妙な奴
最近ここらで通り魔事件が頻発していた。近所では犯人を『魔女』などと呼んでいるらしい。被害にあった人はみな男性で、夜に襲われていた。
ある被害者は次のように語った。
「仕事からの帰り道のことです。私は夜道を一人歩いていました。ふと気がつくと数十メートル先の電灯の下に人が立っていたのが見えたんです。遠目で見て女性だと思いました。髪が長かったからです。女性が一人でこんな時間に何をしているのだろうと、不気味に思いながらも私は歩みを進めていました。なるべく距離を取って、速足で彼女の横を通り過ぎようと思いました。しかし彼女はいきなり私に近づいてきて、隠し持っていたナイフで襲ってきたのです。私はすんでのところで身を躱し、応戦しようなどとは思わず一目散に走って逃げました。幸い怪我はせずに済みましたがあんな怖い思いは二度としたくないですね。犯人の容姿は、顔は暗くてよく見えませんでしたが、黒い服に黒のロングスカートを履いていたのを覚えています。巷では魔女なんて呼ばれているそうですが、イメージはまさしくそんな感じですね」
いずれも犯人は、まだ捕まっていないという。
【解説】
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犯人は男性。長髪やスカートで女性を連想させ、長いスカートと髪で脚と顔を隠し、暗い時間に犯行を行うことで正体を気づきにくくさせた。巷で一連の犯人のことが「魔女」と呼ばれていたのは犯人の企みかもしれない。犯人が名付けたのか、他の誰かがつけたのか定かではないが、捜査撹乱には一役買っていた。犯人を女性と思わせることによって犯人像を狂わせたのだ。