第6話
母さん、カテリーナ母さんが亡くなったのは、私が母さんと末期の会話を交わした数日後だった。
それまでに、母さんは他の身内とも心残りが無いようにと末期の会話を交わした。
アラン父さんと、母さんがどんな会話を交わしたのか、私には直接は分からない。
だが、アラン父さんやピエール兄さんの口ぶりからすると、母さんは私にも言ったように、アラン父さんがカサンドラ母さんと再婚するように勧めたようだ。
ちなみに、カサンドラ母さんも、カテリーナ母さんの葬儀には身内として参列した。
何しろ、カサンドラ母さんからすれば、一人娘の婿の実母が亡くなったのだ。
私の目から見ても、義理から言ってカサンドラ母さんが、お母さんの葬儀に参列して当然の話だった。
カサンドラ母さんが、私とお父さん(後、ジャンヌお祖母さん)が住む家の近くに引っ越してきたのは、このお母さんの葬儀が済んだ直後の頃だった。
私の目からすれば、何だか母さんが死ぬのを待ち望んでいて、母さんが死んだのを機にいそいそとカサンドラ母さんが引っ越してきたように見えた。
そのため、私の内心では、カサンドラ母さんへの反感がますます高まってしまった。
だが、これは私の酷い誤解だったようだ。
それを私が知るのは、文字通り、私の晩年、アラン父さんもカサンドラ母さんどころか、アラナ姉さんやピエール兄さんが亡くなった後、生まれ変わってきたジャンヌお祖母さんの話によることになる。
カサンドラ母さんは、お父さんの近くに移住するために、バレンシアの財産を処分しようとしたのだが、色々とトラブルに巻き込まれてしまい、お父さんに助けを求め、更にジャンヌお祖母さんが乗り出して、処理したとのことだ。
ジャンヌお祖母さん曰く、
「この件について、自分の童貞を奪った女の頼みだから、あいつは聞いてくれたのさ」
とのことだ。
(尤も70代の老女が言うのならともかく、外見13歳の美少女が、そんなことを事実とは言えども公言するのは、道徳的にはどうかと孫にして祖母の私は思うが。)
ともかく、カサンドラ母さんは私達の家の近くに住むようになった。
借家を一時的に借りたが、いつでも家を建てられるように準備はしていたようだ。
何しろ、カサンドラ母さんは、バレンシアの財産を処分することで、ちょっとしたどころか、それなりのお金を持っていた。
(その後も、カサンドラ母さんの投資の才は発揮され、最終的な遺産はビリオネアとは言わないが、その10分の1には達した、とピエール兄さんとアラナ姉さんは言っていて、私も遺産分けに預かった。)
そして、ちょくちょくアラン父さんは、カサンドラ母さんの下を訪ねるようになった。
実際、アラン父さんは、カサンドラ母さんと再婚することについて、正直、かなり悩んだらしい。
カテリーナ母さんが亡くなった以上は、お互いに独身になっており、再婚に障害はない。
アラナ姉さんに至っては、実の両親を何とか結婚させたいと画策する有様なのだ。
(その癖、アラナ姉さんは自分をアラン父さんの実の娘だと認知させようとはしなかった。
この点について、私は数年の間、首を傾げることになり、アラナ姉さんの真意を、私が知った際には泣くことになった。)
最初は事実婚に止めようと、アラン父さんとカサンドラ母さんは考えていたらしい。
だが、おめでたい話が起こってしまい、二人は正式に結婚することにした。
ついでにカサンドラ母さんに至っては、二人と自分達の子の為の家を建てだした。
私は、素直に二人を祝福するべきだったが、はいはい御馳走様、という想いに駆られて、これを機にピエール兄さんの所に転がり込むことにした。
ちなみにジャンヌお祖母さんは2人と同居した。
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