事をスコルはずけずけと聞いた。もうちょっと言い方ってものがありそうなものだけど、これが大事な事なのは間違いない。


「そうですね。わたしも傭兵として稼がなければなりませんから、安くはできません。金貨五十枚というところでしょうか」


 ディドは言った。金貨五十枚か。ガラテア達から千五百枚せしめた僕達にしてみれば、それほど高くない気がする。でも、傭兵を雇う時の適正価格なんて僕には見当もつかない。


「よし、乗った。金貨五十枚であんたを雇うぜ」


 ディドの言った金額でスコルは即決。彼は片手を差し出した。スコルとディドは握手をする。これで僕達の仲間が一人増えたわけだけど、ディドは頼りにできるんだろうか。傭兵をやっているくらいだから、一般人よりも強いとは思う。


「彼の実力は見てないですけど、いいんですか?」


 僕はこっそりとエリスに話しかけた。


「エルフって魔術の適性があるだけじゃなくて、弓の名手としても有名なのよ。エルフで弓の使い手ってだけで、雇って損はないんだから。きっと力になってくれるわ」


 エリスも声を潜めて答えてくれる。そうなのか。スコルもエリスもディドの腕を信用しているみたいだし、僕の心配は的外れかな。


「ところで、他にも腕の立つ奴は知らないか?あと何人か雇っておきたいんだ」


 スコルはディドに話しかけた。


「うーん、わたしの知っている者でいいならご案内しましょう」


 少しの間考え込んだディドはそう言って席を立つ。僕達もそれに続いた。

ディドが仲間に

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