6/168
温もり
「うぅ……寒いなあ」
僕は温かいリビングから寒い廊下へ出て、身震いしながらトイレに向かった。
冬の便座はどうにも冷たい。
夏の生温いべたっとした便座に比べればマシだ、と言うやつがいるかもしれないが、やはり独り身である僕としては、どちらかとしては温もりの方を求めてしまうのだ。
しかしこの展開は予想していなかったし、そこまでも求めていなかった。
「あ、やばい」
と思った時にはもうすでに遅かった。なぜなら心の準備もせずに、便座に腰を下ろし始めてしまっていたからだ。
尻が便座に触れた瞬間、あれ? と思った。
直後、僕は震えあがった。
【解説】
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
語り手が感じた違和感は、便座が冷たくなかったことだ。なぜ便座は冷えていなかったのか? 語り手は一人暮らしをしている。語り手の知らない誰かがいるのではないか? その可能性に気づいた瞬間、語り手はその意味で震え上がったのだ。