手助け
放課後、俺はクラスメートの皆本に「学校の屋上にきてほしい」と呼び出された。なんでも、相談したいことがあるらしい。
「やっぱり俺、朱子のことが忘れられねぇんだわ」
屋上につくと、皆本が柵に寄りかかりながら、ひとり黄昏ていた。
穏やかな風がふくなかで、夕焼けを背に、皆本はそんなことを口にした。
ちなみに朱子とは、皆本と別れた恋人のことだ。
「な、俺どうしたらいい? 教えてくれよ鷹橋」
皆本は、悲しい目をして俺にすがった。奴は自身の元を去った女に未練があるらしい。
「どうしたらいいって、お前の気持ちはどうなんだ。お前自身はどうしたいんだ?」
俺は皆本に問うた。奴は少しのあいだ口許を震わせていた。そして、
「俺は……彼女と一緒にいたい! 伝えてない気持ちがまだいっぱいあるんだ!」
と、心の底から出たように気持ちを吐露した。
そんな皆本の目には、うっすらと涙が溜まっていた。
「なら行動はひとつだろ」
俺は奴の背中を押した。奴はうん、と頷いた。
「ありがとな、鷹橋」
皆本は踏ん切りがつかなかったのだろう。別れた彼女のもとに逢いにいく勇気がなかったのだ。だから俺に相談した。
――数秒後、鈍い衝撃音が周囲に響いた。
【解説】
皆本の元恋人である朱子はもうすでにこの世にいない。“別れた”とは死に別れたことを意味していた。そして死んで自分の元を去った彼女に会いたくなった皆本は、屋上から飛び降りて自殺したのだった。




