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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

*短編*

【短編】ぽくぽこさん

作者: 小坂みかん

 今、巷では副業や起業のためにマッサージの手技をミニセミナーで手軽に学ぶのが流行っているんですって?

 もしもそういうものへの参加を考えているのなら、よぉく考えてからのほうがいいですよ。――というのも、セミナー参加者の中に〈ぽくぽこさん〉という霊が紛れ込んでいることがあるんですって。


 これは私のマッサージサロンのお客様の身に、実際に起こった話です。彼女――Aさんもご多分に漏れず、そういうセミナーの参加者でした。私から言わせると、知識もない人間が骨をボキボキとやるのは、とても危険な行為なんです。高い技術も要しますし。ですが、その講座では「あなたもすぐに覚えられますよ」と言って、気軽な感じで教えてくれたそうです。


 Aさんが受けたセミナーでは、講師による施術の体験もできたそうです。首の骨の施術だったそうなんですが……本当は、ここは、一番容易に触ってはいけない場所なんです。大切な神経が集中しているところですからね。だけど音は他の部位より豪快に鳴るし、上半身全部がすっきりしたような気になれるからでしょうね。その先生は、体験施術の時間になると得意気に参加者の首を鳴らして回ったそうですよ。

 さて、セミナーが始まってすぐの、練習相手となる参加者との顔合わせの時間のときのこと。Aさんがペアとなる女性に挨拶をすると、女性は返事もそこそこにニタリと笑って言いました。



「ぽくぽこさんって、知っていますか?」



 ぽくぽこさんは、このセミナーのような〈ぽくぽこと骨の音がたくさん鳴るところ〉に現れるんだそうです。なんでも、こういうセミナーで首の施術を体験なり練習なりしていたときに、首の神経を損傷して死んでしまった人がいるそうで。その霊が成仏することなくセミナーに混ざり込み、行き場のない思いを晴らすかのように練習相手の首を捻じ切るのだとか。――そんな話を聞かされて、もちろんAさんはセミナーどころではなかったし、体験施術も辞退したそうです。

 その日の夜、Aさんはひとり自宅にて施術の練習をしていました。すると、骨の鳴る音に合わせて何かがやって来る気配がしたそうです。あまりの恐怖に息を飲んでじっとしていると、いきなり何者かに強く首を掴まれたそうです。何とか手を振りほどいて振り返ってみたら、そこにはあの不気味な女性が。目があった途端、女性はフッと姿を消したそうです。


 それからずっと首が重だるいということでウチのお店にご来店くださったのですが、首のあたりに赤い手形のような痣がくっきりと、たくさんついておりました。Aさんは幸運にも首を捻じ切られはしませんでしたが、こういうことがあるとなると、手軽なセミナーというのは考えものですね。――え? どうして私が暑い中、首にストールを巻いたままでいるかって? お恥ずかしながら、痛めてしまったんですよ。……一回転して、捻じ切れそうなほどね。

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