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第15話 襲撃

イオが食料調達に出かけると

 僕は発火の術が成功した事で自信が湧いて来て、また魔術の修行にのめり込む様になった。エリスの事を考えなくなったかと言うとそうでもないけど、以前の様にぼんやりする事は無くなった。スコルに叱られる事も減って僕はほっとした。


 その日、僕は食料が底を尽きそうなのに気付いたので、取りに出かける事にした。村に買いに行っても良いけど、スコルが見つかりそうになった一件以来、お酒を買う時ぐらいにしか立ち寄らない様にしている。幻影の術で誤魔化せるからって、無闇に目立つ必要も無いだろう。そう思ってなるべく自分で調達しているんだ。出かける前に彼に一言声をかけた。


「スコル、ちょっと食料を取りに行ってきます」


 彼は僕の方をちらっと見ると返事をした。


「あぁ、たまにはうまいもんでも取って来てくれ」


 僕が調達に出かける時よく耳にする返事だった。でも彼がおいしいと思う物って何なんだろうか。大抵の物は食べてしまうのでよく分からないや。


「よくそう言いますけど、僕が取って来た食料をいつも残さず食べてるじゃないですか」


 僕がそう言うと彼が、


「そりゃあ、どんな物でも残しちゃ罰が当たるってもんだろうが。それとも俺に飢え死にしろって言うのか?」


 と返してきた。今まで嫌々食べていたんだろうか。飢え死にはして欲しくないけど、別にゲテモノを食べさせた覚えはないんだけどな。


「そんな事言ってませんよ。ただ、あなたは好き嫌いがなさそうだったから……」


 と言いかけた僕の言葉を遮って彼が言う。


「こんな所で食わず嫌いができるかよ。ちっとはこっちの身にもなってみろよ。弟子に付き合って好きでもない物を文句も言わずに食ってやってるんだからな」


 今まさに文句を言っているじゃないか。まったく、食料を取ってくるこっちの身にもなって欲しいものだ。思わず僕は皮肉を言いたくなって小さな声で呟いた。


「文句も言わずにですか……」


 彼はその呟きが聞こえたんだろう。僕を見ながらやけに静かに言った。


「何か言ったか?」


 口調こそ静かだけど、怒鳴り散らすよりも怒りを溜めこんでいる分こっちの方が怖い。僕は慌てて彼をこれ以上怒らせないように言い繕う。彼を怒らせて良い事なんか一つも無いんだから。


「何でも無いですよ。取って来ますけど、期待はしないでくださいね」


 僕が下手に出たのを見て、彼は溜飲を下げたらしい。興味無さそうに言った。


「期待なんかしてないよ。言ってみただけさ」


 僕はその言葉を聞いてから戸を開けて外に出た。


 いつもの様に置いてあった籠を手にして食料を取りに出かける。いつも果物や木の実を取っているけど、たまには魚を取るもの良いかも知れない。そう思い立って僕は川の方に歩き始める。川に近づいてくると、そう言えばエリスに会ったのはこの川だったのを思い出す。もっと上流の方だったけど、川原で釣りをしていると彼女が現れたんだ。美しい吸血鬼。また来てくれないかなぁ。また会いたいなぁ、と考えながら僕は川面に目を凝らして魚影を探し始めた。


 すぐに魚を発見。僕は浮遊の術を使ってその魚を釣り上げようとする。時間があればのんびりと釣り竿で釣るのも悪くないけど、今日はそんなに時間をかけていられない。いざ魔術を使おうとした瞬間。


「ボワン!」


 と、どこかで聞いた事のある音が近くでした。驚いて音のした方を見る。なんとそこにはまたオークが立っていた。多分……オークなんだろう。スコルに似た見た目をしていた。スコルよりも体格は小さいけど、がっしりしていて、いくぶん色の浅い緑色の肌に金色の瞳に牙。もし師匠に会っていなければ取り乱したかも知れないけど、よく見る姿だったから僕は案外冷静だった。


 そのオークが僕に近づいて来て話しかけてきた。


「お前、この辺に住んでる奴か?」


 いきなりお前なんて不躾だなと思ったものの、スコルだって最初に会った時同じ様な態度だった事を思い出した。オークってこういうものの言い方が普通なのかも知れない。僕は腹を立てる事も無く、彼に答えた。


「そうですけど。えっと、どなたですか?」


 僕は彼が何者か気になって聞いてみたけど、


「名乗る程の者じゃないさ」


 と返された。どういう反応をすれば良いのやら。単に名前を知られたくないのか、別の理由があるのか。とにかくまた彼に質問してみる。


「何かご用ですか?」


「あぁ、この辺りに魔術師見習いのイオって奴が居るって聞いたんだが、知ってるか?奴に会いたいんだ」


 へぇ、僕に会いに来たオークはこれで二人目だ。どこかで噂になるほどの事をしたかな?彼も僕に弟子にならないか、なんて言い出すんじゃないだろうか。そんな事を考えながら彼に答える。


「それ僕ですよ。僕に会いに来たんですか?」


「そういう事になるな」


 彼は途端に僕をじろじろと値踏みするかのように見始めた。あまり良い気分はしないなぁ。


「どういったご用件ですか?」


 彼はその後何も言わなかったので、僕の方から切り出した。何の用だろう?


「別に大した事じゃないさ。それよりも聞きたいんだが、師匠はいるよな?お前の師匠は?」


 と僕の師匠について聞いてきた。また僕じゃなくてスコルに会いに来たんだろうか。エリスと違って彼を案内してあげたい気にはならない。僕は小屋の方向を指差しながら言う。


「師匠ですか?彼なら少し離れた小屋に居ますよ」


「そうじゃなくて、師匠はどこのどいつだ?」


 僕の返答が見当違いだったんだろう。彼は舌打ちしながら言った。なんだか良く分からないけど、僕の師匠が誰なのか知りたがっているようだ。まぁ、彼もオークなんだから師匠がオークだって事を言っても何も問題無いだろう、そう思って答える。


「スコルって名前のオークですよ。オーカーに居たって言ってましたけど。あなたもオークですよね?」


「見りゃわかるがな。そうか……」


 と言うと彼はにんまりと笑った。オークの笑顔ってあんまり良い気分はしないと思ってたけど、彼の場合は尚更そうだった。何が楽しくて笑っているのか、どうも嫌な感じの笑い方だった。僕はその嫌な気分を顔に出さない様に努めて彼に問いかけた。


「どうかしましたか?」


「お前は本当に奴の弟子ってわけだ?」


 念を押す様に彼は言った。


「そうですね。スコルに魔術を習っていますから」


 スコルの弟子である事は間違い無い。僕がそう答えると彼はますます歯を剥きだして笑い、こう言った。


「だったら、運が悪かったな。お前に恨みは無いが、ちょいと痛い目に逢ってもらうぜ」


 彼の言った言葉の意味が一瞬分からなかった。僕を痛めつけるって?訳が分からず聞き返そうとした。


「どういう……」


「お前に事情を話す気は無い。奴の弟子だから痛い目に逢うってだけだ!」


 僕が言い終える前に、彼は言いながら腕を振り上げる。すると炎の塊が僕の眼前に現れた。

イオはどうなるのか

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