バレンタイン 『チョコよりも甘いモノ』
もう暴走気味に書いたモノなので、読みづらいかもしれませんが、ご了承ください。
二月十四日、バレンタイン。
自慢ではないが、俺は毎年女子から沢山のチョコを貰う。
大半は義理チョコ(と言っていた)が、中には本命のチョコだってある。
本命チョコを渡されるときは、例外なく告白もされる。
だが、俺は誰かと付き合うことはしないと心に決めているから、勿論その告白を断る。
相手の女の子は涙を流しながらも「これからも友達でいてねっ」と笑う。
その姿に、胸が痛む。
こんなことがあるから、俺はあまりバレンタインが好きじゃない。
♡
「ただいまー」
俺は家に帰ると、真っ先にリビングに向かう。
テーブルの上にチョコが詰まった紙袋を置くと、自室に向かう。
鞄を雑にベッドの上に投げ、制服から私服に着替える。
リビングに戻ると、妹がソファーに寝ていた。
「ただいま」
「……お帰り。今年も沢山貰ったのね」
妹様の怒気を孕んだ言葉に、俺は気圧される。
「ま、まぁな」
「それで、今年はどのくらいあったの?」
「ん? なにがだ?」
「本命チョコに決まってるでしょ」
本命チョコかぁ……
「今年は……5個かな」
正直に答えると、妹は「ちっ」と舌打ちをする。
「…………去年に比べたら少ないけど。なんでまだそんなにいるのよ」
「ん? どうかしたか?」
「な、なんでもないっ」
そ、そうか? なにかブツブツ呟いていたように思うが。
まぁ、妹がなんでもないと言っているんだ、なんでもないんだろう。そう結論付け、俺は椅子に座る。
紙袋から箱を一つ取り出し開封すると、チョコを一粒口に放り込む。
ふむ、そこまで甘くないな。
ついでに、俺が今食べているのは本命として貰ったチョコだ。
毎年沢山貰うから家族に処理を協力してもらってるのだが、本命だけはちゃんと自分で食べるようにしている。
それが相手の子に対する誠意というものだ。
と、そうしている間に、一つ目の本命チョコを食べ終わった。
明日会ったらお礼を言おう。
そう心に留め、二つ目に手を伸ばす。
「ねぇ」
が、そこで妹からの制止の声が掛かる。
「どうした?」
「私からも、バレンタインチョコあげよっか?」
「……お前、本気で言ってんのか? こんなに量あるんだぞ?」
そう言うと、妹は不機嫌そうに「わかってるわよ」と言う。
「大丈夫、そんな量ないから」
「まぁ、それならいいけど……」
そう言うと、妹は俺の後ろを通り台所に向かう。
冷蔵庫から小さめのタッパーを取り出すと、それを持ってこちらに向かってくる。
「おいおい、まさかタッパーのままでか?」
そう訊ねると、妹は「バカじゃないの?」と呆れたようにそう言う。
妹は蓋を開けると、なんと入っていたチョコをパクッと食べてしまった。
「お、おい」
くれるんじゃなかったのか?
妹の行動に頭を悩ませていると、不意に妹にキスされた。
勿論、唇に。
「──」
思考が停止した。
俺は今、妹にナニをされてる?
「──っ、ぷはっ」
「……」
妹が唇を離した後も、俺はなにが起こったのか理解できないでいた。
「ぁ、あぁっ、お前っ、なにやってんだ!」
「なにって、キスに決まってるじゃない」
「ば、バカっ! なんで俺なんかにキスしてんだよ! そう言うのはもっと大切な──」
「バカは兄貴の方。毎日毎日アプローチ掛けてるのに、全く気付いてくれない。このニブチン!」
俺は妹がなにを言っているのか、全くわからなかった。
「ここまで言ったのに、まだわかってないみたいね。この際だからハッキリ言っておくけど、私は兄貴──お兄ちゃんのことが、昔から大好きだった」
「……」
突然の告白に、俺は言葉を失った。
「かっこよくて優しくて、私が困ってるときにいつも助けに来てくれる、お兄ちゃんが好きだった」
「……」
「それで毎日アプローチ掛けてるのに、お兄ちゃんは気付いてくれないし。それに日に日にお兄ちゃんかっこよくなるし、お兄ちゃんのこと好きなる女子多いし」
「……」
「もう我慢の限界。……ねぇ、お兄ちゃん。私はお兄ちゃんのことが大好き、だから私と付き合って……ください」
妹は顔を真っ赤にしながら、自らの気持ちを告白してくる。
俺は、どうすればいいのだろうか。
相手は妹だ。それも、血の繋がった実の妹、つまりは実妹だ。
俺は、どうすれば……
答えが纏まることはなく、俺はただ頭を悩ませる。
そんな中、妹は再び口を開く。
「それにね、私とお兄ちゃんは実の兄妹じゃないの」
「…………はぁ?」
俺は妹──義妹の更なる告白に素っ頓狂な声を上げる。
「去年、偶然知ったことなんだけど……私って養子なんだって」
寂しそうに言う義妹の姿を見ていると、今すぐにでも抱き締めたくなる衝動に駆られる。
「最初はその、私だけ家族じゃないってことに傷付いたけど……すぐに思ったんだ、『これなら私はお兄ちゃんと結ばれることができる』って」
「……」
「ねぇ、お兄ちゃん……お兄ちゃんは、私のこと、好き?」
俺はすぐに答えることができなかった。
家族としてなら、妹としてなら「好き」と即答できていただろう。だが、妹は義妹であり、一人の女の子だ。……俺は、義妹のことをどう思っているのか。
「やっぱり、迷惑だよね……ごめんね」
目尻に涙を溜めながらも、義妹は笑顔を作ろうとする。
「わ、私部屋に戻るね……っ」
「あっ」
「……え?」
俺は無意識に、義妹の腕を掴んでいた。
「おにい、ちゃん……?」
「ごめん、謝るのは俺の方だ」
俺はそう言いながら義妹の体を引き寄せ、力強く抱き締めたい。
「お、お兄ちゃんっ」
「ごめん、寂しかったよな、悲しかったよな。自分だけ家族じゃないって知って」
俺は義妹の頭を、優しく、ゆっくりと撫でる。
「ごめん、本当にごめん。……俺は、俺はっ」
今なら答えれる。
「俺は、お前のことが好きだ。妹として、一人の女の子として」
「お、お兄ちゃん……っ!」
俺は一度義妹の体を離す。
そして義妹の顔を真っ直ぐ見つめ、
「だからさ、俺の彼女になってくれるか?」
そう言った。
義妹は目を見開き、すぐに眩しい笑みを浮かべる。
「……はいっ」
♡
「なぁ、離れてくれないか?」
「いーやーだー。ふふっ♪」
どうしてこうなった。
さっきまで良い感じの雰囲気だったのに、何故か義妹はいつも通り、あっけらかんとしている。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん? なんだ──」
チュッ──
「ねぇ、私の唇って、チョコよりも甘いでしょ♪」
その言葉に、俺は笑みを漏らす。
「あぁ、そうだな」
「ふふっ♪」
「……ははっ」
「ねぇ、もう一回、しよ?」
「あぁ」
俺と義妹は見つめ合い、今度は強く、絡めるようにキスをした。
あぁ、ホントに、チョコよりも甘い。
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