表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/69

第16話 次の戦

エリスの活躍でイオ達の勝利

 僕とスコル目がけて飛んできたオークを浮遊の術を使って受け止める。そのオークは体重が百キロを超えているかもしれない大きな体のオークだ。だけど、僕だってスコルの弟子として日々魔術の修行をしているんだから、これくらいは簡単にできる。空中でオークをこちらに向けると、彼はなんとか浮遊の術から逃れようともがいている。


「よぉ、どうした?女一人にコテンパンにやられっぱなしか?」


 スコルはそのオークににんまりと笑いながら話しかけた。


「うるせぇ!お前ら魔術師だな!武器を持ってないはずだ」


 オークは僕達を指差しながらわめいた。エリスに一方的にやられて、こんな事を言われたら怒りたくもなるだろう。


「このオークはどうしますか?」


 空中で僕達を口汚く罵るオークの処遇をスコルに尋ねてみた。


「エリスに返してやれ」


「わかりました。エリス!」


 スコルの返事を聞いた僕はエリスの名を呼ぶ。彼女はもう他のオークをのしてしまったみたいだ。みんな仲良く地面に倒れている。彼女がこちらを向くと、僕はふんわりとオークを彼女の方に飛ばした。そのまま彼女の手の届く範囲に入った途端、エリスの拳が振り下ろされてオークに直撃。哀れオークは地面に落下して静かになった。つくづくエリスが味方でよかったと思う。オークの戦士十人を簡単に倒してしまうなんて。


 エリスは体のほこりを払いながら、こちらに戻ってくる。


「いやぁ、思っていたより楽勝でしたね」


 エリスはどうかわからないけど、僕は何もしていないに等しいから楽勝だと思えた。


「いい運動になったわ」


 そう言ってエリスはニッコリ笑う。彼女もたいして苦労したとは思っていないみたいだ。運動不足の解消がてらに終わらせてしまったんだから。


 一方、スコルは地面に倒れて呻いているオークに歩み寄って、何やら話しかけている。


「俺達の実力はわかったよな?女一人にやられたってちゃんと報告しろよ。次の戦にはもっと数を集めるか、強い奴を出してくるんだな。それとももう諦めちまうか?」


「……次はこんな程度じゃないぞ。覚えてやがれ」


 話しかけられたオークはかすれた声で答えた。


「戦を止める気はないみたいだな。ま、用意ができたら使いでも送ってくれ」


 そう言ってスコルはスタスタと戻ってきた。


「あんな事言っていいんですか?あのオーク達に恨まれませんかね?」


 僕はスコルが言った言葉で僕が逆恨みされないかひやひやした。


「気にするなって。あのオークどもは殺されなかった事を感謝してほしいくらいだぜ」


 確かにこれほどの実力差があってもエリスは手心を加えているみたいで、しばらく動けなくはしても殺したりはしていないらしい。戦なんだから下手をしたら命を落としていたかもしれない。僕だってオークの無残な死体を見たいなんて思わない。感謝するかどうかはともかく、命を奪わなかった事は確かだ。


「これからどうするんですか?」


「次の戦が始まるまで時間があるだろうからな。一旦村に戻るか」


 スコルが言ってタセンの村の方に歩き出す。もうノーザの村の戦士達には興味がないみたいだ。いつまでもここにいると起きてきたオーク達に襲われるかもしれない。僕は背後を気にしつつスコルについて行った。


「あっさり勝っちゃいましたけど、次もあるんですか?」


 僕はこれで戦が終わらないかと期待してスコルに聞いてみた。


「さっきの奴も諦める気はなかったみたいだしな。まだまだ先は長いと思うぜ。お前さんにも役に立ってもらう時がくるだろうから、魔力はちゃんと蓄えておけよ」


 スコルの返事は僕の期待に反したものだった。これで終わりじゃないという事はわかってたんだけど、戦をやりたくないから甘い期待をしたっていいじゃないか。


「あたしにも相手にできるのは限度があるからね。次はスコルとイオも手伝ってもらう事になりそう」


 エリスの言葉を聞いて、僕は提案してみる。


「まだ僕達だけで戦をするんですか?ガラテア達に加勢をお願いしたら……」


 そこまで言った時にスコルが口を挟んでくる。


「親父に頭を下げてお願いするなんてのはあまり気が進まんな。だが、次も俺達だけで、というのも厳しいかもな」


 腕を組んで考え込んでいるスコル。彼はガラテアに加勢をお願いするのは嫌がっている。意地でも手を借りずにやり遂げようという気なんだろう。


「じゃあ、どうするんですか?」


 しばらく無言で考えているスコルに尋ねてみた。僕にはいい選択肢は思い付かない。ガラテア達に助けてもらうか、戦で多勢に無勢でやられてしまうか。やられてしまうくらいなら、師匠の意に反してでも助けを借りたいところだ。


「親父達からぶんどった金があるじゃないか。あれを少し使って傭兵でも雇うか」


 スコルが名案を思い付いたとばかりに腕を解いて口を開いた。


「え、あのお金を使うんですか?」


 スコルがあのお金に手をつけると言い出したのが意外な気がする。せっかくせしめたお金なんだから、後生大事にするかと思っていた。


「あの金は俺達のものなんだから、どう使おうが勝手だろ?」


 スコルがそう言った。お金を使って自分達の身の安全を図れるなら、僕は別に惜しくはない。他にいい使い道も思い付かないし。


 話している内にタセンの村に到着。村の入り口にいた門番の一人が僕達の姿を見ると駆け寄ってきた。


「魔術師様、戦の首尾はどうでした?」


 開口一番、門番が尋ねてくる。多分僕達が戻ってきたら聞くように言いつけられていたんだろう。


「今回は俺達の勝ちだよ。親父達に伝えておいてくれ。ちょっと出かけてくるが、多分次の戦には間に合うように戻ってこれるって事もな」


 スコルが答える。


「わかりました。それでは」


 それを聞くと門番はそう言って族長の家の方へ駆けていく。


「出かけるってどこにです?傭兵を雇うんじゃなかったんですか?」


 僕はてっきりこの村で手頃なオークの戦士でも雇うのかと思っていたからスコルに聞いた。


「傭兵って言ってもオークだとは言ってないだろうが。この村の奴らを雇ったら、親父に加勢をお願いしたのと変わらないだろ。せっかくなんだからエルフのマーケットにでも行って探すとしようや」


 とスコルが答えた。マーケットか、しばらく行っていないな。あそこは僕も好きだから反対する理由はない。


「それはいい考えですね!」


 僕の言葉を聞いてスコルは頷く。


「というわけで、エリス」


 エリスの方を向いてスコルが声をかける。彼女に次元移動の術を使ってもらうというわけだ。


「わかってるわよ、エルフのマーケットね」


 エリスが僕とスコルの腕を掴むと、僕の目に映っていたタセンの村の入り口の風景は溶けるように消えた。僕達の方を見ていた残った門番はさぞかし驚いた事だろう。『ボワン!』という音と共に僕達の姿が消えたんだから。


 次の瞬間、僕達はエルフのマーケットに立っていた。以前に来た時と変わらず、いろんな店が立ち並び、いろんな種族が行き交っている。他の次元でも有名な一大交易地点で、ここにくればたいていの物は手に入るって話だ。


 僕達はしばらく歩いて武具を扱っている店が集まる一角に来た。


「よぅ、ご主人。この辺りで傭兵を探してるんだが、どこに行ったら見つかる?」


 見事な剣が飾ってある店の前で客を呼び込んでいた主人と思しきエルフにスコルが尋ねる。


「傭兵かい。この先の酒場によくいるそうだけどね。それよりも武器はどうだい?」


 そのエルフは嫌な顔一つせずに教えてくれた。さすがエルフは友好的だと言われているだけある。


「酒場か、ありがとよ。武器はまた今度な」


 スコルはそう言ってエルフが指し示した方に歩き出す。僕とエリスもそれに続いた。

どんな傭兵を雇うのか

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ