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第7話

「サラ、ピエールと買い物に行ってくるから、マリーをお願い」

「はーい」

 私は、ピエール兄さんとアラナ姉さんの所に転がり込んだのは良いものの、早速、妹いびりにあっていた。


 そりゃね、私が素直に祝福して、お父さんとカサンドラ母さんと同居すればいい話です。

 でも、十代半ばの私としては素直になれない訳です。

 買い物に出かける兄と姉を見送り、姪のマリーの面倒を見ながら、私は内心でそう毒づいていた。


 全く、何でカテリーナ母さんは、私に弟妹を作らなかったのに、カサンドラ母さんはすぐに妊娠して、アラナ姉さんの弟妹を作るのよ。


 八つ当たりにも程がある、と自分でも分かっている。


 アラン父さんとカサンドラ母さんが結婚することを決めたのは、カサンドラ母さんが妊娠したからだった。

 何で二人が40代半ばにもなって、子どもができるのよ、私はそれを聞いた時に驚いた。

 どうせできない、と思ってアラン父さんとカサンドラ母さんは、避妊していなかったらしい。

 全く十代のバカップルじゃあるまいし、やることやったらできて当たり前でしょ、とそれを初めて聞いた時に、私は内心で叫んだ。


 そして、これを機に40代のできちゃった婚をすることに、アラン父さんとカサンドラ母さんはなった。

 私は素直になれずに、お父さんの下を出て、兄と姉夫婦の所に転がり込むことにしたが、ピエール兄さんとアラナ姉さんは新婚夫婦の邪魔者と私を見なして、私をいびっていると言う訳だ。


(ピエール兄さんとアラナ姉さんに言わせれば、私を素直にさせて、お父さんとカサンドラ母さんの所に送り返して、両親と同居させようとしているということになるのだが。)


 今、ピエール兄さんとアラナ姉さんが住んでいるのは、アラン父さんとカサンドラ母さんが新しく住む新居のすぐ近く、イギリス人が言うところの、文字通りスープの冷めない距離である。

 だから、私がアラン父さんとカサンドラ母さんの下に帰ろうと思えば、すぐに帰れるのだ。


 とは言え、私も一度、家出という決断をした以上、そう簡単に折れて父の下に帰る気にはなれない。

 兄と姉のいびりに耐えつつ(具体的には、転がり込んだ時には、まだまだ零歳児の姪のマリーの世話の大部分が私に押し付けられた。)、私は兄と姉と同居しているという訳だ。

 兄や姉に言わせれば、幾ら実妹とは言え、無駄飯を食わせる余裕はない、ということらしい。


(だが、本当はお父さんが、この当時、私の生活費を兄や姉にこっそり渡していたらしい。

 もっとも、それを私に知らせると、私が意固地になるのが目に見えているので、そういうことにした、とかなり後になって(具体的には、私が海軍士官学校に入った後)、私は兄から聞かされた。)


 私は、そんな感じで私の心が落ち着くまで、兄や姉の下で過ごすことになった。

 それまでに、アラン父さんとカサンドラ母さんは、きちんと結婚式を挙げ(一応、私も兄や姉と共に結婚式に出席はした。私もそこまで意固地には成れなかった。)、新居に入居し、私から見れば、夫婦で異母弟妹を抱きしめた。

(カサンドラ母さんは、よりにもよって、と言うべきか。

 男女の双子を産んで、私に一度に異母弟妹をプレゼントしてくれたという訳だ。)


 そして、弟はシャルル、妹はイレーヌと名付けられて、アラン父さんは、この歳になってようやく産まれた直後の子どもを抱きしめられた、と泣いて喜んだらしい。

(アラナ姉さんが産まれた時は、お父さんはフランスに帰国した後だったし、私が産まれた時は、お父さんはベトナムに赴いて、戦場で戦う羽目になっていた。)

 更に数か月が経ち、ようやく私の気持ちの整理ができて、私はアラン父さん達のいる家に戻ることができた。

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