第一話~おかしい(?)日常~
「う〜ん、今日も可愛い!」
人形の前で一人悶える ジャージ姿の女性。両手で顔を隠して、自作の着せ替え服の出来栄えの良さを喜んでいる。
「いや、私にとっては迷惑事なんだけど……」
冷静に言葉を返す人形。
「可愛い人形にこんな可愛い服を作れる私はなんて罪深いのだろう」
人形の言葉が聞こえてないのか、最後は自分の器用さを口にした。
「あなたという人は、毎度毎度言っているけど、怖くないの!」
「えっ? 何が?」
「なに、私が当たり前のことを言っているのに、私の発言がおかしいと受け取っているのよ!」
「???」
「ダメだわ……。あのね、普通 人形がしゃべったらおかしいと思わない。いや、確かにお店に話せる人形はあるけど、私のように人間と会話できる人形があると思う。普通なら、ホラーだよ! 呪いの人形だよ! みんな怖がるわ! 次の日にはゴミの日に出されるし、お祓いされるのが普通よ!」
「そんなに私、おかしい?」
「その通りよ! 初めて会った一ヶ月前も目をキラキラさせながら、ゴミ捨て場から私を拾ってくるなんて……」
「当然よ! 目の前に可愛い人形があったんだから!」
「あなたには苦労させられるわ……。節約して稼いだお金のほとんどを私の着せ替え服につぎ込むなんて……」
人形である自身の理解の域を超えた女性の感覚には本当に苦労させられる。
「そういえば、次はメイド服を作ろうと思うのだけど、どういうのがいい? 西洋風? それともメイドカフェみたいのがいい?」
「……」
「やはり、可愛く、動物系で攻めていく! う〜ん、猫、ウサギ。どれも良い!」
「……」
怖がられる人形なのに、逆に怖がる人形。笑い話で済ませるべきなのか。人形なのに頭が痛くなる、腹がキリキリする出来事が多すぎて、今日も私は彼女のいう可愛い姿で過ごす。
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