その後⋯⋯
※前回の話の続きです。
あれから何日か経ってのことだった。複数のテレビ局宛にやや大きめの小包が届けられた。その中には恐るべきことになんと、切り取られた人間の頭部が押し込まれていた。
差出人の名は『MONSTER』
その事件は報道機関で起こったということもあり、連日ワイドショーやニュース番組で報道が続けられた。さらには特集や特番が組まれ、最悪の殺人事件として世間をおおいに震撼させつづけた。
加えて、自らを『MONSTER』と名乗る犯人は、頭部と一緒にこんな声明文も送っていた。
『なぜ私がこの様な”人の頭部を切り取り放送局に送りつける”などと言う行動をとったのか。警察のお偉いさん方や犯罪心理学の専門家などは私のことを分析し、私と言う存在をわかった気になっているのだろう。だがその実、何もわかってはいない。ワイドショーでは、評論家気取りのお笑い芸人が、さも知識人ぶって疑問を投げかけたり、毒とも薬ともならないコメントを吐いては、金を得ていることだろう。疑問に思うだけでそれを解決しようと思ったり、原因を追及しようなどとは考えない。ただ単に頭がいかれてしまった馬鹿の行動だと決めつけ、そこで思考を停止するに違いない。ならば教えてやろう。なぜ私の様な怪物が生まれてしまったのか。私は、私自身が望んだからこうなったのではない。世間が、世界が、世の中が、私と言う存在を生み出したのだ。貴様らに問う。なぜ虐めはなくならない? 大人は一体何を学んできた? 人類は歴史から何を学んできた? 人間の本質は何一つとして変わっちゃいない。虐めはどこの時代も、どんな場所でも発生しうる。虐めと言うのは、虐められる側の人間に理由はない。喋り方が変だから、身体に不自由があったから、容姿が醜かったから、そんなのは虐めていい理由にはならない。いや、理由にしてはいけない。他人との小さな差異を見つけて、集団から排除する。それを大人が、周囲が、世の中が、見て見ぬふりをするから、そこに虐めがあると知りながら何もしないから、だから私が生まれた。作られた劣等感が私を孤独にし、孤独が私を生み出した。そして孤独を許さない空気が怪物を生み出した。ある人が言っていた。『誰かの幸せは、他の誰かの不幸の上に成り立っている』と。これが正しいのなら、全ての人間を幸せにすることはできない。だが、これを理由に不幸な人間を作ってはいけない。私が、私の様な存在を生み出さない様にできることはただ一つ。それは、その存在を世界に知らしめることだけだ。無知ほど愚かなことはない。己がとった行動が他人にどんな影響を与えるのかを考えろ。私という存在を心に刻め。知らなかった、想像つかなかったなどとは言わせない。私がその結果だ。』
警察は、送られた頭部を手掛かりに被害者を特定した。被害者の名は『延田 賢太』『小槻 卓夜』『知馬 鉄也』『岐林 奈麻』『駒藤 舶』『加藤 央井』『稲旗 史吾郎』『奥嵐 遊』『石村 影光』『佐籐 四蘭』
の十名だった。




