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【書籍化】意味がわかると怖いお話・解説付き(370万PV達成!)  作者: 絢郷水沙


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見くびらないで

平成最後の投稿です。

 ある日の夕方の、とある家族の会話。母と息子が夕飯を食べている。


 母「こら! お皿を舐めるんじゃないって、いつも言っているでしょう。何度言ったら分かるの!」

息子「でも食べ終わってもちょっと残ってるじゃん。もったいないから残さず食べなさいって、ママはいつも言ってるじゃん」

 母「それとこれとは別よ。いい、再来年は小学生なのよ。しっかりとした食べ方を身につけなさい。わかった?」

息子「⋯⋯」

 母「返事は?」

息子「だって⋯⋯」


 と、ここで父親が帰宅してくる。


 父「ただいまー」

息子「あ、パパだ!」

 母「こら、まだ話の途中よ!」

息子「パパただいま!」

 父「おう、陽太(ようた)。ただいま〜」

 母「あなた、おかえりなさい」

 父「ただいま。あ、そうだ。陽太にいいもん買ってきたぞ。ほれ、大好きなカレーだ」

息子「やった、やった、やった! ねえ、今食べたい!」

 母「いま晩ごはん食べ終わったばかりでしょ。まったく陽太は本当にカレー好きなんだから。ところでカレーなんてどうしたのよ?」

 父「帰りにスーパー寄ったらなんか安売りしててさ、五個で二百円だってさ」

息子「ね〜食べたい、食べたい〜」

 母「それ安すぎない?」

息子「ねぇ、今たべたい〜」

 母「もう今日は終わり! 明日にしなさい。――あ、そうだ。明日は朝から佐伯(さえき)さんのお通夜(つや)で出かけるんだった。あなた、早く帰ってこれない?」

 父「ん、ああ、明日はいつもより早めに終わるから昼の三時頃には帰ってこれるぞ」

 母「そう⋯⋯――ねえ(よう)ちゃん、明日のお昼の時間、少しだけお留守番することになるけどできるよね?」

息子「お昼? じゃあその時カレー食べてもいい?」

 母「いいわよ。でもちゃんとできる?」

息子「うん! あのね、前に桃のやつもね、自分で開けられたよ」

 母「お留守番のことよ。できるの?」

息子「できるよ。見くびらないでよ!」

 母「はいはい。まったく、どこでそんな言葉を覚えたのやら」


【解説】

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 父親が買ってきたカレーはレトルトパックのカレーではなく、缶詰に入ったカレーです。最後に息子が『桃のやつもね、自分で開けられたよ』と言っているのがヒントでした。息子は以前、桃の缶詰を一人で開けられたことがあり、『ちゃんとできる?』と聞かれた際、それが留守番のことではなく缶詰のことだと勘違いして、そう言いました。

 そして明日はあいにく、両親は出かける用事があり、息子は昼飯時に留守番することになりました。

 そして息子には皿を舐める癖があります。特にカレーは大好物なようで、開けた缶詰のその縁の部分には当然カレーが付いています。息子はそれを躊躇いもなく舐めてしまうでしょう⋯⋯いやはや、舌を切りそうで怖いです。

 筆者はつい一.二年ほど前にカレー缶詰の存在を知りました。調べてみるとその歴史は意外にも古く、六十年以上前からあったそうです。


ミステリー作品を読んでいると、タイトルが伏線やミスリードとなっていることは多いです。今回の話は『見くびらないで』と、息子が最後に言っていた台詞ですが、察しの良い読者の方はもう気づかれているでしょう。 『見くびらないで』とはつまり、『舐めないで』という意味です。他の話にもそれなりに伏線やミスリードを加えたタイトルにしていたので、宜しかったらもう一度見返してみてください。

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― 新着の感想 ―
[一言]  桃も、シロップ舐めそうですね。  お魚の、缶詰めは、お汁美味しいので、お米入れて、無駄にせず絡め取って食べたいです。
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