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第17話 逃走2

スコルと共に逃走

 僕は一瞬戸口に立つオークを見る。あいつもスコルの大胆な逃走に呆気にとられたらしく目を丸くしていた。僕もその隙に開いた穴から小屋を抜け出して走り出す。小屋を壊したスコルに対する文句を考える暇もない。とにかく今は逃げるしかない。


 走るスコルの背中が木々の間からチラリと見えた。弟子を置いてどこに行こうとしているのやら。それとも僕がちゃんと付いて来ると信じ切っているんだろうか。彼に追いつく為に必死になって足を動かす。


 でも、なかなかスコルに追いつけない。さっき走った疲れが残っているんだろう。このままじゃ、どんどん離されてしまいそうだ。と思うと、彼が後ろを振り返る。僕が追いつけないと見て彼は少し足を緩めてくれたようだ。


 やっと追いついた僕は彼の横に並んで走りながら、息も絶え絶えに話しかける。走りながら喋るのは一苦労だ。舌を噛まないように気を付けないと。


「一体……どこに……ハァフゥ、向かってるんですか?」


 スコルはまだまだ体力に余裕がありそうだ。チラリと僕の方を見て、規則正しく息をしながら問い返してきた。


「お前さん……最初に……エリスに……会ったのは……どこだ?」


 えっと、こんな時にそんな事を聞いてどうするんだろう。走るのに精一杯の僕の頭の中はグチャグチャ。どこだったっけ?確か彼女に初めて会ったのは……。


「早く言え!」


 スコルが厳しい声で言った。まったくそんなに急かさないで欲しいな。僕がヘトヘトなのは見れば分かるだろうに。エリスに会ったのは、そう釣りをしていた時だ。休みをもらって誰も来ない川の上流でのんびりと釣りをしていると彼女が現れた。混乱する頭の底からようやくその記憶を引き上げて、僕は彼に伝えた。


「ハァハァ、川の……上流です」


「そこに行くぞ!」


 聞くや否やスコルはそう言って走るスピードを上げた。少し方向を変えて川に向かう。僕は彼に引き離されながらも付いていった。もしこの状況を乗り切る事ができたなら、修行の一環として運動を提案してみよう。今のようにいざと言う時にきっと役に立つだろう。スコルも納得してくれるはずだ。


 そんな事を考えながら走り続ける。川を流れる水の音が聞こえ始めると、今度は川に沿って遡って行く。やがて見覚えのある場所に辿り着いた。


 僕はその場所に着くと足を止めた。肩で息をしながら彼に声をかける。


「スコル!……この……辺りです……ハァハァ」


 もう限界だ。足は言う事を聞かず、肺は空気を求めて大忙し。こんな状態じゃまともに魔術を使う事もできないだろう。ここであのオークに追いつかれたら万事休すだ。僕は助けを求めるようにスコルの方を見る。


 一方スコルは僕の少し先を走っていたけど、声をかけられて急停止。彼はさすがオークと言うべきか、走り疲れた様子もない。この分だといつまでも走っていられるんじゃないかな。きっと人間よりも頑丈で体力もあるんだろう。彼は僕の方に歩きながら近寄って来た。そして辺りを見回すと大きな声を出した。


「エリース!来てくれ!」


 彼の声の後に聞こえてくるのは川の流れる音に鳥の声。エリスを呼んでいる様だけど、はたして来てくれるんだろうか?その後スコルは何も言わないし、僕は呼吸をするのに忙しい。僕が無言の時間に耐え切れなくなってきて、大きく息をしながらもスコルに何か言おうとした瞬間。


「ボワン!」


 何度か聞いた事のある音がしてエリスが現れた。驚いた僕は一瞬呼吸が止まった。スコルは平然としている。


「ばぁ!驚いた?」


 エリスは顔の横で両手を広げながら僕達に笑いかける。いやぁ、驚いた。彼女にそれを伝えたいけど、僕はまだ呼吸の方を優先したい。それでもなんとか彼女に微笑み返す。


「たちの悪い冗談はよしてくれ」


 スコルはしかめっ面をしながらエリスに言う。僕達の今の状況を知ってか知らずか、彼女のお茶目な態度が気に食わなかったんだろう。


「せっかく来てあげたのに、そんな事言うの?」


 エリスは拗ねたように頬を膨らましてみせる。まるで幼い少女が拗ねているようだ。僕は大きく息をしながら彼女の別の一面を垣間見た気分になった。


「悪かった。ちょいと急いでいるもんでな。許してくれ」


 スコルは降参といった感じで両手を上げて謝る。彼が素直に謝るなんてよほど焦っているのか、美女に弱いだけなのか。それを見たエリスは機嫌を直したようににこりと笑って言った。


「せっかちなんだから」


 ようやく息の整ってきた僕はエリスに話しかける。彼女には久しぶりに会ったのにこんな疲れ切った姿を見せなきゃいけないなんて情けないったらない。


「ハァ……僕達を、助けてくれるんですか?」


「そういう事」


 僕に片目をつぶりながら彼女が短く言う。一体どうやってここに来たのかは分からないけど、エリスは僕達を助ける為に来てくれたようだ。これぞ天の助けと言うものだ。


「イーオー、スコール!逃げたって無駄だぞ!」


 その時、あのオークの声が聞こえてきた。追いついてきたらしい。僕は慌てて走り出そうとするけど、それをエリスに止められた。


「さ、こっちに来て」


 エリスは左手でスコルの腕を、右手で僕の腕を掴んだ。


「お前は……」


 声がした方を見ると例のオークがこちらを見ている。エリスがいる事に気が付いたようだ。


「バイバイ!」


 とエリスの声が聞こえる。途端に周りの風景が溶けた様にグニャリ。一瞬宙に浮いている感覚がした。驚いた僕が次に周りを見渡すと、まったく知らない場所に立っていた。

イオ達の行先は?

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