表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編集  作者: 吉乃 直
2/3

バレンタイン 『チョコよりも甘いモノ』

もう暴走気味に書いたモノなので、読みづらいかもしれませんが、ご了承ください。

 二月十四日、バレンタイン。

 自慢ではないが、俺は毎年女子から沢山のチョコを貰う。

 大半は義理チョコ(と言っていた)が、中には本命のチョコだってある。

 本命チョコを渡されるときは、例外なく告白もされる。

 だが、俺は誰かと付き合うことはしないと心に決めているから、勿論その告白を断る。

 相手の女の子は涙を流しながらも「これからも友達でいてねっ」と笑う。

 その姿に、胸が痛む。

 こんなことがあるから、俺はあまりバレンタインが好きじゃない。

 

 ♡

 

「ただいまー」

 俺は家に帰ると、真っ先にリビングに向かう。

 テーブルの上にチョコが詰まった紙袋を置くと、自室に向かう。

 鞄を雑にベッドの上に投げ、制服から私服に着替える。

 

 リビングに戻ると、妹がソファーに寝ていた。

「ただいま」

「……お帰り。今年も沢山貰ったのね」

 妹様の怒気を孕んだ言葉に、俺は気圧される。

「ま、まぁな」

「それで、今年はどのくらいあったの?」

「ん? なにがだ?」

「本命チョコに決まってるでしょ」

 本命チョコかぁ……

「今年は……5個かな」

 正直に答えると、妹は「ちっ」と舌打ちをする。

「…………去年に比べたら少ないけど。なんでまだそんなにいるのよ」

「ん? どうかしたか?」

「な、なんでもないっ」

 そ、そうか? なにかブツブツ呟いていたように思うが。

 まぁ、妹がなんでもないと言っているんだ、なんでもないんだろう。そう結論付け、俺は椅子に座る。

 紙袋から箱を一つ取り出し開封すると、チョコを一粒口に放り込む。

 ふむ、そこまで甘くないな。

 ついでに、俺が今食べているのは本命として貰ったチョコだ。

 毎年沢山貰うから家族に処理を協力してもらってるのだが、本命だけはちゃんと自分で食べるようにしている。

 それが相手の子に対する誠意というものだ。

 と、そうしている間に、一つ目の本命チョコを食べ終わった。

 明日会ったらお礼を言おう。

 そう心に留め、二つ目に手を伸ばす。


「ねぇ」

 が、そこで妹からの制止の声が掛かる。

「どうした?」

「私からも、バレンタインチョコあげよっか?」

「……お前、本気で言ってんのか? こんなに量あるんだぞ?」

 そう言うと、妹は不機嫌そうに「わかってるわよ」と言う。

「大丈夫、そんな量ないから」

「まぁ、それならいいけど……」

 そう言うと、妹は俺の後ろを通り台所に向かう。

 冷蔵庫から小さめのタッパーを取り出すと、それを持ってこちらに向かってくる。

「おいおい、まさかタッパーのままでか?」

 そう訊ねると、妹は「バカじゃないの?」と呆れたようにそう言う。

 妹は蓋を開けると、なんと入っていたチョコをパクッと食べてしまった。

「お、おい」

 くれるんじゃなかったのか?

 妹の行動に頭を悩ませていると、不意に妹にキスされた。

 勿論、唇に。

 

「──」

 思考が停止した。

 俺は今、妹にナニをされてる?

「──っ、ぷはっ」

「……」

 妹が唇を離した後も、俺はなにが起こったのか理解できないでいた。

「ぁ、あぁっ、お前っ、なにやってんだ!」

「なにって、キスに決まってるじゃない」

「ば、バカっ! なんで俺なんかにキスしてんだよ! そう言うのはもっと大切な──」

「バカは兄貴の方。毎日毎日アプローチ掛けてるのに、全く気付いてくれない。このニブチン!」

 俺は妹がなにを言っているのか、全くわからなかった。

「ここまで言ったのに、まだわかってないみたいね。この際だからハッキリ言っておくけど、私は兄貴──お兄ちゃんのことが、昔から大好きだった」

「……」

 突然の告白に、俺は言葉を失った。

「かっこよくて優しくて、私が困ってるときにいつも助けに来てくれる、お兄ちゃんが好きだった」

「……」

「それで毎日アプローチ掛けてるのに、お兄ちゃんは気付いてくれないし。それに日に日にお兄ちゃんかっこよくなるし、お兄ちゃんのこと好きなる女子多いし」

「……」

「もう我慢の限界。……ねぇ、お兄ちゃん。私はお兄ちゃんのことが大好き、だから私と付き合って……ください」

 妹は顔を真っ赤にしながら、自らの気持ちを告白してくる。

 俺は、どうすればいいのだろうか。

 相手は妹だ。それも、血の繋がった実の妹、つまりは実妹だ。

 俺は、どうすれば……

 答えが纏まることはなく、俺はただ頭を悩ませる。

 そんな中、妹は再び口を開く。

 

「それにね、私とお兄ちゃんは実の兄妹じゃないの」


「…………はぁ?」

 俺は妹──義妹(いもうと)の更なる告白に()頓狂(とんきょう)な声を上げる。

「去年、偶然知ったことなんだけど……私って養子なんだって」

 寂しそうに言う義妹の姿を見ていると、今すぐにでも抱き締めたくなる衝動に駆られる。

「最初はその、私だけ家族じゃないってことに傷付いたけど……すぐに思ったんだ、『これなら私はお兄ちゃんと結ばれることができる』って」

「……」

「ねぇ、お兄ちゃん……お兄ちゃんは、私のこと、好き?」

 俺はすぐに答えることができなかった。

 家族としてなら、妹としてなら「好き」と即答できていただろう。だが、妹は義妹(いもうと)であり、一人の女の子だ。……俺は、義妹のことをどう思っているのか。

「やっぱり、迷惑だよね……ごめんね」

 目尻に涙を溜めながらも、義妹は笑顔を作ろうとする。

「わ、私部屋に戻るね……っ」

「あっ」

「……え?」

 俺は無意識に、義妹の腕を掴んでいた。

「おにい、ちゃん……?」

「ごめん、謝るのは俺の方だ」

 俺はそう言いながら義妹の体を引き寄せ、力強く抱き締めたい。

「お、お兄ちゃんっ」

「ごめん、寂しかったよな、悲しかったよな。自分だけ家族じゃないって知って」

 俺は義妹の頭を、優しく、ゆっくりと撫でる。

「ごめん、本当にごめん。……俺は、俺はっ」

 今なら答えれる。


「俺は、お前のことが好きだ。妹として、一人の女の子として」

  

「お、お兄ちゃん……っ!」

 俺は一度義妹の体を離す。

 そして義妹の顔を真っ直ぐ見つめ、 

「だからさ、俺の彼女になってくれるか?」

 そう言った。

 義妹は目を見開き、すぐに眩しい笑みを浮かべる。


「……はいっ」

  

 ♡

 

「なぁ、離れてくれないか?」

「いーやーだー。ふふっ♪」

 どうしてこうなった。

 さっきまで良い感じの雰囲気だったのに、何故か義妹(いもうと)はいつも通り、あっけらかんとしている。

「ねぇ、お兄ちゃん」

「ん? なんだ──」

 

 チュッ──

 

「ねぇ、私の唇って、チョコよりも甘いでしょ♪」

 その言葉に、俺は笑みを漏らす。

「あぁ、そうだな」

「ふふっ♪」

「……ははっ」


「ねぇ、もう一回、しよ?」

「あぁ」

 俺と義妹は見つめ合い、今度は強く、絡めるようにキスをした。

 

 あぁ、ホントに、チョコよりも甘い。

この作品を読んで頂きありがとうございます!

誤字脱字、改善点等がございましたら容赦なく教えてください!

この作品を読んで頂いた読者様に最大の感謝を

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ