Deta.1 仁との出会い
新学期、東蓮寺高校の制服を着ている。
濃いバイオレット色使いに絹の新鮮な香りで充分自分の心を包んでいた。
それで、やっと、新しい学校にきたんだと、実感した。
今、駅で通学している。
よくわからないが、いろいろ複雑な経路で通わないといけない面倒な学校である。いったい誰が造ったか知りたいものだ。
“次は〜東蓮寺、東蓮寺です。お出口は〜・・・”との声にその駅を降りる。これから毎日通う場所だ。
改札出てすぐに真っすぐに広がる長い並木通りが素晴しい。
どうやら、駅が寺で覆われているようだ。
寺の中にある都市は古来この列島の伝統なのでそれほど驚かなかった。
つきあたりにラーメン屋が見える。暖簾には『TOKUGAWAMEN』の文字が書かれていた。さすがはT都、思わず笑みがこぼれた。
その匂い(におい)を嗅ぎながら正門に入った。そして、校舎内に入る。何もかも新鮮だった。
エントランス前に進学生新教室のビラを配っている先生から渡されて自分の教室が2−Kだとわかった。
なんだ…、最終組じゃん…と思いながら目的地へ向かった。
担任の誘導で体育館に行き、恒例の入学式を終えて、教室で早速、実力テストが行われた。
現数英理地歴の六教科の600点満点のテストで、楽々解けた。ここで解散し、帰ろうとした。
「お前、どこかで見たことある・・・ひょっとして紀乃か?」
帰ろうとした僕の背後をとり、突然の声掛けに驚いた。振り返ると赤髪の目立つ少年だった。
「え・・・うん。そうだけど、なんで知ってんの?」
「な〜んてウソウソ。俺は八神仁。こうやって、いろんな人に声を掛けている。でも、案外いい人いないんだよね。そうだ、君今日から初めてっしょ?今度案内してやる。」
そう言い残し彼は去った。いろんな人がいるのだなと思った。
こうして、ちょっと不思議な出会いをし、これ以降彼と接触する機会が増えてとりあえず友人関係に悩まないで済みそうだ。
しかし、この後僕の身元にとんでもないことが起きるとは、誰が想像しただろう。