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第1話

 女主人公のサラは、「サムライー日本海兵隊史」の登場人物、アラン・ダヴーの次女(?)になります。

 基本的にサラ視点での話なので、サラが知らない話はこの作中では出てこず、裏設定になります。

「お姉ちゃんをください。神様」

 私は幼い頃、本当に子どもじみた祈りを教会でしていた。

 冷静に考えれば、幾ら神様でも、不可能な話なのだ。

 自分より年上の姉が現れるなんて。

 でも、神様は私の祈りをかなえてくれた。

 とても皮肉な形で。


「ねえ。お母さん。お姉ちゃんが私にいれば良かったと思うの。お姉ちゃんを作って」

 この頃はまだまだ幼かった私、サラ・ダヴーのおねだりを、カタリーナ母さんは、笑い流して言った。

「それは無理よ。お姉ちゃんということは、あなたより年上なのでしょう。今から産めないわ」

「僕じゃいけないのかい」

 ピエール兄さんが、私に話しかけたが、私は頭を振った。

「お姉ちゃんがいいの」


 ピエール兄さんと私とでは、父親が違うということを知ったのは、もう少し経ってからのことと私は覚えているが、幼い頃から私はピエール兄さんに対して違和感を感じていた。

 歳が10歳近く離れていることもあるが、ピエール兄さんとは、父親が違うことを私は感覚的に察してしまっていたのかもしれない。

 この頃には既にアラン父さんとは、血がつながっていないことを知らされていたピエール兄さんは、アラン父さんが大好きだったが、一歩控えた態度を取ることが多かったからだ。


「僕が結婚したら、その相手は、サラのお姉さんにもなるよ。それでいいじゃないか」

「それだと義理じゃない。血のつながったお姉ちゃんが欲しい」

 ピエール兄さんの言葉に、私は反論した。


「はい、はい。我が儘も程々にしなさい。無理を言わないの」

「はーい」

 最後には、カテリーナ母さんにいつも、そう言われて、私は不承不承、そういうしかなかった。

 実際、幼かった私にも分かってはいたのだ。

 お姉ちゃんができるなんて、本当は無理なことが。


「サラのお姉ちゃんねえ」

 ジャンヌお祖母さんは、私やお母さん、兄さんのやり取りを聞くたびに、複雑な表情を浮かべながら、そう独り言を言うことが多かった。

 ジャンヌお祖母さんは、アラナ姉さんのことを、この時、薄々知っていたのだ。


 ちなみに、カテリーナ母さんも、アラナ姉さんのことを、ジャンヌお祖母さんから聞かされていた。

 もっとも、この頃は、アラナ姉さんというより、お父さんの隠し子として二人は知っていたらしい。

 だから、男の子か、女の子かすら、二人共(というか、お父さんさえ)知らなかった。


 この頃は、お父さんが、スペイン内戦の際に現地の女性と関係を持って妊娠させてしまったこと、そして、お父さんは、第二次世界大戦開戦の危機が差し迫る中、祖国フランスのことを大事に想い、その女性に養育費を渡して帰国したことしか、お父さんを含めた3人は知らなかった。

(お父さんはカテリーナ母さんには秘密にしていたが、カテリーナ母さんはジャンヌお祖母さんを問い詰めて、そのことを知ったらしい。

 もっとも、お父さんとカテリーナ母さんが結婚するどころか、知り合う前の話なので、カテリーナ母さんも黙ったままにすることにしたらしい。)


 お父さんは、本当ならアラナさんの消息を、第二次世界大戦が終わり次第、スペインに行って調べるべきだったかもしれない。

 だが、第二次世界大戦が終わったとはいえ、フランスの陸軍士官であるお父さんには、安息の時は全くと言って良いほど、訪れはしなかった。

 第二次世界大戦が終わった直後に、私をつくった後、お父さんは、すぐにインドシナの独立闘争鎮圧に赴く羽目になった。

 ようやく、それがインドシナ三国の独立を認めることで収まったか、と想えば、次はアルジェリアの独立闘争鎮圧に、お父さんは赴く有様だったのだ。


 私は子ども心に覚えている。

 カテリーナ母さんが、いつもお父さんの帰宅を待ち望んでいたことを。 

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